
昨日、六本木AXISビルにあるJIDA(日本インダストリアルデザイナー協会)のデザインプロセス委員会の4月からの活動の一環として、ローカリゼーションマップ・プロジェクトのキックオフが行われました。ぼくにとってローカリゼーションの歴史のはじまりは、自動車メーカーに入りたての頃に「クルマの開発に地域性を考慮すべきではないか?」と考え始めた頃ですから、25年以上前となります。その後、色々な分野の様々なプロジェクトに関わるなかで、「どこまで文化性を重視すべきなのか?」は、いつも悩みの種でした。建築空間での文化性から脱出する試みとして電子デバイスにいけば、そこにも文化性の問いはついて回ったということになりました。そして、カーナビのユーザーインターフェースの欧州向けローカリゼーションの仕事をはじめ、それは決定的なテーマとなったといえます。(←この経緯は、「僕自身の歴史を話します」のなかで書きました)
そこで文化とは何を指すか?を考え始めたとき、政治学者の平野健一郎さんの『国際文化論』の「文化とは生きる工夫のすべて」という定義に出会い、それに基づいて『ヨーロッパの目 日本の目 -文化のリアリティを読み解く』を書きました。これが「ヨーロッパ文化部」プロジェクトのスタートとなり、講演会やセミナーあるいは勉強会で「ヨーロッパ文化を理解することが、ヨーロッパでビジネスをするに際して必須である」と語り始め、そのプロセスを本ブログやヨーロッパ文化部ノートで記してきました。ぼく自身、ヨーロッパの経験が長いがゆえにヨーロッパを題材に文化理解の事例を紹介してきたのですが、この切り口では多くの人の関心を引き寄せるには不十分であると感じてきました。特にリーマンショック以降、中国やインドなどの新興国がビジネスの焦点になっているところで、ヨーロッパへの関心が低下していることを認めざるをえませんでした。

ぼくが語る趣旨は同じなのですが、アングルの調整が必要であると感じたのです。話を個人的レベルに落としこめると受け手が自然に思える切り口でないといけないのではと思いました。「ああ、ヨーロッパのことか。観光としてはいいけどね」「日本の外のことには関係ないなぁ」という反応ではなく、「これはぼくの今の生活のダイレクトに使える発想だ」という風に。そうなってはじめてテーマが広がることを実感できるようになるに違いない、と。しかし、その突破口は、どこか近くにあるようで何と表現するのが良いのかはっきりと分かりませんでした。「ミラノサローネ2010」を出展者を想定対象に書きながら、自分で書いて「これかな?」と思ったのが、「ミラノサローネ2010(10) サランラップのカッター」です。
花王の日用品市場は電機業界でいえば白物家電の世界です。携帯電話のローカリゼーションはユーザーの地域文化より世代文化が優先されることがありますが、白物家電はユーザーの地域文化が尊重されるフィールドです。日本の全般的企業文化をグローバルなそれにしていくには、日用品と食品分野の海外市場の実績が有効に働きます。味の素やキッコーマンなどのローカリゼーションの苦労話が他の分野に生きるのです。ニンテンドーDSやソニーのPSの市場は、どこの国でも「イチ、ニー、サン」と声を出す空手や柔道の論理だといってよくーまたまたアイドル文化を中心とするコンテンツ業界もー、ここに線をひかないといけません。何度も書いているように、クルマもハイブリッドやEVと高級車では、受けいられる表現言語が違います。後者が地域文化重視です。花王の海外戦略が楽しみです。
ミラノサローネに出展するあなたは、あなたの発表する作品が、いわばローカリゼーションマップージャンルや製品の種類によってローカリゼーションの必要度が異なるーのどこに位置するジャンルなのか? それを明確にすることが大事です。
上記の内容をマッピングしていくプロジェクトを作ることが、文化に親近感をもつファーストステップになると思い、それをどう進めていくかを1月31日、ヨーロッパ文化部ノートに書きました。
必ずしも、各エキスパートが正確な知識や情報に基づいて描く必要はなく、「こういう考え方ができるのではないか」というイメージ提案ができればよいと思 う。そのために、「ローカリゼーションマップ研究会」とでもいうべきチームをボランティアベースで立ち上げ、意見交換をしながらカタチにできないかと思う のだ。
製品ごとにもつ世界観の違いを基点に文化の全体像がみえてくる・・・そういう構想だ。製品企画の人たちの参考資料になることもある かもしれないが、それは該当業界からすれば「ちょっと違うかな」という違和感があってもいいレベルを良しとするから、ポイントは各業界を超えた全体像に迫 ることを目指す。
このことで滞在中、いろいろな人に話してみようと思う。

