昨日書いたように、幕張メッセFOODEXでのブースの場所は決して絶好のポジションではありません。人の流れの軸線上にないのです。しかも、隣のゾーンがやる気のなさそうな中国ブース。今朝、周辺の中国人に聞いてきました。「どうして、人を呼び込む工夫をしないの?試食もオファーしていないみたいだし・・・」と。すると、「我々が日本の最終顧客に売り込んで商談が成功するはずがない。我々は商社や日本のメーカーがターゲット。日本のメーカーで中国で生産したいという需要にこたえるのが我々の役目」と実にはっきりした回答が返ってきました。無駄なことは一切しないという方針が明確で、ブースの前を人が通過しようがまったく気に留めないのは、このためなのだということが良く分かりました。

昨晩、幕張のニューオータニでFOODEXの参加者の交流会がありました。そこでたまたまその日の午前中、ブースが近いために名刺交換をしていた会社がありました。イベリコ豚の生ハムなどを扱っているグルメミートワールドの田村さんです。「おたくの場所は人の流れが多くてうらやましい限りです」(上の写真の左奥)と話し、色々とローカリゼーションについて意見交換しているうちに、田村さんは「じゃあ、明日からおたくの商品をウチのスタンドにおいておきましょう」とおっしゃってくれました。それは有難いと今日から、グルメミートワールドのテーブルにデルポンテの七味オイルなどを置いてもらいました。そこで我々の商品を見た方で「これは?」と尋ねられた方には、「あそこのブースで試食できます」とご案内していただいたわけです。

ブログやTwitterで見たという方も何人か我々のスタンドに来られ、1日目よりもずっと充実した展開をうることができました。そのなかで、商品コンセプトの説明にもう一つ何かが欲しいと思いました。七味オイルはイタリアの伝統的ぺペロンチーノオイルに対して八幡屋礒五郎の七味唐辛子を使うことによるローカリゼーションであり、和洋折衷のエッセンスは5対5ではない(7対3あたり)ということが骨子にあります。七味オイル風味のオリーブは、南イタリアのレシピにあるぺペロンチーノのオイル漬けオリーブの進化版というのがコンセプトです。しかし、もう一歩、オイル漬けオリーブの適切な日本語訳が必要であると考えていました。その回答が長野で代々漬物をやっている木の花屋さんの宮城恵美子さん(上の写真はデルポンテのアレキサンダーと宮城さん)の活動にありました。

そう、オイル漬けオリーブは「漬物」という概念であり、その概念に沿った形で日本に紹介していくことが良いのではないか、ということが今日の発想です。七味オイルのインポーターをしている長野・上田の石森さん(上の写真は今晩の居酒屋での一場面)が渡辺さんを連れてこられたのですが、実はアレキサンダー自身はオイル漬けオリーブは日本での漬物であると考えていました。しかし、そのようにヨーロッパ人が説明するのではなく、日本人が日本人の思考枠のなかで、「これは漬物である」と自然に思えることが重要なのです。日本で漬物は野菜のできない季節の保存食として考えられました。それはイタリアでも似たような事情があるのですが、しかし、その周辺事情だけでは同じカテゴリーと定義するリアリティに欠けるのです。石森さんが居酒屋で言った「漬物って特に欲しいと思わなくても、テーブルの上にあると、なんとなく食べているんですね」という感覚が日本とイタリアで一致していることが、似たものを同じものとするに際しての決定打ではないか・・・とそんなことを思いました。
今日、幕張メッセでの食品の祭典、FOODEXがスタートしました。イタリアのエキストラヴァージンオイルとそこか生まれたコラボレーション商品、七味オイルや七味オイル風味オリーブのプロモーションを行いました。色々な方に来て頂きました。業界も職種も様々です。一つ、よく分かったことがあります。これは繰り返し、このブログで書いていることですが、ある味を賞賛するのは味覚、触覚、臭覚、視覚だけではなく、ロジックで評価するということです。もちろん頭でっかちの味覚は話になりませんが、必ずしも舌だけで人は簡単に振り向かないというという事実です。焼酎、赤ワインなど、まずは「健康に良い」というロジックがブームの皮切りとなったのです。

