ミラノ万博(Expo2015)の読み方 2 ー オーストリア館はなぜインパクトがある?

ミラノ万博は大きな実験でありリサーチです。EUの科学委員会が、この万博のテーマを専門の立場からアドバイスしているだけでなく、会期中の6か月の間にどういうことを我々は知るべきなのか、確認すべきなのか、これからの課題を明らかにするのか、という項目が既にディスカッションペーパーとして用意されています。実に多岐にわたる問題があらゆるアングルから遡上にのぼっています。これに基づいて、昨日、EXPO会場に近いホテルでカンフェランスが行われました。万博終了以降にやるべき課題の絞り込みの検討に入っているわけです。

ぼくも丸1日、欧州議会、米国大使、アフリカ連合の人たちの基調講演や科学者の議論を聴いたのですが、食や農業の問題に対する合意形成に如何にEUが力を注いでいるのかがよくわかりました。農産品を含めて食がEU外への最大の貿易品目である一方、同時に輸入金額においても上位です。特に水産品は輸入に頼る比率が圧倒的に高い。したがって、農業と水産業の成長はEUの政策において戦略的な位置づけになっています。

それでハッと気づいたことがあります。万博会場にあるアンゴラのパビリオンです。アフリカの国々がカカオなどの分野別のエリアにパネルや工芸品だけ展示しているだけなのに対し(前回、書いたバングラデシュのパビリオンのような様子です)、石油やダイヤモンドで稼いでいるアンゴラは自前の建築で展示の量が先進国並みです。この展示のなかで水産業の位置が高かったのを思い出しました。なるほど、陸の肉が肥満や生活習慣病と大いに関係している。そこで魚に目を向けたい・・・というのが欧州の視線ですから、アンゴラの水産品の輸出力のアピールの背景に何があるか想像できます。

また、農業と並行して林業にも熱い視線が注がれています。これはO2の確保と温暖化という環境問題にかかわることでもありますが、このテーマに絞り込んでプレゼンのすべてを一点に集中させたオーストリアは、「空気ジェネレーター」パビリオンというカタチをとっています。オーストリアのコンセプト表現は万博会場のなかでダントツです。

そして、昨日のカンフェランスに参加しながら、オーストリアの表現力はEUがもっとも感謝すべき一つなのだろうと思いを馳せました。当然ながら、オーストリアの林業は木材輸出において経済的な力を発揮し、その大切なお客さんは家具産業が盛んなイタリアです。しかも、このオーストリア館のイニシアティブをとっているのはオーストリア政府のなかで経済産業省です。そのような機関が主導するなかで、こんなセンスを発揮してプレゼンしたのは見事というしかありません。往々にして、「もの売り」への欲を抑えきれずに(各団体の要求を断り切れず)、見本市的な見せ方に走るところ、オーストリア館はカウンターバーとレストランにオーストリアカラーがあるだけです。それでも「オーストリアの空気に触れに行きたい」と旅心をくすぐります

前述したように、ミラノ万博はEUの政策判断のリサーチである実験の場であり、この食糧問題という複雑な話をふつうの人たちにどう理解してもらうかが狙いの一つになっていますが、オーストリアパビリオンの担当の「私たちは、いわゆるテクノロジーっぽいテクノロジーを使うことを極力排除しました」という説明は、傾聴に値します。

 

このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

Category ミラノ万博(Expo2015)の読み方 | Author 安西 洋之