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Date:11/1/23

旅がより重要な時代に入ってきたと思います。それも目次のない旅です

70年代、ジャンボジェット機によって国際大輸送時代に入りました。それまで海外に飛ぶことなど考えたことのない人が、低価格で文字通り大陸を跨ぐことができるようになったのです。そして、「百聞は一見に如かず」という感想を多くの人がもつに至りました。ヨーロッパについて言うなら、ベルリンの壁の崩壊が鉄のカーテンをはずしたことで実際的な活動面積が広がり、シェンゲン協定域内ではパスポートコントロールがなくなり、統一通貨の導入は文字通り財布一つで国境を越える世界を実現しました。並行してネット社会の定着により、物理的距離が化学治療のごとくに障害の一つを急激に縮小させ、ソーシャルメディアはそのスピードの加速度化を促しています。デスクの前のPCではなく、行動を共にするスマートフォンが「留守の時間」を消失させていきます

それがゆえに、逆に、人は他人とリアルに会う動機が増加しています。人と知り合うチャンスの増加もありますが、やはり YouTube の情報やスカイプでの会話だけでは駄目だったんだと思った経験も同時に増えているのです。ここでも「百聞は一見にしかず」であることを痛感。この動向にマッチするのがLCC(Low Cost Carrier)であり、数百ユーロではなく数十ユーロで各都市を飛び歩けるようになりました。しかもスーツケース一つに料金設定がされますから、より旅は身軽になります。こうして旅は地図上、より脈絡がない動きを作ります。リヨンの友人に会ったらバルセロナに足を延ばすより、リヨンからベルリンのほかの友人に会いに行く。各国のガイドブックより各都市のガイドブックのほうが、よりポイントを衝いています

トレンディな店のレイアウトが複合化しているのは、このような気分と衝動にフィットするからでしょう。書籍、陶器、Tシャツ、CD、バッグが、あるキーワードで結びついてディスプレイされるのは、ゴーグルにキーワードを入れて検索結果を実際に見るようなフィーリングを与えてくれます。カテゴリーという言葉がじょじょに重みを失い、Aの経験とBの経験をリンクする糸の張り方自身がキーになってきたのです。ただ気分の問題だけではありません。それは本でいえば、目次のない本です。Aの本の第一章とBの本の第二章を自分でつなげていく読書です。もちろん、ある著者の思考全体を知るのに、そういう読み方ではいけません。が、ある基礎があれば、そういう島を渡り歩くことができます。そう、大陸をベタに歩くのではなく、島を飛び歩くイメージが強いです。

カジュアル化したファッション、軽くなりつつあるバッグ、モノの売り方、旅のガイドブックの変化、アジアやアフリカの台頭・・・さまざまなアイテムから、目次のない旅のはじまりを感じます。

Category: その他 | Author 安西 洋之  | 
Date:11/1/1

古い雑誌を整理していると、随分と読み残している記事が多いのに気がつきます。そうすると、捨てる前にちょっとは読んでしまおうと思ってしまう。そして読んだ、少し前の週刊文春です。林真理子が既に自分のことを知らない若い人が多いことに気づいたとのエッセーがありました。「かつての有名人」はそこで複雑な思いに駆られるわけですが、今や「かつての有名人」のように全ての人が知っていることが少なくなっています。佐藤栄作の時代は皆が5-6代前の総理大臣も言えて外務大臣や大蔵大臣の名前がすぐ出てこないことは、社会人として失格だったでしょう。しかし、菅首相と小泉首相の間の何人かの首相の名前と在任期間を言えなくても、あるいは、その時々の外務大臣や財務大臣の名前が言えなくても全然恥ずかしくないでしょう。

これは政治の世界がコロコロと変わっているからだけではありません。どんなにイチローが有名であろうと、長嶋茂雄が国民的スターであったほどには多くの人の脳裏に焼きついた名前となっていないのです。スターが小粒になったとは言われます。しかし、それは小粒のタレントもあるかもしれないけど、小粒であるしかないようなシステムで社会が成立するようになったからだと思います。昔は一部のジャーナリストしか知らなかった俳優の私生活の一部を、FACEBOOKでは多くの人が当然のように知ってしまっています。情報がガラス張りになればなるほど、大粒である成立条件をどんどんと壊していきます。なにせ未知が小を大にする重要な要素であったのですから。

逆にちょっとした有名人は出来やすい。Twitterで何十万人というフォローワーを抱えている人の名前をみて、一般のTwitter以外の世界の多くの人がどれだけ知っているでしょうか。つまり、「有名人の局地化」が加速しています。Twitterの有名人は必ずしも他のSNSで有名ではないかもしれないし、いわんやマスメディアのなかでは「市井の人」か「ポッと出」としか形容されません。ちょっとした有名人になるシステムは、マスメディア全盛の時代よりは明らかに揃っているのです。

