メトロクスものがたり(14)-エヌクラフツ事業の開始

下坪さん自身は、ヨーロッパデザインとジャパンデザインを同時に取り扱うことを、経営上の課題のためだけでなく、自分の趣味の変遷としても自然な流れとして受け入れてきました。1990年代の年齢20代から30代、彼は特に日本の伝統工芸に興味があったわけではないのですが、年齢が増すと共にだんだんと日本の手仕事の美しさにも惹かれていきます。かといってヨーロッパのデザインへの興味を喪失したわけではありません。40代の今も、ヨーロッパデザインの新しい企画に夢中です。

が、お客さんの目にはそう映らなかったようです。ジョエ・コロンボのような個性的なヨーロッパデザインに圧倒的に強いメトロクス。これがメトロクスのブランドです。今も他社では扱わないような希少性のあるデザインを扱って欲しいという依頼や、他では得にくいデザイン情報に関する質問を多くいただきます。それでも、日本のデザインや工芸品を扱うようになって、何かヨーロッパの味が薄まったのではないか、そういう印象をもたれた方達もいたようです。メトロクスは、大いなる反省をしなければいけないことになります。お客さんに分かりやすいイメージをもてるよう、ちゃんと二つ、つまりヨーロッパのデザインと日本の伝統工芸を明確に分けることが大事でした。

それではじめたのが、n-crafs@metrocs (エヌ・クラフツ)です。メトロクスと言う白地のキッチリ感のあるロゴはヨーロッパデザインを中心とし、エヌ・クラフツは紫色の柔らかいロゴで日本のクラフトものを扱う。こういう仕分けを目で分かるようにしました。サイトも二つが混ざらないよう、メトロクスのトップページではエヌ・クラフツに出会わずヨーロッパデザインを中心に楽しめ、エヌ・クラフツのトップページに飛べば、日本の優れた工芸品に100%浸ることができる。そういう工夫を施しました。

デザインの著作権がきれた作品を狙い、ヒット品と同じ商品を作るというビジネスがあります。名品を復刻するリプロダクションという表現に、それと似た印象をもたれることが全くないわけではありません。しかし、メトロクス自身が企画するリプロダクションで扱うデザインは、名品ではありますが、必ずしも「かつてのヒット作」ではありません。かつては注目されなかった価値を見出し、それを今の市場で再生することにメトロクスの強みがあります。

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Category さまざまなデザイン, メトロクスものがたり | Author 安西 洋之