メトロクスのイタリアの旅 の記事

Date:09/11/22

トスカーナの丘にあるアルティミーの朝は気持ちがよいですが、11月も半ばとあって観光客の姿は少ないです。初夏や初秋に来ると、色々な言葉が飛び交っていますが、この朝はイタリア人の出張者らしき人達しかいませんでした。このホテルには古典的な絵画がそこかしこに飾ってあります。ただ、3年前くらいからか、朝食をとるレストランの近くだけに、女性を描いた(最近の作品と思われる)絵画がかかりはじめました。色気がある気になる絵です。

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11月は霧の季節です。晴れていれば、ホテルの前庭からフィレンツェの街もよ眺められますが、この日も霧です。ホテルから出発するときも、こんな感じでした。

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今朝の行き先はプラートにあるポルトロノーヴァです。ソットサス、アウレンティ、ポルトゲージ、アルキズーム、スーパースタジオ、ホライン・・・とデザイナー達と輝かしい歴史を作ってきたメーカーですが危機に陥り、その後、建築を学んだ女性社長が継承しています。メローニの特注のガウン風ジャケットは素敵で、しかも裏地と眼鏡のフレームもオレンジ色なのがお洒落です。

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ここでもビトッシと同じく、過去の膨大な歴史資料をどう生かしていくか、どうユーザーに語りかけていくか、これに腐心しています。栄光の歴史を知っている人には説明は不要ですが、それを知らない人達にどうコミュニケーションしていくかが課題です。時代が進めば進むほど、歴史の重さが増し、同時にそれをリアルに知らない人たちが増えていく、このジレンマです。名作には新しいヴァージョンを考えます。例えば、ロマッツィのジョーも一つです。白いソファです。

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ただ、そういう過去に作った作品だけでなく、過去に使った手法で新しい試みを継続的に行っているのがすごいところです。それも社会的メッセージ性の高い作品を発表しています。下のチェアには現在、争いが起こっている世界の地名が記されています。アフリカやアジアなど・・・その椅子を軍服が覆っています。

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あるいは、ホームレスの生活品一式をまとめたカート。家を失った人達も生活できるという深刻なテーマにやや微笑を誘う表現です。

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かつての作品がそうだったように、若い人達に材料とチャンスを積極的に提供し、商業的に可能性がある提案がでてくれば、個別にロイヤリティ契約をしていきます。この方法のネガティブな面として「若い人達のアイデアを食い物にしてパブリシティを図っている」ということが言われますが、この厳しい経済状況のなかで、常にアイデアをアウトプットするメカニズムを維持しようとする精神的余裕をぼくはプラスに評価します。この心の余裕こそが、次代へ繋ぐ源泉であり、その余裕を失ったところからは希望が生まれない。率直にいえば、整理という言葉とはほど遠いポルトロノーヴァの社内ですが、過去と現在の混在がなんとも心地よい自由な空気があります。

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なんでも取り仕切ってくれるフランチャスカの笑顔が、この自由さを物語ってくれています。

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Date:09/11/22

B-LINEのボールディンが盛んに語るのは、コミュニケーションの重要性です。なるべく幅の広い人たちに何かを語り続けること、「ボビーを買ってくれ」「スーパーレッジェーラを売りたい」という直接的な言葉ではなく、色々なアングルから自分たちの姿や考え方をメッセージとして流し続けることが大事なのだと熱く話します。彼らが使っているツールはFACEBOOKです。ジョエ・コロンボやボビーなどB-Line商品のファンたちが集まってきています。今、進んでいるプロジェクトは、下の写真のボネットのクワットロ・クアルティを使ってアーティストに自由に作品を作ってもらうことです。そして、その作品をネットオークションで売り、利益はすべてチャリティに回します。

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B-LINEは上手くいっている会社ですが、地方にあるとても小さな会社です。製品は委託工場で生産しています。が、規模とは関係なく、アートや慈善活動に貢献していく。そして、それを企業メッセージとして世界中に発信する。願わくば、どこかで売り上げに繋がるかもしれませんが、まず「コミュニケーション」が第一にくる、そのために自分たちのコンセプトの構築に試行錯誤する・・・こういう姿勢には好感がもてます。社会貢献型事業をすると声を大にするのではなく、ソーシアル・ライフの延長として、こういう活動が自然な発想として思い浮かぶわけです。日本ではよく、キリスト教の影響であると言及されがちですが、「コミュニケーション」「考え方を伝える」という思考における優先順位が、こういう活動を生んでいるとぼくには思えます。

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委託工場の金型が陳列する前でひとしきり生産エピソードを聞いたのち、パドヴァ市内でボールディン達と夕食をとりました(下の写真)。最近、イタリアでもよく言われる「霊気」が話題になったので、「じゃあ、今度、日本で滝修行をしようか」と誘ったりと、笑いが絶えない晩を過ごし、翌朝向かったのはトスカーナです。

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次の行き先はBITOSSI(ビトッシ)です。ビトッシはもともと地元の伝統的な陶器を作るメーカーでしたが、戦後アルド・ロンディがアート・ディレクターとして自らの作品やソットサスの作品を作り始め、この分野の代表的ブランドに成長します。最近ではアリク・レヴィーやカリム・ラシッドなど、トレンドにのったデザイナー達とも協業しています。また、工業用特殊セラミックを使ったブルレック兄弟の照明器具もロンドンで発表したばかりです

