イノベーティブ思考 の記事

Date:13/1/27

のっけから恐縮ですが、ぼくは蛇が大嫌いです。あのニョロニョロ動く様子に背筋がゾッ・・・。学生時代に香港に遊びに行ったとき、友人にヴェトナム料理屋で「ここの蛇はすごく美味いから、絶対おすすめ!」と言われて、恐る恐る食べてみると、友人の言葉のとおりで大感激しました。しかし、その後も生きた蛇を見るのは相変わらず苦手です。

ぼくの奥さんは生きたウナギを買ってきて自分でさばいて蒲焼を作り、「魚に見つめられると包丁がおろせない」なんてヤワイことをいう主婦を小馬鹿にしている節(?)がありますが、ハチが部屋に入ってくると大騒ぎして逃げ回っています。どうも小さい時にハチに刺されて、えらい目にあった恐怖心が蘇ってくるようです。

不思議なものです。人の嫌悪感とは一筋縄で理解できません。

南北アメリカ大陸をクルマで2年間かけて縦断したり、やはりクルマで一年かけてアフリカを旅した友人がいます。ある晩、車内で寝ていると異様な音が聞こえて目を覚ますとライオンの群れに囲まれていたとか、靴をはこうと思ったらサソリがなかにいたとか・・・そういう経験をした人です。その彼と東京の中華料理屋でエビを食べている時、何気なく「昆虫、食べたことあるんでしょうね」と聞くと、「そりゃあ、食べたよ。アフリカなんかでタンパク質をとるには最高だからね」との答え。「人ってね、身体が欲しいと思う時には、目の前にある必要なものを抵抗なく口にできるもんなんだよ」

人の味覚、好みは幼児期に決まるといわれる。食べ物の場合も同じで、八回から十回も摂取を経験すると、私たちはその食物も好きになっていくことが確かめられている。さらに幼少期にどれだけ多くの種類の食物をとったかも重要である。

エビと昆虫は味や歯ごたえは似た食材ながら、昆虫には「脳で拒否」するケースが多く、昆虫食の試食会に親子一緒に参加してもらうと尻ごみをするのは圧倒的に親の方だといいます。子供たちは「美味しいじゃない」とパクパク口にする。サバイバル状況にない大人には頭がついていけない証拠です。

昆虫食に違和感を持たせないようにするには、自分で昆虫をとり、自分で調理させるのが一番いいと言います。とすると、豚の顔がそのまま吊る下がっている豚肉には抵抗を感じることや、鶏を殺すところを実際に目にすると食べる気になれない・・・というのは、どういうことなんでしょう。

国立極地研究所の「南極設営シンポジウム」で筆者が講演の依頼をうけたときの要旨が、昆虫食を考える際に参考になります。まず主宰者から以下のアドバイスを提供されます。

【利点】

・自給自足可能な食材の確保→輸送量の低減

・廃棄物処理→極地研の最重要テーマ

・栄養学的優位性→新鮮な食品の供給

・癒し(多少意見が分かれるところ)

【問題点】

・南極条約による生物持ち込み禁止規定

・乾燥に耐えうるか(室内は暖かいので寒さの懸念はない)

宇宙開発分野で既に昆虫食は検討対象に入っているので、これを冒頭で紹介し、上記の点を説明すると良いだろう、と。筆者は以下のポイントを利点として挙げました。

1)卵で運搬でき、孵化から成虫まで小設備で飼育ができること

2)野菜屑など廃棄物を飼料としてリサイクルがはかれること

3)昆虫一般に栄養学が高くバランスもすぐれていること

4)生鮮食品であること

南極に食用として厳密に管理された昆虫牧場をつくれば可能ではないかと提案した結果、観衆から好評だったようです。さすが好奇心旺盛な冒険家たちです。世界の食料危機を前に、いろいろな機関で昆虫の食への検討が進められていますが、本書には社会イノベーションの問題点と解決策が具体的に述べられており、これから日本の食を海外で普及させていきたいと考えている人達にとっても必読の書と言えます。

最後に。本書でもタイは昆虫がよく食べられている国として紹介されています(日本では長野県)が、昨年、タイの大財閥のトップに「昆虫を食べるという習慣があるようですね」とぼくが話したら、「そんなの、誰が食べるんだろう。変わった人達じゃないの」、とやや不愉快な表情をしながら彼の言葉が返ってきました。寿司が富裕層やインテリ層から人気がでたように、昆虫食もまずは上層から攻めるのがいいのかな、と思った瞬間です。

 

Date:12/10/14

東京を中心に30代半ばの人たちが定期的に集まってワイワイおしゃべりする会があります。日本を何とかしたい、世界を変えていきたい・・・と思う人達が多いのですが、この会でサイトを作ることになりました。ぼくもスピーカーとして参加したことがあるので、コメントを掲載したいと依頼されました。お題は二つで、ぼくが会で話したことの趣旨と、会のメンバーへの一言です。数日前、その原稿を書いたので、ここにも掲載しておきます。それぞれ400字以内です。

ひとつめは、ローカリゼーションマップの狙いです。タイトルは「異文化への苦手意識をどう解消する?」です。

アカデミックに異文化を100%理解しようとしない。ビジネスを前進するには、この心構えが必要。世界を分かるためには、人と会いまくるか、モノをみていくか。これら2つのアプローチがあります。

もちろん人と話すのは大事。が、「人はみんな同じ」か「人は全部違う」という結論ではビジネスに使えません。そこで市場でローカライズされたモノをみて、地域で鍵となるロジックを探るのが有効になります。これがローカリゼーションマップ。ターゲット市場の消費者の頭の働きを理解するのが目的です。

