メトロクスものがたり(15)-デザインヒストリーを作る

(10)で紹介したピエール・ポランのプチデスクは、日本市場用として2003年に再生しました。自宅で仕事をする、居間や寝室の一角を書斎コーナーとして使う、さまざまな目的でこのデスクが出荷されていきます。毎月決まった数が売れるメトロクスの定番商品です。このような正統的なデザインが安定した評価をうるようになって、我々もとても嬉しいです。そのため、2006年、このプチデスクと同じシリーズの商品をF061サイドボードとして復刻させました。

2008年初め、フランスの家具メーカーであるリーン・ロゼが、プチ・デスクと同等の製品を発表しました。メトロクスはプチデスクを欧州で販売しないので、欧州はフリーであったわけです。脚の部分が若干違いますが、基本的には1950年代のポランのデザインの復刻版です。つまり、名前は違いますが、プチ・デスクと同じデザインです。我々が価値を発掘し2003年に市場に投入したデザインを、フランス大手メーカーが5年後に欧州市場で発表したのです。この知らせをポランから直接受けたとき、「やった!」と思いました。正直言うと、我々の手で欧州市場開拓できなかったのは悔しいですが、我々の目が彼らの先をいっていたことは喜んでしかるべきだと考えました。

過去に埋もれて見えなくなっているデザインを発見し、今の市場にマッチする素材を選びリデザイン。そこから量産化のルートを作り、世に再評価を問うわけですが、このプチ・デスクの例は、その一つです。プチ・デスクは下坪さんがパリの蚤の市でみつけた宝でした。ただ、いつもネタが蚤の市やアンティークショップあるいはデザイン書籍に眠っているわけではありません。それは多くの人の目に触れる場所であることもあります。

2007年、バウハウス最後の巨匠といわれたマックス・ビルの1930年代のアートポスターを再生しました。これは、どこかにひっそりと眠っていたものではなく、2006年、ミラノの大聖堂の横の王宮で開催されたマックス・ビルの回顧展にあったのです。ここに展示されている作品に感銘をうけ、その後、今は亡きマックス・ビルの著作権者探しをしたというわけです。

一つ誤解されないよう言葉を加えておいたほうが良いでしょう。メトロクスは過去のデザインを上のものとみなし、現在のデザインを低くみているわけでは決してありません。すべては同等です。しかしながら、今だけの流行のデザインには目を惑わされず、これがデザインヒストリーを作っていくだけの価値があるかどうか、そういう目と頭でデザインをみています。

今回がこのシリーズ最終回ですが、下坪さんのインタビューを番外編で近々掲載します。

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Category さまざまなデザイン, メトロクスものがたり | Author 安西 洋之