ローカリゼーションマップ の記事

Date:11/10/5

ローカルという言葉をある特定のエリアとして指すだけでなく、あるムーブメントのコアとして捉えるべきであるとi.school の田村大さんがプレゼンで強調したとき、「いいこと言うなあ。ローカルを静的レベルで言うだけでは行き詰るだけだし・・・」と思いました。その後、田村さんが「あのポイントに対して聞いてくれてた人たちがあまり反応しなかったようなので残念でした」と僕に話しました。それはどうかな?消化に時間がかかっているのではないかなと想像しました。きっと「スローフードというコンセプトが世界に広まったようには、『もったいない』のような日本の言葉が世界に広がったことがない」(田村さん)に象徴されるのは、製品は世界に広まったけどコンセプト自身が世界に定着した例は稀ということを指しているのでしょう。今日、六本木ミッドタウンで行われた「コンテクストをデザインするーローカル価値の異文化対応」での舞台裏一場面です。

ソニーのウォークマンは新しいミュージックライフを作り、「コンテクスト創造」の日本企業の優れた例として伝説のように語り継がれていますが、複数のアイテムを抽象レベルで統合させることが日本のさまざまな活動において、相変わらず不得意であることを田村さんの言葉は指摘しているのだと思います。ローカルについての定義も実は同一線上にあり、「地元の人が一番だよね。外の人はその応援に徹するべき」「土地にある過去のネタをいかに現代に再生させるか」との表現が唯一の「正当であり正統である」との拘りから脱却すべきということです。もちろん、それらを全面的に否定するのではなく、色々ある手法の一つとしてみるという理解をぼくはしました。即ち、複数の他の文脈にローカルを持ち込む見方や発想の転換が求められています。言い換えると、どこの次元に持ち上げれば統合ポイントが見えるか?という勘が鍛えられていないと、迷路を壁より高いところでみるためのジャンプができません

例えば、イタリアデザインが世界で評価されるのは、今、イタリア人デザイナーの能力ではありません。レオナルドやミケランジェロの才能を「宣伝」に使うし、1950-70年代あたりまでの「イタリアデザイン高度成長時代」は多くはイタリア人デザイナーが作ったものでした。リチャード・サッパーは例外です。しかし、その後はイタリアで仕事をする「イタリア化した」外国人であったり、テキスタイルやファッションを起点とした「総合デザインメカニズム」とも呼ぶべき側面に評価の焦点に移りました。

それでは、どこの国でもそのメカニズムを移植すれば?ということになります。確かに、多くの国が「デザイン産業立国」たらんとしています。が、それなりのレベルには行くのですが、なかなかできません。「よく分からないけど、イタリアのデザインは面白そうだ」と言われるのと同じレベルで、英国やフィンランドにデザイン留学はしないだろうと思うのです。多くの外国人が入り込んでいても、メカニズムの多くの要素がイタリアのライフスタイルと表裏一体となっていることによる壁です。しかし、これが強みであり、同時にイタリアデザインの弱みでもあります。英国や北欧に比べ暗黙知の部分が多いため、全体像を掴むには迷路を辿る確率が圧倒的に高いのです。暗喩と修辞法が発達した文化の理解は難度が高いはずです。

やや脱線してしまいましたが、多くの概念と同じように、ローカルの意味の理解にはそれなりの経験が必要なのではないかということを僕は今日再認識したわけです。ローカルは現地であり地元であり・・・自分の実感に従えば良いと思い勝ちだから危ない。特に、日本では他の宗教圏のような共有すべきテキストが不在と考えられているからなおさらですー。そして、その延長線上で推測するならば、i.school の横田さんと博報堂イノベーションラボの清水さんにファシリテートしていただいたワークショップのプロセスは、ある人には大変刺激的で、ある人には意味不明な宿題が残ったのではないかと考えました。ぼく自身にとっては、非常に面白かった。コンセプトがローカリゼーションマップのコンテクストへの迫り方とよく繋がっていて、「このワークショップのフォーマットは、今後、ローカリゼーションマップのワークショップとして応用して使わせてもらいたいなぁ」と感じました。