今までデパートでのデモや地方での展示会の出展はありましたが、今回、初めて日本でこのような見本市に出展したのですが、スタンドのデザインはWEBデザインとの連携を考えました。あえて新しいパネルを作るのではなく、我々のWEBサイトのトップページの画像をそのままパネルにしました。WEBあるいはTwitterで我々のことを知った方が、このリアルな場をどう既視(デジャヴュ)的場所にするかが重要だと考えました。ヴァーチャル感とリアル感のリンクです。正直に言って、ブースの場所は良くありません。輸入品ゾーン(6E20)ですが、アジアブースとの境目で、どう見ても売り込みに熱心とは思えないブースとの隣り合わせで相乗効果が見込めません。彼らはずっと椅子に座り込んで、自分のブースに人を呼び込む工夫をまったくしません。それでも、開始後、2時間程度を経るとだんだんと訪問者が増えてきます。

特にどこか離れた場所で呼び込みをかけたわけではなく、スタンドの前の通路を通過する人たちにどう試食していただくかに集中しました。いわゆる通路での挟み撃ちではなく、我々の商品のコンセプトで「試食してみたい!」と想っていただくことを考えました。イタリアのエキストラヴァージンオイルはイタリアの貿易振興会がもっているスペースに行けばたくさんテスティングできます。が、それはこちらの狙いどころの少々異なります。我々も100%イタリアのオリーブオイルやジャムあるいは蜂蜜を紹介しています。しかし、我々の強みはローカリゼーションのノウハウです。どういう経緯で七味オイルというコンセプトが生まれたのか、これがどうこれからのビジネスのノウハウとして必要なのかをお話すると、かなりの方が「面白い!」と言ってくださいました。そして、一度試食したものをもう一度試食してくださいました。これは味覚とロジックの間にリンクを作ってくれたという証明です。

一日が終わって幕張のパブでデルポンテ社長のアレキサンダーと話しこみました。二次元画法と三次元画法の間にあるギャップについてです。食品見本市の後に、このような議論をすることを不思議に想うかもしれません。このあたりの説明を明日以降に書いていきましょう。因みに、試食していただいた方たちは、かなりの割合で即「美味い!」「面白い!」と言ってくれました。そしてコンセプトについて説明すると、もっと深いところで納得いただけた表情を示してくれました。

ぼくは日本でも、たまにイタリア料理のレストランに行きます。まず、体や舌が欲するのです。よく「日本でイタリア料理を食べなくてもいいでしょう」と人に言われるのですが、比較的薄味で軽い和食が続くと、ある程度の重さが欲しくなります。それもフランス料理ではなくイタリア料理で。もうひとつの理由は、日本のなかでイタリア料理や文化がどれだけ浸透し、どれだけ誤解され、でもどれだけ時間をかけて修正されていくかのを定点観測するためです。これはマーケットリサーチ上、フォローしておくべきではないかと思い、イタリアレストランに足を運びます。
それに比べると、イタリアンのワインバーはあまり行きません。たまに出かけますが、バーはシングルモルトを目指すことが多いです。というのも、ワインだけを飲むことはぼくの習慣としてあまりなく、あえていえば昼間、日光を浴びながら冷やしたーアイスを入れることもありますー白ワインを飲むか、夕方に食前酒として飲むというパターンです。基本的にワインは食事と一緒です。美味しいパルミジャーノをナイフで切りながら重い赤を飲むこともありますが、それは美味しいチーズがあるときで、その逆ではないのです。
今週、神宮前にあるワインバーAZに出かけ、「そうか、こういう場所があったのか」と思いました。カウンターと数少ないテーブルで10人前後の空間は温かみがあり、イタリアが好きなオーナーの平野さんと雑談をしていると、先日、横浜元町で抱いたような不足感の充満とは無縁な異文化の受容表現があるなと思ったのです。いや、多分、数十年前の元町も同じだったのかもしれませんが、あの時代は地中海料理という表現が一般的であったように、やや雑駁な文化受容だったと思います。それにたいして、現在はディテールで嘘がないことを示していく必要がある時代なのだと感じます。
もちろん文脈はそのまま伝播できず、ディテールの数々は違った位置づけをされていくのですが、それでもディテールの重みがリアリティを提示し、そのディテールがより検証可能な今は、数十年前とは違った店になっていくのが当然です。しかも、そのディテールは必ずしもすべての視点からみた客観的真実であるよりーそういうこととは、昔でもありえなかったのですがー、君自身の視点で「これ!」と言えれば良いという価値観に我々は生きているという自覚がより強くなっています。だからこそ、「地中海料理」という逃げが通用しなくなったとも言えそうです。