ミラノサローネ2009 の記事

Date:09/4/25

今日はサローネ会場に行きました。クラシックやモダンはパスし、デザインのパディリオン。二階に上るとわりとすぐフィレンツェのビトッシのスタンドが目に入りました。今までモダンセクションだったのが、デザインに移動したので、人の入りが随分と違います。カリム・ラシッドの新作も発表していますが、前面はアイコン的存在のフォルナゼッティです。

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次は同じフロアにあるB-LINE。ジョエ・コロンボのボビーのメーカーとなって10年。初めてのサローネ出展です。1999年以前はビーエッフェというメーカーの生産でしたが、1999年、この会社で管理業務をやっていた一平社員、若きジョルジョ・ボールドィンが事業買収を試み独立したのがB-LINEです。その頃、ビーエッフェは経営が傾き、その危機を彼は「好機」として捕まえ、金型と商権を買い取ったのです。そして、今やボビーは5大陸30カ国に販路をもち、その他の商品系列も増やし、サローネデビューに至ったわけです。

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ぼくは2001年から彼と付き合っていますが、本当に細かいことを辛抱強くやってきました。下の写真は途中から経営に参画した彼のお兄さん。今年発表のコート掛けと10周年記念の黄色のボビーが見えます。

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その次に向ったのが照明部門のEuroluce ですが、LEDという起爆剤をもって新しい提案が実に多彩に行われています。80年代、ぼくが車の開発プロジェクトに関わっている頃、米国で装備が義務付けられたバックのストップライトでLEDが使われ、とても高価だった記憶があります。そのLEDが、この数年、照明業界では話題の中心にあるわけですが、アルテミデでみたザハ・ハディドの作品は、まさに流麗なスポーツカーを思い起こさせてくれました。

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デジタルゆえの有機的デザインであり、且つ木の根っこの部分が伸びてきたイメージがもとにあるようですが、ぼくにはクルマの世界を想起させるもので、このとき、ふっと思いました。スタイリッシュなクルマがやや遺物的に見られるかもしれない昨今においても、そのスタイリッシュさからくる未来的予感そのものは、かなり移りやすいものだろうなということです。今は過去の産物的にみられても、ある機会に、全く新鮮に見られる、ほんのちょっとした時代の空気で見方が変わる面白さと怖さがあります。メンフィスもそうかもしれません。

サテリテでは、booksのスタンドを訪ねました。昨年入賞した橋本潤さんと山本達雄さんは内田繁さんのところにいた元同僚ですが、二人でbooksというチームを組みました。橋本と山本にある二つの「本」という駄洒落のようなネーミングですが、お二人は夫々にチェアを出しています。橋本さんは昨年の薄い椅子とは違う、ヴォリューム感ありながら軽い作品をもってきました。

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針金だけで出来ているものです。マニアックな男心をくすぐります。だからか、男性の方たちに人気で、上の写真のように一生懸命に観察する方たちが後を絶ちません。橋本さんもやや緊張した面持ちで見ています。一方、山本さんは、鹿をモチーフにした椅子です。脚もそうだし、貼ってある生地の意匠だけでなく手触りまでが動物的です。それも親子鹿と小鹿までいます。

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これが女心を刺激するらしく、こちらのチェアは女の子が喜んでカメラを向けていきます。写真は角のあるお父さん鹿の椅子に座る山本さんです。

いつもサテリテを歩いて思うのですが、ここにはあまり完成度がいらないと思います。完成度の高さは目的ともあわず、その雰囲気とアンマッチでさえあります。デザイナーが主張したい何かが、一点集中型で表現されていればよいと思います。伊藤節さんも話していたように、ここで出来る人間関係でビジネスを探るのが目標であって、その作品自身を量産にそのまま結びつけたいというのは現実性の低い見込みとして考えるのが妥当です。その観点からすると、今回、booksの試みはとても割り切りがよかったのではないかと思います。

愛知県立芸術大学のスタンドが、あまりに日本的ムードだったので、学生さんに「これは日本のデザインを意識したのですか?」と聞いたら、「いや、全然、そんなこと考えていませんでした。でも、ここに設営してみたら、日本的だって気づきました。特に真正面はロシア勢なんで。外に出て初めて日本なんだって分かったんです」との答え。その経験が得られただけでも随分と今後違った視点がもてるだろうなと期待したいです。

