さまざまなデザイン の記事

Date:08/11/24

『ブルータス』ではイームズのあとにはヤコブセンの特集を組み、北欧ブームも起きてきます。この北欧家具はソフトな印象が強いためか、女性購買層をよりひっぱる要因になりました。やや日本に特有な傾向と思われるのは、チーク材ではなくビーチが主流で、白い清潔感がことのほか好まれるという点でしょう。他方、イタリアデザインは、アレッシー的なカラフルでユーモアのあるタイプは女性に好まれますが、もう一方の伝統的な正統派のデザインは、圧倒的に男性が多いという流れが、このあたりの時期でもはっきりしていました。

下坪さんは、こういうイームズブームが落ち込むことを予想し、以前から準備していたイタリアデザインの領域を得意分野にしていこうと思います。独立前にもイタリア製品を全く扱ったことがなかったわけではありません。米国でイタリアのガラスやセラミック製品を「遊び」で買い集め、それを日本で売っていました。イタリアの独特のカラーに惹かれていたのです。

話しが少し飛びますが、実は2003年、フィレンツェのビトッシからオファーをうけ、取引を検討するにあたり、ビトッシの工場でコレクションを見せてもらいました。そこでガラスケースのなかに収められたロンディの作品の数々を見て、下坪さんは「アッ!」と驚きます。およそ10年前に米国で買い集めていた作品が、ここにあったのでした。1990年代の前半、米国でビトッシもロンディの名前も知らずに商材としていたものが、イタリアの名の知れたアートディレクターによる作品であったというのが約10年後に判明したというわけです。ビジネスを即決意しました。

Date:08/11/21

アンティークをメインとするメトロポリタンギャラリー以外にも、20世紀半ばのアメリカンデザイン家具を中心として扱う米国モダニカ社の「モダニカ札幌」というポジションもありました。日本のモダニカは東京が中心で、名古屋、福岡、そして札幌は下坪さんの会社が運営するという協力関係が形成されました。メトロポリタンギャラリーで開催した「‘60年代の室内」という展示会に、雑誌編集者などと共に、モダニカ関係者が訪問してくれたのが契機です。そして、ここでイームズのシェルチェアがヒットします。札幌のお店で4万円の椅子が毎日一脚は売れたのです。

米国のモダニカが新聞に広告を出し米国全土からシェルチェアを買い集め、5桁にのぼる在庫を倉庫に積み上げ、それを大々的に米国、英国、日本で売り出しました。従来のアンティークショップより、モダニカは1-2割高い価格でした。しかし、アンティークショップでは2-3脚が販売ロットだったのに対し、モダニカは100脚をいっぺんにすぐ用意できたのです。日本で評判となったのは、もう一つの幸運があります。雑誌『ブルータス』がイームズの特集を組んだのです。これがイームズブームに火をつけました。

その頃、パントンチェアがヴィンテージものとして6-7万円したのですから、4万円のシェルチェアは割安な価格です。しかし、シェルチェアブームには別の意味もあります。それまで、イームズの椅子は建築家やデザイナーが買うアイテムでした。それが20代の普通の女性も買うようになってきました。それまで彼女たちがデザインという時、雑貨、それも花柄のファンシーな商品がメインでした。その彼女たちがインテリアの椅子に目が向くようになったのは大きな変化です。70-80年代に「自立しはじめた女性」が、90年代になって余裕がではじめてきたという時代背景とも関係があるでしょう。

Date:08/11/20

先週、ぼくの本『ヨーロッパの目 日本の目ー文化のリアリティを読み解く』で紹介した「東西の架け橋 フィレンツェの文化財団」のイベントのためにフィレンツェに出かけてきました。そこでイタリアで40年近く活動してきた建築家の渡辺泰男さんの講演がありました。以前もこのブログでご紹介しましたが、槇文彦事務所を経てイタリア政府給費留学生としてローマ大学で勉強。都市計画の大家であるミラノのジャンカルロ・デ・カルロ事務所で働き、ウルビーノ大学の学生寮を手がけ、その後、アドリア海沿いのペザロでイタリア人とインタースタジオという事務所を設立しました。

イタリアを中心に、学校や大規模スポーツセンターなど多くの公共の建物を設計してきた方です。ぼくも15年近くお付き合いさせていただいていますが、ぼくが本を書くにあたっても、色々とアイデアを提供くださいました。その渡辺さんが、東欧や米国の建築家や建築の学生を前に日本建築の5つの特色を説明しました。その五つとは、「床構造(高さ)の重要性」「間切りの意味」「仮設性」「水平線の強調」「余白の意味」です。大変面白い内容でした。

ぼくは、この講演を聞きながら、いろいろな構想を膨らませていたのですが、その一つのアイデアとして、これらの五つの特色を日本の工業デザインの特徴説明に繋げていくとどうだろうかと考えました。今回の講演の観衆のメインは建築分野の人たちなので、建築に限った話でよかったのですが、異なった分野の観衆をも巻き込むプランを考えたらどうかと思ったわけです。

日本文化の特色を説明するにあたり、建築という歴史性と風土を要素として強くもつ視覚的題材はとても有効です。工業デザインの表現でも十分に地域性が出て、その地域性をどう意識化するか?とぼくは本のなかで書いたわけですが、工業デザインにはユニバーサルな要素も多く若干隠れがちになります。

このあたりに「馴染みやすい文化理解」のネタがあるように思えます。