ミラノサローネ2015(1) 欲張らないデザイン

5月からスタートするミラノ万博を前にして、今年のデザインウィークは前哨戦的な色彩が濃いのが特徴でしょう。一番はっきりしているのはトリエンナーレの位置づけです。万博のプレオープンとして「アートと食」をテーマとした展覧会を開催しています。ここ数年間、トリエンナーレはこの期間の場所貸しで年間維持費をとる勢いでスペースを細切れにしてきました。たまに面白い企画もありましたが、全般的にトリエンナーレの名には相応しくないと思われる展示が多かったというのが正直な印象です。

デザインウィークの後も引き続き開催している、「アートと食」の展覧会はアートの力を存分に発揮しています。この展覧会は、これからより深刻化が予測される食糧危機に対して食習慣をどう維持・変化させていくかとの問題意識をズバリと表現しています。問題提起を得意とするアートが活躍する場であって、問題解決に立ち向かうデザインの出番ではないと示唆されています。当然ながらアートだ、デザインだと領域を定めること自身に無理があるといえばそうなのですが、1人の人間が両者をカバーすることは滅多にないところをみると、気持ちとしては分かるが多くのケースで現実的ではないと見るべきです。

ただ、アートはデザインをちっとも見ていないのにデザインがアートに片想いを寄せている状況の歪さを、今年のトリエンナーレは見事に浮彫にしたともいえるのです。すなわち、デザインは今後もっとアートの力を頼るべきではないかと感じます。正確に言うなら、デザイナーはアーティストという別人格を頼るべき、ということです。

これが今年のフオーリサローネの象徴的シーンです。この点については、サンケイビズの連載コラムでも書いたので、参照ください。

サローネの会場では久しぶりにクラシックに足を運びました。郊外に会場が移ってからデザインとサテリテがメインで、モダンやクラシックのエリアからは足が遠のいていました。しかし、一般家具のパビリオンが合計14のうち、クラシックは4。この数字は割合として大きい。その部分を長い間無視するのは現実を見ていない証拠だと思ったのですが、まさしくそうでした。中東から中国にかけての地域のお客が、この分野を確実に動かしています。あるいは5つ星クラスのホテルです。自宅で採用する場合、デザインはブランドメーカーの有名デザイナーの高価な作品をメリハリとして使うことが可能ですが、クラシックは自宅のすべてを統一しないと恰好がつきにくく、お金のかかかり方が違います。このエリアを眺めながら、古典的な欧州のブランドの底力を思い知らされました。

フオーリサローネに戻り、印象的だった作品を挙げるとするとスイスのモジュール家具メーカーUSMのコンセプチュアルな作品群です。その一つに建築家の長谷川豪さんや黒川彰さんの作った土の柱とその周囲を巻いているロープは存在感があります。これは肉体、頭脳、感性のすべてが総動員されており、そのストーリーを知ると知的興奮も覚えます。柱の型枠となるロープの太さは人が力を入れて手で握るにちょうどよい太さだし、長さは街のブロックの基準となる長さ、とかモジュール概念に対する大きな絵を描いています。もともと昨年、フランスの城の庭で行ったワークショップの結果に基づいています。

 

この作品は多くのフオーリサローネの参加者に対しても参考になる点があり、まずフオーリサローネは徹底してコマーシャルにいくか、コンセプチュアルにいくか、この二つの選択肢しかありません。中間に位置する作品はインパクトが出せません。そして後者に向かった時、デザイナーが力を発揮できるのはアーティストを気取ったものではなく、デザイナーとして徹底して頭脳を使い切ったものでないといけません。しかし、時に幸運にもそれがアートピースのように受けることもある。その一つこの柱とロープです。実際、USMのオーナーは、この作品をアートピースとして保管する意向のようです。

2点目は、日本のデザイナーに対して参考になります。日本のデザイナーがミラノのデザインウィークの展示で「陥る罠」は、ミニマリズム的な表現と技術依存の二つです。これらの二つにしか日本のデザイナーの売りはないのか?と思うほどに、安易にこの穴に嵌ります。コアとすべきテーマをすり抜け、つまりはアイテム1に全力を注ぐべきところ、アイテム2以降のディテールへの技術の投入と表現にバカ丁寧になりがちです。が、かといって、この2つを回避しようと意図的に行くことが正解ではないでしょう。表現すべき内容こそがより深く考えられるべきです。土でできた柱は、丁寧な思考を辿りながら身体を使い切って発揮する感性が可視化されたような印象を受けます。

すなわち問題は考えるべきことをちゃんと考えているかどうかによって作品の質が問われます。もちろん考えるべきことをちゃんと考えていても、メッセージの伝え方はそう簡単ではない。単に一生懸命に言葉を尽くせばよいわけではない。その例として、次のエントリーでマツダの展示について取り上げてみましょう。

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ミラノサローネに関する基礎的な把握は、4年ほど前に日経ビジネスオンラインに書いた以下の記事が参考になるでしょう。もちろん、過去、7年間に書いた本ブログのミラノサローネのカテゴリーを読んでいただければ、ぼくなりの「ミラノサローネ考」がお分かりになると思います。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110425/219631/

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Category ミラノサローネ2015 | Author 安西 洋之