ミラノサローネ2012 の記事

Date:12/4/20

昨年、ミラノ東北のランブラーテ地区を「イタリアデザインの出口というより、外国デザインの入口である」と書きました。今、そのランブラーテの地下鉄の駅を外に出ようとすると階段の手前に下のようなイラストが壁に貼られています。

「あっ、やったな!」と思わず感嘆の声がでました。もともと工場や倉庫などが多かったのがロフト感覚あふれるゾーンに変わりつつある、そのムードにイケアのブランドイメージがばっちりと合うのです。オランダや北欧群のデザインが溢れ、イケアがポリシーとして押し出す「公平感」がこの地域の文脈と嵌ります。イケアがトルトーナではなくー数年前にトルトーナで出展したことがありますがー、このゾーンで新作発表の展示を行うことが如何に戦略的であるかが見えます。

このメッセージがあるギャラリーの壁に貼ってありました。この近くでイケアは商品を展示しているわけです。このギャラリーの向かいでは英国のRCAの学生たちがコンセプチュアルな作品を多く出しています。時間や経済的な価値の見直しをテーマにした展示があるなか、中庭では「ミラノでお金を作る」というパフォーマンスまでしています。

もちろんイケアは周辺で展示される作品を事前に知って展示場所を決めたわけではないでしょうが、抜群のロケーションです。その次に、ぼくが気になったのは、analogiaproject です。ロンドンで活動する2人のイタリア人の作品です。構造を釣り糸ですべて不可視にしてウールでカタチを作っています。近くでみると縦横ななめに細かく張り巡らされた糸が見えますが、これは「究極のミニマリズム」ではないかと思いました。そして「究極のミニマリズム」とは近寄りがたい存在のことである! 笑。

アイデアと存在感で光っているのは、オランダの Studio Smeerolie です。プレゼントされた花を自分の都合の良い時に受け取れるサービスです。しかも、花を飾っておく物理的システムがあります。花の循環システムとその可視化が実現されていることになります。

デザイナーはメディア、文化、心理学、デザインなどを勉強してきた女性です。人や社会にとって不足している部分をみつけ、新しいシステムを作ってゆきたいと語ります。サービスデザインをやる人には、こういう明るさが欲しいなと思いました。

今日も最後に日本人デザイナーの紹介をしておきましょう。福定良佑さんです。プロダクトデザイナーで家具などをデザインしているなかで、個人的な思いを表現したくなったそうです。そこで家具のカタチをしたお菓子を作りました。ポルトガル人とのコラボです。カステラはポルトガル生まれだと思っていたら、ポルトガル人の知恵に基づいた日本のお菓子だと知ったところに発想のスタートがあったとのことです。遊び心のあることをやっているデザイナーの笑顔はいいです。

Category: ミラノサローネ2012 | Author 安西 洋之  | 
Date:12/4/19

サローネの若手デビューの場として1997年からスタートしたサテリテが15周年を迎えました。そこで過去の入賞者が招待され「その後のデザイン」ブースを構えています。15年前からサテリテを見学してきたぼくには、この15年のサテリテの「変貌の結果」が本当に良いものなのか?という疑問が頭をよぎりました。最初の頃、そこはロックンローラーの世界だった。学生か卒業したばかりの若手たちが、「ガレージでアイデアをカタチにしてきました」というムードが強く、「製品化したいんならしてみたら?でも、それにはちゃんとコンセプトを理解してよね!」と言うとあまりにエラソーですが、そういう感じがなきにしもあらずでした。自分で商品化の筋書きを書くのではなく、「アイデアを出すから、あとは考えてちょうだい!」という場でした。

今のサテリテを端的にシンボライズしているのは、この上の写真にあるインド人デザイナーのブースでしょう。自らの笑顔の写真を大きく出しているところなど、ロックンローラーの世界とは縁遠いです。良いデザインであるとぼくも思ったのですが・・・とにかく、「ここまで製品化検討をパッケージで考えました」という隙のなさが良くも悪くも目につきます。ファブリカ・デル・ヴァポーレでマエストロクラスのデザイナーも均等スペースー合計200!-でアイデア発表しているAutoproduzione a Milano(↓) となんとも対照的です。

プロトタイプで小さく細かく勝負していこうという時代に、サテリテに出ているデザイナーは商機を見出すことに焦るあまり、自らの強みである「自由奔放な発想」を切り捨てているように見えてしまうのです。その意味で、ベルギーで世界の集合知を生かす試みを1997年から行っているaddictlab.com に好感がもてます。↓の彼です。

また、自分のアイデンティティを形作っている親族が死んだことをきっかけに、その家にあった記憶をリデザインすることが自分がデザイナーになるきっかけであったと語るポルトガル人の女性の世界に「らしさ」を思います。ぼくは最近の「共感が重要」と叫ぶ姿をあまり好みませんがーそんなことに今ごろ気づくな!と言いたいー、彼女と話していると「共感」とは何であるかをよく心得ていると思います。

