ミラノサローネ2018 (5) ーイタリアンメンズファッションの評価を探る

王宮で開催している”Italiana – Italy through the lens of fashion 1971-2001″という展覧会があります。展示されている服・アクセサリーなどだけを見るのならさほど面白くないかもしれない地味目の企画です。これは展示の各部屋にある説明を読む、あるいはカタログを読むことに意義があります。そうしてイタリア男性ファッションが1960年後半以降、Walter Albiniによる「産業化」にスタートがある、あるいはアルキズームやスーパースタジオなどのインテリアやプロダクトデザインの動きがファッションの世界に影響を与えたことがよく分かります。ファッションを時系列に捉えるのではなく、タイトル通り、ファッションを通じて「イタリアらしさ」を理解することに狙いがあります。ぼくは最近、イタリアメンズファッションがなぜ注目を浴びているのか?に関心があるので、この展覧会はよいヒントを与えてくれました。その後、ファッションブランドのチーフパターンナーにこのあたりの話を深くききました。イタリアメンズのポイントはスーツにありカジュアルにはない、とか。

 

 

そうしてデザインウィーク中、イタリアスーツのトップブランドであるキートンが近世・近代の男性肖像画と自社ブランドの服を並べる展覧会をみて、「これだ!」と思いました。というのも、この展覧会の趣旨に「ファッションといえば女性のそればかりが話題にのるが、男性のファッション史に見るべきものがある」とあったからです。そして会場にいたキートンのマーケティング担当に、イタリアメンズファッション隆盛の起源は1960年代ではなく近世に既にあった、ということを説明受けたのですね。Walter Albini1人の功績を追い過ぎてはいけない、と気づくのです。で、トリエンナーレではアルキズームの作品を多く作っていたポルトロノーヴァの展示がある。自分の関心を抱きながら歩いていると、こういう情報に嗅覚がききやすくなります。

 

 

このような縁に嬉しくなる気持ちで街を歩きながら、「仮設的空間」にフッと虚しさをおぼえます。7年前、日経ビジネスオンラインの連載でミラノサローネ観賞手引き的な記事に「フオーリサローネの面白さは、普段開かれていない扉が開かれ、別のミラノの街が見られること」と書いたことがあります。確かにその面白さがあるのは不変ですが、ビジネス的観点、それも通常、ミラノに販売拠点がない小規模の事業者が「普段開かれていない場」で展示する虚しさ、あるいは経済的非効率を考えざるをえないです。大企業が勉強の予算で何らかのイベントをするのではなく、小規模な企業が必死の覚悟で市場開拓の道を探るにあたりフオーリサローネを有効活用しようとするならば、ほぼ開かずの間に場を求めるのではなく、1年間、常に「開いている場」に頼るべきではないか。POP UPストアのゲリラ作戦にどう距離をもち、店舗やショールームとの協力関係をどう考えるかです。

デザインウィークはたったの1週間です。しかもこの時期に特別な高額の賃貸料を払うわけです。そして1週間が終われば、また扉は閉じる。これでは訪問の機会をもてなかった人は、リアルな繋がりがもてません。が、そこがショールームのコーナーで紹介された企画であれば、「デザインウィークの時に来れなかったけど、どうだった?何か今も見れるものある?」という質問や「デザインウィーク中に出したら結構、評判良くてサンプルを見ます?」との会話が1年間に渡り可能なわけです。1週間の臨時の場とサイトだけで、こういうコミュニケーションは難しいはずです。とするならば、店舗やショールームの位置はもっと重要になるはずです。

 

 

インテルニのフオーリサローネの旗が入口に出ている店舗に派手な見せ方はなく、通常の什器と展示の延長線上で、「なんだ、これか」とがっかりすることがあります。お祭り感がまるでない。だからどうしても意外感ある空間や展示に多くの見学者は引っ張られ、開催する側もそうしたムードに押されてしまうことも多かったです。「一発、話題の人気をとってやろう」と。が、そういう傾向が一段落し、通常の店舗が特に新作もなくフオーリサローネの旗を立てる例は以前よりは減少したように見えます。あまりに対抗馬が多すぎ、そこに無茶な挑戦をしても無駄、と思い知ったところが多いのでしょう。それでも、やはり振り回されてしまうことはあります。

最後に。5月後半から6月中旬にかけて1月に引き続き、立命館大学DMLの主宰でアートXデザインXネットワーキングの連続セミナーを行います。場所は東京の八重洲にあるキャンパスです。毎回、ぼくが講師との対談のお相手をします。

5月26日はアート&ロジックの増村岳史さんによるデッサン講座
6月2日は小倉ヒラクさんによる「発酵文化を発酵させるー微生物と出会うアート+デザイン」
6月15日は松本理寿輝さんによる「保育園の意味の転回ーレッジョエミリア教育を日本でリ・デザイン」
6月16日は藤井敏彦さんによる「ルールメイキングに必要な『愛と寛容』を知ろう」

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Category ミラノサローネ2018 | Author 安西 洋之