そこで課題は、かつてのような有名人であることに今もメリットがあるか?「局地的有名人」であることが充分であるか?という問いにどう答えるかです。衆議院の小選挙区制で立候補するより、所属党の意向次第の比例代表制の方が「局地的有名人」であることは有効に作用するかもしれません。もちろんTwitterのセミナー講師で稼ぎまくるならTwitter有名人で充分でしょう。しかし、それでは比例代表区の推薦は得にくいでしょう。それには、マスメディアでの「局地有名人」であるほうが有利です。そして、マスメディアの「局地的有名人」はTwitterの有名人にはなりやすいけれど、その逆が同様にはなりにくいのが現実でしょう。

しかし、いずれにせよ、現代における有名人は長続きしません。ホリエモンが有名になったのは彼の日ごろの活動ではなく、TV局の買収劇や逮捕という事件での瞬間風速的な側面が強く、荒川静香という名前はトリノ冬季オリンピックで金メダルをとった数ヶ月が旬だったわけです。なにも不祥事も事件もなにもなく、またイベントで名前を挙げるということもなくーW杯でゴールを入れるー、恒常的に有名であることがあまりないのが現代であり、それがより強まっていると言えると思います。吉永小百合のような名前が再び出ることは至難です。

即ち、ブランドを考えるとき、局地的ブランドこそが優位性をもつのかどうか、をより真剣に考えるべきシーンに直面している。このことを更に意識しないといけない時代に突入しています。突き詰めれば、どのような「局地ブランド」を組み合わせるかに傾注すべきということでしょう。

Date:10/12/28

F1の開催国が中東へアジアに移行してきたことが、驚きとはならず当たり前の風景として展開されてきています。サッカーの世界のニュースも同様です。ヨーロッパと極東の日本の間にあった空白が、色とりどりのイベントで埋められいく・・・かつて学生時代、パンナムの世界一周便の飛行機で東京→香港→タイ→インド→バーレーン→英国と南回りで飛んできたことを思い出す・・・アジア・中東ベルト地帯が表舞台になってきています、表面上は。くどいようですが、あくまでも表面上です。

ヨーロッパの相対的地位の低下が2010年、特に強まったわけではありませんが、「もう自分たちの場所に潜在力のある大きなマーケットはあまりないよな」ということを、これまた街の隅々の人が口に出していうようになってきたとは言えるでしょう。今まではヨーロッパのなかでしか活動してこなかった人たちが、インドやアフリカに出かけるようになりました。しかし、F1やサッカーの例にあるように利権は自分の懐に入れたままです。表面上、中東やアジアが表舞台に出ることをやや顔を引きつらせながらも、虎視眈々とネタを探ってきた結果であり、ヨーロッパのもつ見えない資産の威力を中東やアジアも求めている結果です。日本が焦っているのは、ここに大きな要因があります。新興国が力を持つにあたって「利幅の大きい役得」をヨーロッパや米国に求めながら、さほど日本には求められていない、その差です。

2000年に入り数年間、ミラノで生まれた息子をみて通りを歩くイタリア人たちが「日本語とイタリア語を喋れていいね」とありきたりの言葉を残していきました。こちらが「いや、中国語のほうがいいかも」と答えると、「いや、いや、中国人はちゃんとディシプリンされていない連中だから、日本語のほうがいいんだよ」と外交辞令を含めて言い返してくるものでした。しかし、2005年頃からは「そうね、中国語のほうが有利かもね」とはっきりと言われるようになりました。要するに、日本の地位低下が、同じように地位の低下を続けているヨーロッパの街角の隅々にいたるまで認識されてきたということです。それは、今までよりはお洒落な中国人の経営する日本食レストランの増加と並行しています。食という「利幅の大きい役得」の源泉をみすみす取られてしまったのです。

日本人の板前さんたちは、「中国人は日本のオーセンティックな味を守らずに安上がりでやっていてずるい」と文句を言ってきましたが、中国人は「あんたたち、ナニ言ってるの?ローカルなお客さんが喜ぶ料理を提供してナニが悪い?」と答えます。2010年の日本の対世界の大きな変化の一つは、ここにあります。中国人の提供する日本料理のビジネスセンスは批判の対象とはならず、学ぶべきことではないかという認識がじょじょに広まりつつあることではないかと思います。そして、遅まきながら、「利幅の大きい役得」とは何かを具体的に探りはじめたのが経済産業省が主導する横断的プロジェクトのクールジャパン事業でしょう。弱体化している民主党の成長戦略の一環であることが危うさを感じさせますが、「利幅の大きい役得」という軌道に入りこむことは必須であることは否定しがたいです。

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