ミラノサローネ2017(1)「アルティジャナーレ」をキーワードに追加

ミラノサローネについて書き始めて10年目になりました。いやはや、という感じです。昨年、かなり熱っぽくデザインマネジメントやイタリア企業について書いたのですが、その結果(といういべきか)、1年を経てこの4月にデザインマネジメントの本が出ることになりました。ゲラのチェック段階です。立命館大学経営学部でデザインマネジメントを教えている八重樫文さんとの共著です。彼と出会ってから、ぼくは立命館大学経営学部デザインマネジメントラボの客員研究員という立場になったのですが、この立場云々というより、デザインマネジメントをアカデミックにどう語っているかをよく知るようになります。なるほどねぇ、と視界が広がりました。それでぼくは世界のデザインにおけるトップランナーであった(過去形!この理由は本を読んでください)イタリアデザインの歴史を書き、欧州委員会が進めている中小企業向けデザイン研修の背景や内容を書き、日本の中堅以下の企業がどうイノベーションを起こすか、について書いたわけです。八重樫さんは、デザインマネジメントのアカデミックな研究の動向やアートをどう経営に使うか、というパートを書いています。デザイン思考の得意な点と不得意の部分の切り分けとか、もです。

それと並行して、来年出すイタリア企業の経営の本の元ネタという前提で、月刊経営雑誌の連載原稿を数か月分書きためています。イタリア企業が規模と比較すると存在感があるのはなぜか?と言う疑問に焦点をあてています。この疑問への答えは上述のデザインマネジメントの話と深く絡んでいるので、来月出す本の「延長戦」という色合いもあります。ぼくはこれまで本は、あまりイタリアを中心にせず欧州をテーマにしてきたのですが、今回、はじめて真正面からイタリアに向き合います(『イタリアで、福島は。』という本は出していますが)。それとイタリア人の書いたデザインマネジメントの本の解説の原稿を今、書いていて、つまりは「デザインマネジメント(特に意味のイノベーション)」と「イタリア(特にメイド・イン・イタリーの存在感)」の2つのキーワードが頭の中に満ちている状況となっています。

この2つのキーワードが頭の中にあるのは昨年の4月も変わらないのですが、新たに「アルティジャナーレ」がキーワードに追加されたのが、この1年の大きな変化です。ぼくは、この言葉をずいぶんと避けてきました。簡単にいうと自分のビジネスにはなりえないことが多すぎ、しかし想いは強い人が多く、かつこの伝統は伝承すべきという、べき論が鎮座していることが、ぼくの避けるところでした。まあ精神論も強いし、と。正直にいえば、今現在も、ビジネスとしては触れないように距離をとっています。但し、それは従来の解釈におけるアルティジャナーレであり、現代のビジネスにおける新しい解釈のアルティジャナーレの意味は探るに値する、と考えるようになったのです。特に、アルティジャナーレの右翼的存在である工芸美の巨匠の世界と左翼的な街の靴修理人の世界の中間にある存在をどう量産と組み合わせるか、という点にぼくのテーマがあります。

アルティジャナーレという言葉を使っているのは、職人的というと定義がかなり違ってくるからです。職人というと、どうしても右翼的な位置が強く、聖の空間という匂いが強すぎるのです。そこからはなかなか「中間層のビジネスとの結婚」というテーマにアプローチしづらい。で、色々と本を読んでみると、少なくても欧州においてはクラフツマンシップやアルティジャナーレの定義の再考というのはかなり議論されているのですが、日本の職人論は極めて硬直した定義から脱却せず、しかもその定義の再考が論議されているように見えないのですね。とするならば、今の段階ではアルティジャナーレという言葉を使った方が多くを語れる、と思ったのです。

というわけでありまして、今年は以上の3つのキーワードから見えるミラノサローネというかミラノデザインウィークを語っていきたいなと考えています。ビジネスと文化をテーマとして記事や本を書いてきて、10年ということでもあります。その過程でローカリゼーションをテーマの中心に据えてもきたのですが、ローカルとグローバルの議論もこの10年間でずいぶんと変化してきました。この変化に関しても沢山書いてきた自覚はありますが、まだまだ突っ込みどころはあります。これもテーマの枠に入ります。

*画像はTakashi Honmaさんの展覧会にて

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Category ミラノサローネ2017 | Author 安西 洋之