日本に着いて2-3日後の文章です。そして2月、Twitterやその他でコンタクトをとれた人に片っ端から会いました。なるべく知っている人には会わず、初めて会う人を増やしていきました。そのため事前にスケジュールはあまり決めず、常に自由に行動できるようにしておき、何かイベントがあれば顔を出す、人と話す、ブログにそのことを書く、という繰り返しを行いました。そういう動きの中で、ローカリゼーションマップは個人ベースへの落とし込みができそうだという感触を得ました。そして、それについて確信をもったのが、3月第一週に幕張で行ったFOODEXです。ぼく個人でも、何百という人と七味オイルとオリーブについて実際に試食してもらいながらコンセプトを説明しました。結果、「七味オイルはラー油みたいだね」「オリーブは漬物ですね」という文脈の読み替えをお客さんが自分自身で試みたケースが商品を理解されるベストパターンであることが確認できました。
そこで、昨日の話は、冒頭に七味オイルPRのYouTube動画をもってきて、ローカリゼーションは食品や日用品の世界から見えていくとセンシティブに分かってくると話したわけです。何人かの参加者から「ローカリゼーションの理解は海外向けの話だけでなく、国内のビジネスでも使えますね」とコメントを頂き、個人ベースに置き換えるという汎用性が肯定されたのではないかと思いました。Twitterにおけるコメント(#lmap)にもありますから、「題材は海外でも適用範囲は無限」という公式をセットできるのではと思います。このプロジェクトをカタチにすべく努力することは大いに意味があるであろうと思った暴風の夜でした。
幕張メッセでの食の祭典も3日目。座る時間もなく立ちっ放しの日々は、馴れない身にとっては相当しんどいだろうなと想像していたのですが、思ったよりは椅子を求めないで過ごせるものだと思う今朝でした。立ちっ放しでまったく見知らぬ方に声をかけ、反応をみながら話を色々な方面に振るのは疲れないわけではないですがーいや、正直言うと、ぼくは同じ話を繰り返すより、色々と題材を振るほうがすきなのですがー、その瞬間瞬間に得る膨大な情報量ーそれは素振りであったり、目の色が変わるポイントも含めてーは何事にも変えがたい魅力があります。

上の写真は10時の入場スタート前の準備状況です。必要な商品や試食分を揃えます。この時刻は海浜幕張駅からメッセまで歩道を人が埋め尽くし、会場の外では登録所の前に長い列ができている時間です。しかし10時を過ぎてすぐスタンドの前を人が流れるわけではなく、この頃は会場の端から見ようとする人、目指すゾーンを探し歩く人の時間帯です。そうした人の塊が我々輸入ゾーンに押し寄せるには30分程度の時間が必要なようです。11時過ぎあたりから皆さんの食欲も出始め、午後3-4時頃までがピーク。その時刻以降、終了の午後5時くらいまでは試食でお腹が一杯になった人たちが、試食対象をより厳選しながら歩いている印象をうけます。そういうなかで、今日はTwitter経由で訪問してくださった方が初日と2日目よりも多い日でした。