サテリテを後にしてサローネのコンテンポラリーデザインを見に行きました。CASAMANIAは大物家具とは一定の距離をおきライフスタイルを提案して伸びているメーカーです。ここに、茨木千香子さんの作品があります。

昨年、ランブラーテの倉庫で開催されたデザイナーズ・ブロックの一角で偶然にみかけた彼女の本棚が気になってこのブログで紹介しました(↓)。そのデザインが、このようにして大手メーカーのブースで紹介されているのを見ると、やはりうれしいです。この作品は見ての通り、デザインのロジックそのものが記憶に残ります。

Category: ミラノサローネ2012 | Author 安西 洋之  | 
Date:12/4/18

今週は、少し日記風のメモのスタイルで書いていきます。

昨日はThe HUBでMARU PROJECTについてラウンド・テーブルを行いました。地域活性化などの活動をしているイタリアのメンバーとi.school の学生たちとのディスカッションです。そのなかで学生たちが掴んだイタリアでのこの種の議論でのキーワードは、地域への「アイデンティティ」「プライド」「生活の質」の三つでした。これらの言葉が頻出するのです。ここを入口に探っていくと何かが見えてくるのではないか?ということが分かったようです。その後、トルトーナ地区へ全員で移動し、Creative Ways -Design and Crafts for Trentino を見学。トレンティーノのクリエイティビティの強化にどうデザインしていくか?というプロジェクトです。このプロジェクトをリードしたデザイナーから話を聞きましたが、デザインという言葉の指す広さやその活用が分かりやすくまとめられた150ページ以上の小冊子まで用意されていて感心しました。

今日はミラノ工科大学でMARU PROJECTのワークショップ2回目です。前回はマスタークラスの学生でしたが、今回は学部1年生です。デザイン学部の1年生にとって、日本の大学の工学部の学生が主導する英語のワークショップは相当に刺激的だったようです。最初はかなり戸惑いもありましたが、後半になってくると和気藹々に進みます。アイスブレイクがワークショップで如何に大切かが分かる展開でした。要は活発な発言が自発的にでないワークショップはワークショップの意味がないわけです。ここまでイタリア人の学生たちをのせることができたのも、イタリア人との3回目の場であったこともありますが、i.school の学生たちの学習能力の高さは大したものです。

終了後、学生たちはイタリア半島の南、バジリカータへ4日間の旅に発ちました。エネルギー企業のENIの財団のアレンジで、かの地でいろいろな団体とコラボレーションの可能性を探ってくる予定です。明日はイタリア国営放送RAIのインタビューも受けることになり楽しみです。で、ぼくは工科大学を離れ、即トリエンナーレに駆けつけました。このところトリエンナーレは商品プロモーションをもろに出す企業が多くなり若干興味が失せる場所になってきましたが、それでもトレンドのキーワードを探るに、ここをスキップするわけにもいきません。トリエンナーレと次に訪れたファブリカ・デル・ヴァポーレを見学した今日の結論を先に述べると、EUの二つのコンセプト「多様性の維持」「社会的持続性」の定着が図られるように滑走路の整備が着実にはじまっているということです。トリエンナーレでそのひとつとして、il piccolo designer があります。日常生活にある小さなモノの世界の「意味の再構築」です。これは多様性と持続性の両方に足がかかります。

ファブリカ・デル・ヴァポーレでいえば低コスト・デザインのLow Cost Design であり、Autoproduzione a Milano です。数年前から市販のDIY のコンポーネントを使いファブレスのコンセプトで家具を作る動きがありましたが、単に経済不況の影響ということでなく、ICTの世界にあるアプリのパーソナリゼーションのリアル(物理的モノ)版の現実化が到来している感が強いです。つまり、ヴァーチャル感覚で馴れたことのリアルへの反映と言えます。別のアングルから言うと、一人一人があらゆることで主導権を握ることが可能かどうかの実験がスタートしつつあるのではないか?-20世紀の大量生産に対しーということでしょう。ジャンプしますが、この文脈に MARU PROJECTをおくと、ローカルの主導権回復活動になり、なおかつ、それが従来的な「伝統社会の規範への復帰」とならない欲求と並行しているのが見えてきます。

最後に。トリエンナーレの庭で行われている松本康さんの作品は、一つの部屋です。ここで小さなスペースというとル・コルビジェの南仏の家を思い出すのですが、松本さんは人が内にたてるアナログカメラの原理そのものの世界を作りました。この写真にあるワイングラスも彼の作品ですが、こうして水を入れると向こうの風景が逆さに見えるーこれを仕掛けに、壁の各所に水を入れた球体を埋め込んだのです。彼はキャノンのデジタルカメラのデザイナーなのですが、今回、個人の立場で出展しています。キャノンもスーパースタジオで毎回大げさなインスタレーションをするより、こういう方向で表現の道を探るべきだろうな・・・と思った瞬間でした。

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