メトロクスものがたり(13)ーソリッドスツールの誕生

1998年、池袋セゾン美術館で「柳宗理のデザイン展」が開催されます。柳宗理は1915年生まれで、民藝運動のリーダだった柳宗悦の長男で、いうまでもなく既に工業デザインの第一人者ですが、この展覧会を境に柳宗理の再評価が高まります。その後、2000年代に入り代表作のバタフライスツールがよく売れるようになります。このあたりから、日本のデザインあるいは民芸品が見直されるという流れになっていったのですが、こういうトレンドを見ながらメトロクスが選んだ道は、バタフライスツールを追随して売ることではありません。

1990年代前半の猫足ブーム時代にヨーロッパのモダンな家具に目覚め、1990年代半ば、特にイームズブームの最中にイタリアデザインの準備をはじめた。流行りの通りにショップを並べる同業者とは一線を画し、新橋に店舗を構える。これが下坪さんのやり方です。インタビューしたデザイナーの面々の選び方も、一番光があたっている場所を避けているのが分かります。

経営面での大きな両輪作り。国内デザインの隆盛。この二つの背景をもってメトロクスがスポットライトをあてたのは、1911年生まれで現役の渡辺力さんです。1954年、清家清が設計した邸宅に渡辺さんはスツールをデザインしました。メトロクスはこれを「ソリッドスツール」と名付け、量産品として作りはじめました。2005年のことです。

2006年には日本の伝統工芸である切子展を行い、同じ年に1960年の長大作さんの作品、パーシモンチェアとマッシュルームベーステーブルを復刻させます。このようにして、ヨーロッパの輸入品やロイヤリティ生産、自社製デザイン品と国内有名デザイナーの名品という枠組みを作ることができました。しかし、そこに一つの落とし穴がありました。

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Category さまざまなデザイン, メトロクスものがたり | Author 安西 洋之