ご協力いただいた皆さん、参加された皆さん、どうも有難うございました。また、お会いしましょう。

 

Date:11/10/3

「ぼくは日本、台湾、韓国、タイ、カタールの各国の企業で働いた経験があるけど、日本の企業が一番いい。マインドが広いって言うか、寛容というか、従業員を大切にしてくれる空気があった。でも独立してやっていくことにしたんで、今、カナダでエンジニアのマスターに入りなおしたんだ。もう他人に自分の人生を左右されたくないんだよね。だから、日本企業には良い思い出が沢山あるんだけど、あそこに戻りたいとは思わない。自分にしかできない仕事に従事したい」と話す横に座ったタイ人の男性。30代後半くらいだと思います。

ぼくはミラノから香港にきてソウル行きを待ち、彼はバンクーバーから着いてバンコク便を待っていました。香港の台風で飛行機が大幅に遅れ、接続便に乗り損ねた二人が空港のロビーでたまたま隣あわせになって雑談をしていたのです。ぼくは、この「広いマインド」という言葉がひっかかりました。「確かに日本企業はそういう評判を受けてきたし、それがプラスの面で作用したことも多いけど、まさしく、その点が集中投資への判断を狂わした部分があるかもよ」と答えると、「それが韓国企業の隆盛を導いたのだろうか」と質問。「そうかもね」とぼくが答えながら、香港までの機内で読んでいた”The Economist” の特集記事を思い起こしていました。

特集は経済の中心が西から東へ移動していることに触れているのですが、何がオフショア化が可能で何が不可能なのか?について色々と例を挙げています。国際契約の弁護士はオフショア化できますが、離婚弁護士は「土着的」。パーソナルのリアルな関係を維持することが不可欠かどうかが分かれ道になるわけです。ぼく自身、自分の仕事がどこまでオフショア化されるかを機中考えていたので、香港で1時間ほどの雑談の相手がエンジニアの仕事を「代替不可能」と判断している背景を知りたいなと思いました。どこまで第三者の目になりきれるか・・・です。

翌日、ソウル近郊の会社で欧州で誕生した新素材のアジア戦略を話し合うミーティングに出席しながら、日本が代替不可能と思い込んでいたものが、まったく違ったアプローチから次々と覆されてきている現実に接し、日本はヤバイなとここでも思いました。ぼくはビジネス上は欧州サイドに立っているのですが、やはり日本の下降線を見たいとは思いません。

知財の世界でも10年先の「面取り」は中国あたりは着実に歩を進めていると聞きます。知財は10年後の製品化とその先の10年で稼ぐので、挽回の道に即でるか、15~20年後の復活を目指すかという大雑把な話ができるしょう。日本は完成品は落ち目だけど、コンポーネントや素材はまだまだという声がありますが、その素材も実は結構危ういところを歩いています。完成品メーカーに挑戦の意欲がなく、素材メーカーだけ元気ということも考えにくいのです。たとえ、販売のかなりの比率が日本の外にあってもです。

深刻になればえらく深刻になる話です。しかし、深刻だ深刻だと騒いでても一向にコトは好転しません。ガラリと頭の切り替えを如何にできるかだけ・・・・・・あまりに芸のないつまらない結論ですが、異なるロジックに浴びるほどにあって、「深刻癖」を忘れるしかないでしょう

明日はミッドタウンで、「コンテクストをデザインするーローカル価値の異文化対応」です。前向き以外に向きはない・・・今日の言葉(笑)です。

Date:11/9/15

10月4日、六本木ミッドタウンで以下のイベントが行われますが、先日、ご案内した内容を少々詳しく記載したヴァージョンに変更されました。

http://jida.jp/2011/09/02/context_designing/

 

<ここから>

開催趣旨

「日本の力が劣化しているのではないか?日本の経済が世界で存在感を示していない」との声が内外から聞こえてきます。

確かに日本の外で目に見える「メイド・イン・ジャパン」は減っているでしょう。しかし、目に見えない「メイド・イン・ジャパン」も実は健闘していま す。あるいは、「メイド・イン・ジャパン」ではないけれど、元をただせば「日本発」というモノやコトは数多くあります。日本の存在感が議論の対象となるの は、これら「目に見えないもの」「目に見えるもの」が上手くコーディネートされていないことに対する焦りでは?というところに私たちの問題意識がありま す。

