自動車工場を見学する

ぼくはイタリアに来る前、日本では自動車メーカーのサラリーマンをやっていました。メーカーでは新人研修として工場のラインで働き、製造現場の実態を知ることが必要でした。確か2ヶ月やりました。1ヶ月は頭の上を流れる車体の下部にシートプロテクターという板をボルトで貼り付ける仕事。これはかなり厳しい仕事でした。まず、車体の位置が頭をやや低めないといけない場所なので、無理な姿勢を常に強いられます。常に車体は流れていますから、決まった時間で仕事が完了できないと、ラインを止める羽目になります。

もう一ヶ月は、ギアボックスの歯車の機械加工です。かなり単純ながら、時間に追われながら、不良品を出さぬようにチェックしていく作業で、精神的プレッシャーはやはり相当なものでした。もちろんトイレは自由に行けず、決められた10分の休みに広い工場を走って用を済まさないといけません。それに油の匂いが強烈で、財布など身につけていたものは、その後もそのまま匂いが残りました。そういうしんどい日々でしたが、モノを作っていく「現場感」は好きで、事務所で働いていてもよく現場に足を運ぶ機会を作りました。

イタリアに来てからも、工場はよく行きました。自動車だけでなく、ありとあらゆる工場を見ました。「あれは、こうしたらいいのになあ」とか素人ながら、ラインの効率化を考えながら見たものです。そして、今回、アイルランドの経済ミッション団と一緒に自動車工場を見学しました。案内の方が言うには、日本のなかで最新のラインとのことです。ラインに流されるのではなく、個々のスタッフが責任をもって、より全体が見える形で組み立てプロセスが考えられていることが分かります。如何に「強制感」を排除するか、この工夫が見て取れ、かつてのラインに追いまくられた自分の姿を思い出しました。

ただ、それはこの工場のほうが楽ということではなく、より自主的に働くシステムがどう構築されているかという点が注目すべきところだと思います。この工場を眺めていて、イタリアの工場で思うような「こうすれば、いいのに」というアイデアはさすがに出てきません。素人の一見さんが意見できるような余地などないような気がしました。それは感銘を受ける光景だったわけですが、何か意見を言いたいという気持ちにさせてくれない・・・これはどういうことなのかなとボンヤリと考えることになりました。

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Category さまざまなデザイン, その他 | Author 安西 洋之