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Date:10/1/29

先週、「JALのサービスを想う」を書き、昨日、そのJALでミラノから直行便で日本に来ました。昨年11月に利用した時よりも、経費削減の「傷跡」がはっきり見え、機内での新聞サービスもありませんでした。離陸後の機長の挨拶でも「昨年来、皆様にご心配をおかけしましたが、運行をひとつひとつこなしていきます」という表現がありました。経営破たんを知っている多くの人は心配の対象が何を指しているのか分かりますが、知らない人たちにとっては、何なのか分かりません。機長は英語でも、同じような言い方をしましたが、JALの経営問題を知らない外国人はどう想ったのかなと感じました。

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そういえば、これと同じようなことを脳科学者の茂木健一郎氏のブログで感じたことがあります。ある日、「皆様にご迷惑をおかけして申し訳ありません」と書いてあり、何のことを言っているのかさっぱり不明でした。それで検索エンジンで調べて、確定申告を数年間怠り税金を支払っていなかったというニュースをみつけて合点がいきました。知っている人に謝罪すべきであって、知らない人には謝罪は不要という方針なのでしょうか知らない人にわざわざ不利なニュースを提供する必要はないというロジックも成り立ちます。一部の知っている人だけに頭を下げ、その姿を知らない第三者に見られるが、そこで不利な事情を感づかれないならラッキーということでしょうか。

JALの機長の話に戻れば、機長というのは経営破たんについて大空を眺めながら語るべき立場にある人なのだろうか、という疑問がわきました。それも政府の金が救援に使われることにフォーカスするなら、日本政府に税金を納めていない乗客にとってはどうでもいいことです。もし何らかのことを経営破綻について触れるなら、もう少し他の言い方がありますが、ぼくは、こういうことを機長が言わなくてもいいのではないかと思いました。それより通常のせりふである「今回は日本航空をお選びいただき、まことにありがとうございます」という言葉に、どこまで気持ちを込められるかにかかっていると思いました。

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基本的に機長の姿は見えません。空港でパイロットの姿をみかけても、誰が自分の乗る(乗っていた)飛行機の機長であるかを確定するのは容易ではありません。キャビンで聞こえてくるマイクを通じた声が唯一です。言葉だけです。そういう存在の人が、他の誰でもなく、つまりカウンターにいる地上職員でもなく、フライトアテンダントでもなく、乗客の立場からすればもっとも直接的に生命を預ける人が、語る言葉です。多分、TVで経営陣が報道陣に向かって喋る言葉より、一般に聞く側にとっては注意を傾けるべき言葉です。だからこそ、言うなら言う、言わないなら言わない。どちらでもいいですが、「今回は日本航空をお選びいただき、まことにありがとうございます」が唯一の重みある言葉であることを機長はどれだけに意識しているか、ということだけが気になったことでした。機長にとって問題はここにしかなく、ここ以外のどこにもないと思ったのです。

Category: その他 | Author 安西 洋之  | 
Date:10/1/25

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「だから、どうなの?」という問いがあります。「じゃあ、具体的にどうすれば、いいの?」という突っ込みです。ぼくの答えは、簡単です。

それは君が自分で考えることだよ

見方が大切です。どういう視点をもつかが重要なのです。多くの場合は、そこに至らずに頭をひねくり回すわけです。具体策の提示を他人に期待するという態度は、君が問題点をまだ把握できていないことを示しています。ある程度の理解ができてくると、他人の示唆だけで十分です。個々の問題の事情は君が一番分かっているのだから、君がどうすればよいかの結論を出すのがもっとも適当です。示唆の意味が分からない人は、そこまでです。残念ながら・・・・。

たとえば、ぼくが「ミラノサローネ2010」で書いていることは、示唆です。こういうコンセプトのこういう形状のこういう機能の作品を出すべきだ、ということは一切書いていません。だいたい、そんなことは期待されていないでしょう。いろいろな分野のいろいろな種類のプロジェクトを前に、一律なことが言えるのは、全体に適用できる示唆だけです。

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ただ、示唆がどう重要なのか、それを分かるまでには、自分なりの経験が必要かもしれません。あることが分かるには、どうしても経なくてはいけない時の流れと、ある一定量の経験がないといけないということは事実で、ミラノの刃物専門店のロレンツィの紹介で書いた以下を思い出してください

ここの従業員は全て男性で、店でお客さんの対応する人達は皆30代後半以上です。最低5-6年、倉庫でモノをよく知ってから初めて客の前に立たせてもらえ るのです。自分で商品に触り、知識を仕入れ、扱い商品に愛情を感じないで、どうしてお客さんの前に立てるのだ?というのです。刃物のよさを説明するのは難 しく、それこそスペック表があるわけではない。それでメッセージを伝えるには、長期間の下積み生活が必要です。5-6年というのは、やっと店に立てるとき であり、それなりの仕事ができるようになるのが15年程度。20年で一人前という世界です。

つまり、製品そのものの理解に時間がかかり、かついわば抽象性の高い製品であるということですが、それだけでなく、彼らの扱い商品点数はなんと1万5千点 にものぼるということもあるでしょう。セレクトショップとしては膨大な点数です。これを全てPC管理しているわけではなく、約半分しかデジタルデータ化し ていません。後は手書きです。それが「商品知識が身につく」コツだといいます。お客さんの要望を聞いて、ピンとくるには、商品と触れる絶対的な時間量が要 求されるのです。どの店員も一流ホテルのコンシェルジュのようなムードがあります。そして、お客さんもそれなりの年齢以上。「どうして、人生経験の乏しい 30代以下で良いモノを見極めることができるのか?」と言われたとき、ぼくもハッとしました。