このテーマに正面から立ち向かうに、いくつかのキーワードをあげます。

●一つ目は「コンテクスト」。今のビジネスにおいて、モノやコトを囲む状況や背景という市場のコンテクスト(文脈)にフィットすることが、殊の外、重要になってきています。良いモノを棚に置いておけば自然と売れるということは稀です。

●2つ目は「ローカル」。グローバリゼーションという現実のなかで、リアリティ溢れるローカルの価値が「地に足をつけたもの」として再認識されつつあります。「〇〇産」と明記されることに意味があります。

●3つ目は「ローカリゼーション」。地産地消でシステムが完結すれば問題は生じませんが、人やモノが移動する時、異文化対応(ローカリゼーション)という視点が必要になってきます。江戸前寿司が、寿司を知らない外国人に即高い評価を受けることは少ないでしょう。

3.11の被災地、気仙沼で何が起こっているかをスタート地点に、上記のポイントを踏まえたシンポジウム+ワークショップを開催します。デザイン分野だけでなく、事業企画、商品企画、社会起業、学生・・・さまざまな分野の方の積極的参加をお待ちしています。

5時間半と長丁場です。でも、終わった時、きっと「明日が見える」はずです。

 

開催概要:

◉イベントタイトル:『コンテクストをデザインする ー ローカル価値の異文化対応』
◉開催日時:2011年10月4日(火) 13:00会場 13:30〜19:00
◉会場:インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー5F TEL:03-6743-3779
◉主催:JIDA東日本ブロック・デザインプロセス委員会(担当:中林鉄太郎)
◉参加費:¥3,500- (定員60名)
◉プログラム:

13:30 – 13:40 開会の挨拶とプログラム内容説明
13:40 – 14:20 被災地気仙沼・唐桑からの発信(東大i.school ディレクター 田村大)
イノベーション教育で次々に挑戦的な試みを手掛ける i.schoolが、地元の人たちと一緒に気仙沼唐桑地区の新しい道を探っています。ローカルにある価値の再発見とその後の展開の可能性を報告して頂きます。参考:活動状況はフェイスブックでご覧になれます。
14:20 – 15:00 日本の産業におけるコンテクスト創造の意味(経済産業省クリエイティブ産業課 渡辺哲也課長)
「クールジャパ ン」政策というとアニメやマンガなどのサブカルチャーばかりが話題になる傾向があります。これは、その趣旨がよく伝達されていないためではないかとも想像 されます。そこで「コンテクストの創造」という視点から、本政策を推進する渡辺哲也課長にお話しいただきます。参考:オンラインでの記事
15:00 – 15:40 ローカリゼーションマップとは?(中林鉄太郎、安西洋之)
「ローカリゼーションマップ」は、モノやコトに対するローカリゼーションの地域ごとの期待度をみることで異文化市場を理解する試みです。ローカリゼーションを一つの視点として使いながら、コンテクストを把握するヒントを提供します。参考:オンラインでの記事。『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』(日経BP社)
15:40 – 16:00 休憩(名刺交換&会場セッティング変更)
16:00 – 18:00 アイデアワークショップ「コンテクストの作り方」
上記のプレゼンテーションを踏まえ、参加者の方が数名で1グループになり、日本のローカルにあるモノやコトを例に用いながらコンテクストを実際に作って頂きます。
18:00 – 18:45 ワークショップまとめと発表
18:45 – 19:00 クロージング(被災地関連活動報告)


申込:

参加申込は、1)氏名、2)所属、3)勤務先、4)電話、5)E-mail を記入の上、メールタイトルを「プロセス委員会10月イベント申込」とし、JIDA事務局 E-mail : jidasec@jida.or.jp までメールください。

社団法人 日本インダストリアルデザイナー協会
Japan Industrial Designers’ Association/JIDA106-0032
東京都港区六本木5-17-1 AXISビル4F
Tel:03-3587-6391 Fax:03-3587-6393