セミナー・講演など の記事

Date:09/6/7

6月3日、千代田区一番町にある日欧産業協力センターでセミナーを行いました。多くの方々にお集まりいただきました。皆さん、どうもありがとうございました。参加いただいた方のなかで、昨春、このブログを「偶然」知り、その後、書店で「偶然」に拙著『ヨーロッパの目 日本の目ー文化のリアリティを読み解く』(日本評論社)を見つけ読んでくださった方がいました。メーカーの開発部門にお勤めで、文化的差異を理解しない開発に危機感をお持ちです。

この方が、二冊の本をぼくにくれました。それも、重要なポイントに細かく付箋が張ってあります。『ものつくり敗戦 「匠の呪縛」が日本を衰退させる』(木村英紀・日経プレミアシリーズ)と『市場づくりを忘れてきた日本へ』(飯塚幹雄・しょういん)です。早速、読んでみました。

これは、ぼくが、今回テーマにした問題を両サイドから攻めている、あるいは補完しています。前者は現在の日本が「普遍化」「理論化」に遅れをとったことでシステム作りというメインステージに乗り切れていない姿を描いていてます。第二次世界大戦、日米の兵器の質的格差を見切れなかった、それが戦後の日本の製造業にも引き継がれているというのです。 「匠」や属人的要素への過度の評価が、固有性の尊重とあいまって、普遍性を求める「機械からシステム」へのトレンドと乖離する道を歩んでしまったことを指摘しています。

後者はサムスンの米国、韓国、日本以外の世界市場のマーケティング戦略に関わった著者が、日本企業の市場無知ぶりに叱咤激励しています。特に大衆マーケットではない上の層へのノーマーク振りを嘆いています。

日本は素晴らしい製品を生み出している。『モノづくり』という点では、すでに頂点に達しているといえる。しかし、グローバルな『市場づくり』という点においては、まったくの素人だ。最高級品=素晴らしい製品=高価格であるためには、それにふさわしい市場づくりをしなければいけない。

飯塚氏は日本のものづくりに満点を与えていますが、たぶん、これは「市場づくり」と対比させるために本の構成上、意図的に点数を上げているのだと思います。サムスンが日本の高品質イメージをうまく使いながら、マーケット寄りではない日本メーカーの弱点をカバーしているという印象をぼくはもっていましたが、それを裏付ける内容でした。90年代、韓国の車がイタリア市場で「品質に問題がない日本製と思って買われる」という誤解のある状況をみていたぼくは、サムスンが「日本イメージ」をうまく利用している理由とメンタリティがわかります。いわばキャッチアップ型ではありますが、やはり上手だと思います。

これはヨーロッパ市場で成功している中国人経営の日本料理店やすし屋と同じ構造があります。日本人からすれば「まがい物」とも見えかねない寿司を、日本人の日本料理店より安い価格で、しかもトレンディなインテリアで20-30代の人たちを惹きつけています。この人たちがスパやマッサージに目覚め、そして、サムスンの新型ケータイを日本製とあまり変わらない目線で見ていると思います。

もうひとつ、飯塚氏の本で気になった点をあげます。日本のTVCMが国際的な賞をとることが多く、莫大な金をかけてきれいなイメージが演出されていますが、それがビジネスメッセージとして効果的な結果を招いていないという指摘です。きれいなイメージが、販売はもとより、企業イメージの向上という面においても、さほど費用対効果がでていない。これはまさしく、ぼくがミラノサローネの日本企業の出展を見ていて思ったことです。きれいなインスタレーションに、その先がない・・・・。3日に八幡さんも話してくれたように、「精神性への逃げ」が見え隠れするのです。

ぼくと八幡さんが話したことを、以上のような内容とどう結び付けていくか、この日本滞在中、もっといろいろと考えていきます。

Category: セミナー・講演など | Author 安西 洋之  | 
Page 18 of 18« First...101415161718