つまり、分からないことは分からないと認識することが重要で、分からないのは君の能力の問題ではありません。「これは、時と経験で分かってくることではないか?」という勘がもてることが肝心なのです。更に言えば、そういう類のことー時と経験によって分かるだろうという勘ーの領域がよりフォーカスして目に目えてくればいいでしょう。

Category: その他 | Author 安西 洋之  | 
Date:10/1/22

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今週、JALが経営破綻をしたことを巡って膨大な量のニュースや意見がネット上でも飛び交っていますが、日本のTVニュース番組をみていて、コメンテーターの発言に少々戸惑いを覚えました。「JALのサービスは最高で、日本に来る外国人も、JALの日本的サービスを評価しているのだから、今後もあのサービスを失わずに再建に頑張って欲しい」との趣旨です。クールジャパンと同じで、日本に関心のある一部の外国人の背後には無数の無関心の外国人がいることを日々感じていると、ああいう発言にはオイオイと思ってしまいます。

さて、統計をチェックしたわけではないので正確なことは言えませんが、外国に出かける人は二つのタイプがあり、一つは「これから出かける国の雰囲気に飛行機から味わおう」という経験先行型であり、もう一つは「目的地に到着するまでは、なるべく自分の習慣を通したい」という経験先延ばし型でしょう。料金や乗り継ぎの便宜性という合理的レベルでの判断を別にすれば、上述の二つのパターンは一般的と考えてよいと思います。

この二つのパターンが、国別にどれほどばらつきがあるのか手元にまったくデータがありません。たとえば日本に出かけるイタリア人がアリタリアに乗るかJALにのるか、イタリアに出かける日本人がJALに乗るかアリタリアに乗るか、どちらの国民が経験先行型が多く、どちらが経験先延ばし型であるのかは、分かりません。ただ、実際の問題として、ぼくの経験ではどちらも常に日本人の方が上回っているという印象があります。それはBA,エールフランス、KLMなど他の欧州航空会社でも似たようなもので、日本からの海外へ出る人と日本に海外から入る人の割合ー全体数からすれば3~4対1程度でしょう。欧州に限れば、日本人比率はもっと上がるでしょうーにあっているのではないかと思います。そこで「JALのあのサービス」ですが、これが可視化された経営資源としてどれほど重要なのでしょうか。先にあげた経験先行型の外国人を惹きつけ、ビジネス的にどれほど貢献するのだろうかと思案します。すなわち、どれほどにマーケットがあるか?ということです。

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客席の傍で床に跪いて乗客に話しかける乗務員、しかし相当に行儀が悪い乗客がいても強くは制御しきれない弱さ、これを総合的に眺めてJALのサービスとは何だろうといつも思います。去年のはじめ、ミラノの空港が大雪でダイヤが大幅に乱れた時、成田からおよそ同時刻に出発予定だったミラノ行きのJALとアリタリアが、前者はほぼ定刻に飛び、後者は飛行機が目の前にあるにもかかわらず「大雪のため様子見」で数時間遅れということがありました。こういう経験をするとJAL便を選んでおいて良かったと思います。しかし、又聞きなので噂程度に読んで欲しいのですが、日本の航空会社のパイロットは管制塔との交信がスムーズではないので、管制塔ではなるべく日本の航空会社を優先的に着陸させることが傾向としてあると聞くと、定刻どおりの運行はサービスの質を正確に表しているのだろうかとも思います。

結局のところ、日本へ行く時にアリタリアではなくいつもJALを利用しているぼくは、何をサービスとして期待しているかといえば、定刻通りの運行が最優先ー安全であることは大事ですが、日本に飛んでいる日欧航空会社のどれが安全であるかは、「当たり前品質」の領域でしょうーであり、それ以外については相当に不愉快なことでもない限り、さほど問題視しません。パイロットと管制塔との交信の問題は、ぼくには本当かどうか確認しえない事柄ですから、航空会社を信用するしかないのです。もちろん、この「当たり前品質」は、猛烈な努力とストレスの結果であるとは想像します。しかし、基本のことさえ問題なければ、それ以上のことはぼくは望みません。

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ここで冒頭の「JALのあのサービス」に話を戻すと、これは搭乗の前の職員の挨拶や機内の乗務員の振る舞いを指しているのだと限定してよいと思います。JAL特有というより日本での一般的サービスの、これまた別の意味の「当たり前品質」というべきであり、トヨタの品質改善と同じくコストとしてカウントしずらい、あるいはカウントしてはいけない部分であるという認識が日本には強いと考えます。それが日本企業の今までの強みであり、しかし往々にして 高コスト体質とリンクすることがあると指摘されてきた要素でもあります。

日本企業はサービス産業によりウエイトが増していきつつありますが、メンタリティ、つまりは文化要素をどうコストとしてみるか、また見るべきではないのかに関する一つのモデルを今後のJALが示していくとするならば、JALは日本のビジネス全般にとってー企業構造や体質という観点とは別にー相当に大きなテーマに立ち向かうことになります。因みに、イタリア船籍ではない豪華客船などのクルーにイタリア人の需要は多いと聞きます。融通のきくサービスやホスピタリティを提供してくれるからです。同じようなユニバーサルな価値を「JALのあのサービス」がもつのかどうか、です。日本の「おもてなし」は、果たして外国人客の満足度をあげ、日本好きではない人たちをお客さんとして取り込めるか、です。

この文脈でJALから目を外せない、これからの数年間です。

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