ミラノサローネ2017 (5)  IKEAのドレスダウンから見えてくるもの

常々思うのですが、何事もドレスアップよりもドレスダウンこそが難しいです。ドレスアップは、ある意味、ルールに従うことで実践可能です。が、ドレスダウンはルールを自ら破って頭を働かさないといけません。それなりの勇気も必要なことがあるし、それこそ方向を決めることがより重要になります。フオーリサローネを眺めていて、この数年、本当にドレスアップが主流になりました。「売る」ことを強く意識しているのでしょうね。そういうなかにあってIKEAが「売る」ことを意識しながらチープな舞台設定を行ったのは、ドレスダウンの強調ではないか、と思いました。この数年間、IKEAは単なる売り場的な発想が目につく展示を重ねてきましたが、今年はかなり主張をはっきりと「IKEA FESTIVAL」という名称で表明しています。

あまりに高い商品を買うのはカッコよくない、との空気がありますが、それをドレスダウンによって表現しているのがIKEAということになります。これは一つ、批判的アイロニーとも呼べます。かつてランブラーテは、廃棄材などを活用してドレスダウンの極め付けのような場でした。しかしながら、最近、ややドレスアップ傾向になっています。そこにIKEAという大企業が、かつての「ランブラーテ・スピリット」(あるいは、フオーリサローネ・スピリット)を再現しようとした、との読みができます。2015年のEXPOではストリートフードがテーマとも呼ぶべきほどにアピールされましたが、このトレンドとIKEAの「原点回帰」的な方向付けは同一線上にあると考えて良いでしょう。

イタリアの若い世代も、以前であれば住居を「買う」と発想していたのが、「借りる」との流れにあります。経済的背景だけでなくノマド的な生活スタイルの浸透があり、それが「インテリア家具にお金をかけすぎるのはスマートではない」との考えをひっぱりだします。それで気の利いた起業家やデザイナーは、移動生活にマッチするモノがまだ充実していない現状をみたうえでの商品開発に力を入れます。即ち、リビングルーム→寝室→キッチン→バスルーム→ベランダなどのアウトドア との流れで発想やスタイルが影響してきた次にあるのが、「脱プライベート空間」となったわけです。そこにはスマートデバイスを使いこなす空間があるわけですが、ただ、これをもって境界のない世界へ足を踏み入れた、と楽観的に解釈するのは安易すぎます。オランダのユトレヒト芸術大学の学生たちが提案している内容は、ボーダレスな情報空間へのNOを示しています。街角のあらゆる場に監視カメラがおかれプライバシーを喪失している。ビッグデータはいったい誰のものなのか?との問いを発しています。自分の顔や表情をどう守るか?に対してマスクコートというアイデアを出していて、デジタルネイティブ世代の危惧がよくうかがえます。

さまざまな顔の表情を描いたスカーフを提案している、Sanne Weekersのサイトから引用します。

These products protect your emotions, opinions, data and thoughts. For example, by using a scarf that has multiple faces in which you can keep your anonymity.

彼女のプロフィールをみると、このテーマが実に(Userではない)Humanな発想から出ていることが分かります。

The project I am currently working on is all about emotion and transformation. My personal life rapidly moves from one emotion to the other, sometimes I don’t even know how, why or even when these changes happen. I am trying to make this connection between time and emotion more explicit. I’ll soon elaborate on this.

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Category さまざまなデザイン | Author 安西 洋之