今年から、企業の中でレクチャーやワークショップをスタートさせました。具体的なビジネスプランや商品企画を作るサポートをしていきます。

又、この活動は日本国内だけでなく国外でも行います。第一弾として、9月にバンコクのデザイン振興機関でタイ人のビジネスマネージャーやデザイナーを相手に行いましたが、海外進出を図る参加者から好評でした。

ローカリゼーションマップを端的に説明することを何百回とやってきましたが、たぶん、今時点では、このような表現が一番いいかなと思っています。みるべきモノは最低3つのフィールドにまたがっていることが条件で、「地域で鍵となるロジック」も一つではありません。

一方、二つ目の30代半ばの人たちへの言葉のタイトルは「如何に頭の中を計画的に『更新』するか?」

一番恐れなければいけないのは、頭の中が閉じていることです。どうしても開放させないといけない。そのためにすることは2つです。意図的に場所と時を移動すること。

生活圏500mの範囲でこれができる人もいますが、愚かなぼくには叶えない課題です。どうしても物理的な距離を移動しないとダメなんですね。それでミラノに住んでいる。やはり刺激が沢山あります。外国人ゆえの特権です。

時の移動は、例えば歴史の本をたまに読むことです。そうすると当たり前と思っている考え方が、すごく古い時代に起源があったり、ほんの数十年前に生まれたものだったりすることに気づきます。

大切なのは、そうやって常に頭の中の「更新」を計画的にやることです。ぼくの夢は、新しいコンセプトを作ることです。そのために拠点としてヨーロッパを選択しました。ヨーロッパは「更新の仕方」が他の地域より成熟しているからです。

気楽に遊びに来てください。

場所の移動には言語空間での移動も含みます。物理的に動けなければ、少なくても普段使っている言語ではない言語を意識的に使うことです。

このブログのエントリーを「まだ見ぬ地平線を目指す君たちへ」とややエラソーに書きましたが、この会には既に驚くような活躍をしている人達も多く、ぼくがアドバイスをもらいたいくらいです。ただ、20年近く彼らより多く生きている人間の経験から言わせてもらうと、35歳はあらゆる意味で転換期です。幸運と勢いで撃ち落としてきた鳥も、これ以降、知恵がつき始めます。鳥を飼いならすなり、違った方法で生きていかなくてはいけないでしょう。40代後半以降の「深み」を獲得するためのプロセスとして、「再起動」が35歳と考えてよいと思います。

「再起動」をいつクリックするか。その判断だけは早くしておいた方が良いと思います。

 

 

Date:12/8/11

今週、友人と会って深夜まで酒を飲みながら話し込みました。

彼はアーティスティックな写真を多く撮影してきて、その作品は「味がある」と言われてきました。一点に焦点を合わすことで、周囲がぼやけることが「味になる」。そういうタイプを自分の強みとしてきたのです。しかし、最近になって、一方で「絵葉書のようなステレオタイプ」の写真を大量に撮影するプロジェクトを請け負うことになりました。「絵葉書のような写真なんてつまらないじゃない」という勿れ。そういう写真でないと利用できないケースもあるのです。ビジネスプレゼンで大画面で風景を映し出したいとき、「味のある写真」は困るのです。

何とかできるだろう・・・と思った彼が「味がでない」ために悪戦苦闘したプロセスがとても興味深かったです。撮影は水平垂直や露出度なども全て手引きにそって行なうのは当たり前ながら、撮影後もフォトショップ上で微調整作業がえらく膨大。全て100%の状態にして粗がないかどうかの確認をしていきます。ピントをあらゆる点であわせていくことが、ステレオタイプになるために必要な手順なのです。「アナログの時代であればよしとされたレベルを大きく上回ることが要求されるのがデジタルの時代」という事実を身を持って背負うことになります。

建物も「みなが想像するような」深みのあるように撮影しないといけないので、正面からではなく45度斜めの位置から、あるいは撮影位置を意図的に下げるなりと変えていきます。半年前にスタートした時、合格点がでる写真は30%強だったといいます。「味のある」写真ではプロと通じている彼の技量をもってして、「味のない」世界では右往左往する羽目に陥ったわけです。「何が大変って、食事をする時とか、眠い時とか、そういう怠惰になりたい時こそが撮影のベストタイミングなんですよね」となるから、山の風景を撮りに行っても優雅な時を過ごせることもありません。

とにかく天気が重要です。天候が不安定なところで無駄に取材先で時を過ごすのは効率が悪い。毎日天気予報を追い、「明日だ!」と判断すると翌日の早朝から突撃です。移動もなるべくバスや電車を使うようにしました。彼はここでも発見します。クルマで自由に移動して撮影しているカメラマンの写真は無駄がないというのです。言ってみれば、一つの対象や場所に対するバリエーションが圧倒的に少ないことに気が付きます。バスの出発時刻までに2時間あれば、その周囲をぶらつくことで、新しい視点を獲得できます。それが期待以上の成果をもたらすのです。そうした余裕のある時間を作ることを、彼はこれまでも意図的にしてきたはずなのに、強制的に生み出される時間との間には隔たりがあったと認識しました。

何よりもぼくが感心したのは、ステレオタイプと人が期待する写真は漫然と生み出されるのではなく、ステレオタイプと思われる基準に如何に近づけるかという精緻な努力の結果であることです。彼はこうして今や100%に近い確率でステレオタイプ的な写真を後処理時間も含めて効率的に仕上げることができるようになりました。「あれは、あれですごい世界だ」と彼は語ります。

「味のあるステレオタイプではない」写真を偶然性や勘ではないところで創りだせるコツを得るのも、かなり論理的作業に依拠することになるだろうというのが、ぼくのこれから探っていきたいポイントです。

Category: イノベーティブ思考 | Author 安西 洋之  | 
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