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最後に。心地よさや健康がライフスタイルのコアとして定着してきましたが、フィットネス機器メーカーがサローネに出展するようになってそれなりの時が経過しました。最初はこうした風景に好奇心だけで人だかりができたものですが、最近は、ごく普通の視線でみる人が殆どです。風景が馴染んだだけでなく、コンセプト自身が根をおろしたというべきなのでしょう。これは一つのムーブメントのおこし方と波及の仕方として参考になる事例でしょう。

Category: ミラノサローネ2009 | Author 安西 洋之  | 
Date:09/4/24

ブレラ地区に美術品のオークションに使用される格式ある建物があります。ここで行われていたのが、ソットサスとの10年と題するもので、アートギャラリーが主催しています。

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この中庭の正面にある部屋には、次の作品が展示されています。

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そして、中庭奥の左側にある入り口より、二階にあがる階段があります。そこでお目にかかれるのは・・・・

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以下は、トリエンナーレでも見たことがあります。10年というのは、いわば晩年の10年間を指しています。

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実は昨年秋、日本のある新興宗教団体が、このスペースを目一杯使って仏像展をやったのですが、その施工があまりに立派だったためか(?)、壁などをその時の黒そのままを使用しています。場所の記憶というものは怖いもので、あの仏像とソットサスの晩年がダブってイメージされてきます。ギャラリーのオーナーにそれとなく「まだ匂いますね・・・」と、この印象を伝えたら、「ええ、そうね」と割とあっけなく肯定したので、ちょっとセンシビリティに欠けるなと思いました。しかし、ぼくがある種の抹香臭さを指したのに対し、多分、このイタリア人は、仏像とソットサスに共通するファンタジーを感じているのではないかとも考えられ、ぼくの思いは極めて日本人的かもしれないとも思案しました。もちろん、単に後ろめたさから決まりがわるく、話を早く切り上げたかっただけかもしれませんが・・・。

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4月23日ー2の最後で触れたMorosoについて、もう少し書いておきましょう。ぼくはファッションというあり方について否定的ではないし、ファッション動向をビジネス上ある程度追ってもいます。新しい流行は遊びとして楽しいし、あまりに定番や意味の濃いものも飽きがきます。なによりも10-20代にとっては、自分たちの言語として必要な「武器」でさえあるといえます。だからこそ、それは爆発する新しさ、どうしても止めようがない爆発力をもって、流行となる。最近でいえば、iTuneはそういう力をもってきました。

一方、無限大の欲望を刺激するシステムは、新自由主義経済の是非を巡る論議とは違ったレベルで、社会的持続性やエコロジーの観点から再考を迫られています。したがって、無理に不要なものを作って市場をギシギシと回すのは正しいことなのか?と問われているまさにその時、「ファッション」がもつ力も同様に問われているわけで、拮抗すべき位置を確保するには、より一層の戦略性をもった「ファッション」を考えていかないといけません。今後優先すべき価値とは何か?という議論で負けない「ファッション」が期待されるということです。

Category: ミラノサローネ2009 | Author 安西 洋之  | 
Date:09/4/24

昨日、日本の完成品メーカーが世界観を示すためにはどうするべきか?を書きました。日本の独創性に拘るのはよいですが、そのために本来あるユニバーサル性から腰を引いて袋小路に入るべきではないと思います今朝、茂木健一郎氏のブログを読んでいて、以下の文章が目にとまりました

「ジャパン・クール」などという言葉が流行し、そのポップカルチャー発信地としての力には注目されながらも、学問や人類を動かす哲学、思想においては未だかつて世界の中心地になったことがない極東の首都。

いろいろと思い悩みながらも、気付いてみると、世界の趨勢は自分たちとは全く関係のない場所で動いていた。

寂しい。

そんな感慨を日本人は一度持つべきなのではないか。そうでないと、いろいろなことが変わらない気がする。

先日、ヨーロッパ文化部ノートでコンテンポラリーアートギャラリーの小山登美夫さんの文章を転載しましたが、茂木氏と同じような感慨を吐露しています。やはり、プラットフォームとは何であるかを正しく認識すべきだとぼくは考えています。そんなことを考えながら、今日は、Fabbrica del Vapore に向いました。広い空間で静かな時を過ごすことからはじめたいという気になったのです。