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ここで営業のモンティ(上の写真)は「我々の長年の歴史をどう整理して枠組みを作っていくか、これが来年の大きなテーマである。確かに、今年の売り上げは減少したが、だからといって、こういうことや新しいプロジェクトの推進を止めてはいけない」と語ります。過去の遺産、トレンドにあるデザイナー達の作品、これらをどうつなげていくかです。アルド・ロンディ亡き後、実質的には空席であったアート・ディレクターに就任予定のデザイナーが、この重責を追っていくことになります。自分の原点を常に見つめなおし、自分の辿ってきた道をはっきり定義し、それが世の中にどう認知されているかを認識し、どうこれからの線を延ばしていくか・・・このロジカル思考が基本にありブランドが成長していくことがよく分かります。

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上の写真は社内にある自社製品の博物館です。入り口には年表が大きく張られ、自社デザインの変遷が一目で分かるようになっています。感心するのは、行くたびに展示内容が入れ替えられていることです。下は博物館ではなく、ショールームです。片岡さんが展示品を撮影し、下坪さんがその様子を眺めています。

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そして、この後に膨大な型の棚を通り過ぎ、製作場面を見学。やはりものをつくるシーンを見るのは楽しいです。

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この晩は、近くのアルティミーのホテルに泊まります。メディチ家別荘の馬小屋だったのですが、ムード抜群だし、食事は最高です。参考にハイパーリンクを張っておきます。

Date:09/11/21

昨年10月、「メトロクスのイタリアの旅」とのタイトルで、メトロクスがイタリアで何を見ているのかを書きましたが、今年の旅、2009年版もお知らせしましょう。社長の下坪さんと営業の片岡さんの三人での旅行です。サプライヤーを訪ね、ギャラリーやアンティークショップを巡り、書店を歩きます。まず第一日目は、B-LINEです。B-LINEはジョエ・コロンボのボビーワゴンを主力製品として生産・販売しているヴェネト州ヴィチェンツァの会社ですが、この4月のサローネ時に次のように紹介しました

初めてのサローネ出展です。1999年以前はビーエッフェというメーカーの生産でしたが、1999年、この会社で管理業務をやっていた一平社員、若きジョルジョ・ボールドィンが事業買収を試み独立したのがB-LINEです。その頃、ビーエッフェは経営が傾き、その危機を彼は「好機」として捕まえ、金型と商権を買い取ったのです。そして、今やボビーは5大陸30カ国に販路をもち、その他の商品系列も増やし、サローネデビューに至ったわけです。

会社に入るとまず迎えてくれたのは、二人の女性。左側の女性が社長ボールドィンの奥さんで管理面を担当、左側の女性がドイツ語が堪能で欧州市場担当。二人とも魅力的です。

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奥さんはミーティング中も社長のボールドィン(サローネのときはスキンヘッドでしたが、また髪を伸ばし始めました)の横でアシストします。今年はどこも市場が大荒れでしたが、B-LINEの売り上げは微減ですんだようです。マイナスをカバーすべくコントラクトのプロジェクトを積極的に仕掛けた結果です。

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当然、日本市場の概況や、そこに対するメトロクスの方策などについて具体的説明を求められるわけです。すると、ぼくたちの間でも意見調整。

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が、話が深刻になると、冗談を言い合ってムードを和らげます。

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そして、また議論スタート。彼らがフランス、オランダ、ドイツなどで行っている製品導入事例は日本の営業ヒントになります。例えば、歯医者ではどんなモデルが売れやすい、老人介護施設ではこういうモデルが入りやすい・・・とか。あるいは、家庭でいえば、今までのように居間や書斎だけでなく、寝室、浴室、台所での使用例も増えている・・・とか。

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ボビーを作っている工場にいくと、こういう使い方もしています。必要なだけカセットを積み上げています。で、ぼくたちが結構、感動したのは以下です。

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「使い倒している」という表現がピッタリです。これはボビーの組み立て工程で必要な工具類を収納しているのですが、「インテリアで使い切ったら、ガレージで使えばいいんだ。そしてインテリアにはもう一台・・・」というアイデアも与えてくれます。このボビーは、ボビー組み立てだけに従事してもう10年近いエキスパートが使っています。

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上の写真の彼です。一つ一つコンポーネントを綺麗にふき、余分なバリは削り取り、組みたて梱包まで行います。ヘルプする人間もいますが、この工程では、彼が責任者です。一台あたり10数分で続々と出来上がっています。もちろん、この前には、コンポーネントを作る工程があり、そのコンポーネント在庫の様子が下の写真。

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これはインジェクションで作るので機械との格闘です。だから、たまには装置部品がカパッと破壊してしまうこともあります(下の写真)。が、金型設計と製造をも手がけるこの会社では、新たに改修してすぐ仕事に取り掛かります。10年近いつきあいで、B-LINEがこちらに約束した納期に遅れたことは殆どありません。極めて優秀な成果です。

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