先週末に神田のギャラリーに與語直子さんの写真展を見に行った記事は日曜日に書きましたが、この企画実行に関わった大西さんと田中さん(写真の左から)。また一橋大学の学生たちと勉強会をしたエントリーを2週間前に書きましたが、彼らもブースに来てくれました。たまたま一緒になったので記念撮影です。ぼくは彼らに商品開発の意図やローカリゼーションの意味を説明し、YouTubeのPRビデオを見てもらいました。そして、イタリアゾーンや国産ゾーンに行って各種の商品をみたうえで、我々の商品コンセプトを理解してくださいとお願いしてみました。
彼らの二人(写真の右二人)は数時間後にブースに戻ってきて、こう語ってくれました。「外国製品の良さは良さですごく理解できた。しかし、その商品が輸入市場である規模のビジネスをするためには、それらの商品を日常生活レベルに上手く落とし込んでいかないといけないと思った。そこでローカリゼーションのノウハウが重要だと考えた」と。それで、ぼくは食品や日用品の世界とクルマの世界の違いなどについて話したのですが、彼らは腑に落ちた表情をしてくれました。
今回、試食をしていただいている幅広い世代の何百人かの方から「美味しい!」「面白い!」「このコンセプトは初めて!」という言葉を聞きました。特にシェフや若い世代の人たちから、圧倒的な支持を得たのがとても嬉しいのですが、そういうなかで、若い世代が上述したような理解を示してくれたのはもう一方でさらに深い喜びがあります。それは彼らが、輸入品への要望事項としてだけではなく、世界戦略への基礎として把握してくれたからです。我々日本人だけがローカリゼーションに煩いのではなく、どこの国の人も一様に同じような要求をもっています。それをどう当たり前のこととして思うか。やはり、これを抽象的な言葉と具体的なモノやコトの両方で示していかないといけないと再認識したTwitter日和の一日でした。
昨日書いたように、幕張メッセFOODEXでのブースの場所は決して絶好のポジションではありません。人の流れの軸線上にないのです。しかも、隣のゾーンがやる気のなさそうな中国ブース。今朝、周辺の中国人に聞いてきました。「どうして、人を呼び込む工夫をしないの?試食もオファーしていないみたいだし・・・」と。すると、「我々が日本の最終顧客に売り込んで商談が成功するはずがない。我々は商社や日本のメーカーがターゲット。日本のメーカーで中国で生産したいという需要にこたえるのが我々の役目」と実にはっきりした回答が返ってきました。無駄なことは一切しないという方針が明確で、ブースの前を人が通過しようがまったく気に留めないのは、このためなのだということが良く分かりました。

昨晩、幕張のニューオータニでFOODEXの参加者の交流会がありました。そこでたまたまその日の午前中、ブースが近いために名刺交換をしていた会社がありました。イベリコ豚の生ハムなどを扱っているグルメミートワールドの田村さんです。「おたくの場所は人の流れが多くてうらやましい限りです」(上の写真の左奥)と話し、色々とローカリゼーションについて意見交換しているうちに、田村さんは「じゃあ、明日からおたくの商品をウチのスタンドにおいておきましょう」とおっしゃってくれました。それは有難いと今日から、グルメミートワールドのテーブルにデルポンテの七味オイルなどを置いてもらいました。そこで我々の商品を見た方で「これは?」と尋ねられた方には、「あそこのブースで試食できます」とご案内していただいたわけです。

ブログやTwitterで見たという方も何人か我々のスタンドに来られ、1日目よりもずっと充実した展開をうることができました。そのなかで、商品コンセプトの説明にもう一つ何かが欲しいと思いました。七味オイルはイタリアの伝統的ぺペロンチーノオイルに対して八幡屋礒五郎の七味唐辛子を使うことによるローカリゼーションであり、和洋折衷のエッセンスは5対5ではない(7対3あたり)ということが骨子にあります。七味オイル風味のオリーブは、南イタリアのレシピにあるぺペロンチーノのオイル漬けオリーブの進化版というのがコンセプトです。しかし、もう一歩、オイル漬けオリーブの適切な日本語訳が必要であると考えていました。その回答が長野で代々漬物をやっている木の花屋さんの宮城恵美子さん(上の写真はデルポンテのアレキサンダーと宮城さん)の活動にありました。

そう、オイル漬けオリーブは「漬物」という概念であり、その概念に沿った形で日本に紹介していくことが良いのではないか、ということが今日の発想です。七味オイルのインポーターをしている長野・上田の石森さん(上の写真は今晩の居酒屋での一場面)が渡辺さんを連れてこられたのですが、実はアレキサンダー自身はオイル漬けオリーブは日本での漬物であると考えていました。しかし、そのようにヨーロッパ人が説明するのではなく、日本人が日本人の思考枠のなかで、「これは漬物である」と自然に思えることが重要なのです。日本で漬物は野菜のできない季節の保存食として考えられました。それはイタリアでも似たような事情があるのですが、しかし、その周辺事情だけでは同じカテゴリーと定義するリアリティに欠けるのです。石森さんが居酒屋で言った「漬物って特に欲しいと思わなくても、テーブルの上にあると、なんとなく食べているんですね」という感覚が日本とイタリアで一致していることが、似たものを同じものとするに際しての決定打ではないか・・・とそんなことを思いました。