蓮池氏デザインのトイレブラシなどを生産しているゲディですが、営業の人間から聞いたエピソードです。もう20年近く付き合いのある韓国のインポーターを彼は毎年訪ねます。ソウルの有名デパートにコーナーを設け、よく売ってくれお客さんです。ただ、60歳を過ぎたインポーターの社長さんは英語がほとんど喋れません。毎年社長さんが聞くことは二つ。「商売は上手くいっているか?」「エレナ(営業の秘書)は結婚したか?」だけ。一緒に食事をするにしても話題の選択が大変だとか。
この社長さんが凄いのは、製品に対する理解力です。樹脂の成分と特徴もよく研究しています。ゲディは多くの有名デザイナーにデザインを委託していますが、社長さんにとっては関心外。そんなことは製品プロモーションのごく一部、あるいは無視。製品の解説はひたすらモノだけに拘るのです。

ある日、イタリア人の営業がコーナーを訪ねました。社長さんは自慢気に通訳を通して語ります。「どうです、サッカーのW杯もあり、韓国人もイタリアに対する関心が強くなっている。だからイタリアの国旗をコーナーに掲げてみました」 確かに旗がありました。しかし、それは緑・白・赤の三色旗ではなくドイツの国旗でした。

20年以上、イタリアの会社の製品を輸入し、熱心にプロモーションをしてきた。そして商売も成功した。だが・・・イタリアの国旗がどういうものかも知らなかった。ぼくは何か余計なことばかり考えてきたのではないかと自省した瞬間です。
先日、友人と夕食をとりながら、北欧と南欧の違いが話題になりました。北欧はエコロジー先進国のブランドを確立してきた感があります。確かにいくつかの国際指標でも上位に入ることが多いです。しかし、南欧にもエコロジーの先進性に富む農法がありますし、そのイメージと実態は一様ではないというところから話ははじまりました。
例えば、一般家庭の天井は、北欧のほうが低い。平均身長がより高いにも関わらずです。それは暖房費の節約のためと言われます。一方、南欧では夏を涼しくすごすために天井を高くしたとも説明されます。もともと自然環境の厳しい北欧においては、人との助け合いが生活の前提となってきた。そして必ずしも経済的に豊かではなかった。そういうなかから、エコロジーに目を向けてきたとも語られます。

ただ、こういう説明だけでは、どうもスッキリしません。北欧では南欧より化繊をよく着るという現象があります。もちろん雨量などの差から説明しますが、エコロジー面からはどう解釈できるのだろうとも思います。目につくゴミの分別などだけでなく、色々なところに目線を送らないと、本当にトータルにみてエコロジーなのかどうかわからない部分が多いよねとの結論で、その晩は終わりました。
ぼくも、それから、少々このテーマについて考えています。 どうすればもっと正確な比較ができるのかな・・・と。
ラテン系の人は時間にルーズだという印象が一般にあります。そこで今日は「イタリア人は何故遅刻するか?」というテーマでお話しましょう。
まず時刻そのものを空間的に把握してます。2時という時、長針が12にピッタリというより、その周辺を平面的ではなく空間的におさえています。斜めから時計をみるようなものです。この三次元的把握は別に悪いことではありません。英語でいうa few を2-3と訳すのではなく、手に握り締めた砂の量でわかるようなものです。

アポの時刻があっても、道を歩きながら店のウィンドウに何か素敵なものをみつけたら、吸い寄せられていく。そして時間がないにも関わらず、店に入って商品知識を得ようとする。つまり、この一瞬が大事。そして道の向こうにも目をひくものがあれば、そっちにも行ってしまう。ジグザグ歩行です。だから、目的地への到着が遅れのです。
しかし、このジグザグ歩行にイタリア人のクリエイティビティが隠されています。アイデアは、こういう歩行途中、もしかしたら向こうの道に渡っている時に、ひらめていたりするものです。そして情報が集積し、それらがお互いにつながり、統合されたイメージをもつその直前にハッと思うことがあります。
・・・だから遅刻をしましょうというのではなく、あくまでも発想方法の一ヒントですから、趣旨を誤解せぬように(笑)。