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上はPaolo Ulianの20年間の個展です。エンツォ・マリのところで働きはじめたのが最初のようですが、生活の片隅におかれるオブジェをこつこつとやってきたことに好感がもてます。こういう場所を歩きながら、遭遇したのがBest Up というエコロジーや社会的持続性をプロモートする団体。ぼくは、この団体のサポーターにIKEAがあることに興味を持ち、色々と話を聞きました。詳細は後日書きますが、ここでぼくはイタリアがIKEAのサプライヤー国として、ポーランド、中国に継いで3位であることを知りました。イタリアに欧州市場向けに配送する大きな倉庫が最近出来た理由が、ここで初めて理解できました。

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説明してくれたのは経済学を勉強した女性ですが、「ぼくがスウェーデンでは経済専攻の大学生の人気就職先の一番はIKEAなんだってね」と言ったら、スウェーデンで働いたこともある彼女は「IKEAとグーグルは人を大切にする点で共通するものがあると思うわ」と答え、なるほどと思いました。因みに、エンジニア系ではグーグルの人気が一位です。その後、コルソ・コモ10へ行くと、メンフィスの展覧会です。一昨年末のソットサス逝去とも関係があるかもしれませんが、昨日の王宮の展覧会と繋げてみると、メンフィス展を実施する発想がぼくにはしっくりきました

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メンフィスは80年代のムーブメントですから、若い世代にとっては新鮮だと思いますが、特に多くの中国人がかなり熱い目で見ていたのが印象的でした。中国でいえば天安門事件がおきる前になります。今回、このギャラリーの上、つまり屋上テラスが彫刻家のKris Ruhs の展覧会になっていました。普段、カーラ・ソッザーニが私的にこういう使い方をしているのかと思ってスタッフに聞いたら、この展覧会のためとのことで少々がっかりです。

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コルソコモ10を出てコルソ・ガリバルディに向かう途中にあったのが、これ。竹や金属の筒が沢山吊るされていて、人が中に入るとお互いがぶつかり音がするという仕掛けです。楽しそうに中に入り、竹には「〇〇命」のような落書が一杯あります。

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この近くでドイツ人デザイナー達がやっている展覧会で見たのが以下。全て限定生産らしいですが、彼らの無骨な生活ぶりが想像できて笑えます。TVに椅子やその他がカオス的に組み合わせてあるので、これはアートか?と思ったら、「いや、これらを組むことができる、この赤い締める道具がぼくのデザイン」と聞いて、素朴だなぁと思いました。

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もっと素朴なのが次。「その日に来た洋服なんかを色々な椅子に置いたりしておいて、めちゃくちゃになるでしょう。だから、ぜんぶ、ここにつっこんでしまうの。このケースの中は、だんだんと狭くなっていて、全部じゃないけど、かなりは下に飛び出てくるから、今日、必要なものは、その下から引っ張りだせばいいのよ」

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そう言いながら、デザイナーが自ら下にタラ~ンとなっていたスカーフを引っ張り、自分の首に巻いてくれたのが上の写真です。彼女は洋服をたたむという行為が嫌いで、こういうアイデアを思いついたようです。「アイロンはしないの?」と聞くと「今の洋服はアイロンをかけなくても済む」との答え。化繊の国、ドイツらしい考え方です。ストッキングもはみ出て色気もなにもあったものじゃありません。これも限定生産の売り物というから、ビックリ。TVに椅子もそうだし、このぐちゃぐちゃの洋服も、一見、アートか?と思ったところが、ぼくの浅はかさでした。しかし、経済不況で「不要なものはいらない」と言われるなかで、こういうスタイルにホッとする自分がいるのも確かです。ある点ではMorosoのアフリカ的テイストよりマシかもしれないとも思ったのでした。

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Category: ミラノサローネ2009 | Author 安西 洋之  | 
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