ミラノサローネ2014 (1) TOGに新しい展開をみる

今年のサローネ期間中は、現在執筆中の本、仮題『世界の伸びる中小企業は今何を考えているか』の内容に沿う情報を確認するために毎年と違った行動パターンをとっています。いちおうは歩き回っていますが、みている量は例年より少ないです。今週の行動をややメモ的に書いていきます。

月曜日はベネトンのコミュニケーションセンターであるファブリカの展示を見ました。イタリアのダイキンとHot&Coldのタイトルでいわば「温度の旅」を提示しています。旅には場所と時を軸とした旅だけでなく、温度にも旅は可能なんだということを見せてくれています。難しいテーマを25歳以下のクリエイターたちはよく咀嚼し、とても洗練した表現をしています。これはスキルあるクリエイターとサム・バロンという優秀なディレクターで構成されるチームのアウトップットの良い事例になります。ここで何人かの人と話したのですが、いずれも肯定的な反応でした。

火曜日はレクサスの展示です。MITの石井裕さん、イタリアからファビオ・ノヴェンブレ、それから日本人でNYを拠点にしている田村菜穂さん、この3人の作品と若手のコンペの受賞作品が言語学研究センターに展示されていました。3人の方とは会場でそれぞれ話しましたが、ぼくの印象ではファビオ・ノヴェンブレの作品はどうも一部の人たちに誤解されている部分が多いのではないかという気がします。一方、田村さんの才能にかつてサテリテで出会って以来注目してきましたが、たぶん、彼女はnendoと並んで日本人で「欧州で本当に売れる製品」をデザインできる人だと思います。残念ながら、翌日のサローネ会場でも思いましたが、この壁の高さと厚さを分かっていて、それを乗り越えられる日本人デザイナーはほとんどいないでしょう。

その後、来年のミラノ万博への話し合いをイタリアと日本から来た方とブレラ地区で行い、ファブリカ・デル・ヴァポーレに出向きました。まずは小林弘和さんがやっているLife Stripe展を見ましたが、今回の場所はそれなりのイタリア人からの反応をもらうにはベストな場所です。昨年のレンタルギャラリーと異なり一般のイタリア人が何気なく訪れ、しかもミラノ大学の先生の言葉が添えられていて良いチャンスをつかんだと思います。燕三条 工場の祭典も近くでやっているので覗いたら、そこにぼくが「イタリアオヤジの趣味生活」で書いた刃物のロレンツィの日本のパートナーがいて、その方との偶然の出会いが良かったです。


水曜日は見本市会場に行きました。昨年あたりから見本市会場の方がフオーリより面白いです。やっぱりしっかりした見せ方をしているのですね。B-LINEはジョエ・コロンボの作品を2つ発表しました。そのあとは今春、イケアから2点の新作がでた芦沢啓治さんとサテリテを一緒に回ったのですが、新興国のデザイナーの作品であまり印象に残るのがなく、なんやかんやいって欧州のデザイナーの技量と見せ方は他の地域のデザイナーと比較して格段の差があると感じました。キッチンテクノロジーや建築家の家のコーナーなどを巡り、それからプレスオフィスで少々と雑談してふと再認識させられたのは、サローネはイタリアの家具メーカーの輸出振興が目的であるという基本路線です。実は、この点が他の話に関係してきます。

見本市会場からミラノ大学に向かい、日本のデザインに関する本を出したイタリアの教授と日本のデザイナーたちの対話を聞き、その後のパーティでいろいろとイタリア人の先生たちと話しているなかで気になったのは、「日本の人たちは説明の仕方を知らないから、説明しなくていいんだ」というセリフがその輪のなかで発せられたことです。とても失礼な発言に聞こえますが、要するに欧州人の文脈を理解しようとしない日本人のデザイナーへの苛々からでた本音とも解釈でき、これはもう少し議論をする必要があります。

木曜日はトリエンナーレに行きました。この数年、この期間のトリエンナーレの展示の質が著しく落ちている気がするのですが、2つ面白かったです。シチズンの時計を散りばめたインスタレーションですが、これは企業の技術的な力とビジネスの力の両方をメッセージとしてよく伝えているでしょう。もう一つはプーリア州の展示です。家具産地はミラノの近くからヴェネト、ウディネやマルケと東方に移動してきたのですが、これがさらに南下しているのです。そして、完全受注生産や極少量生産の10-20人程度の企業がデザイナーと生産設備をもって輸出している。これは中小企業のあり方にヒントを与えてくれます。

午後はTOGに行きました。今週生まれたブランドです。ブラジルの企業家が作ったイタリア生産の家具メーカーで全てオンライン販売です。TOGはtogetherからきていて、オープンでフラットなシステムを追求しています。スタルクやその若い仲間たちがデザインしており、かつワンオフに対応できる体制をつくっています。本社機能はブラジルで生産から出荷はイタリアです。したがって上記で述べたイタリア家具の輸出に貢献するわけです。MADE IN ITALYというのがブランドになっているのです。外国メーカーが「MADE IN 場所」を欲しがるというのは象徴的な現象です。このTOGが一発花火で終わるのか、家具の世界に新しい次元を切り開くのか、注目に値する会社だと思います。

金曜日はインドネシアからきているデザイナーとイタリアのデザインスタジオとのミーティングで今後の展開を話し合い、それから王宮で開催している100%オリジナルデザインを見ました。内容そのものはマアマアなのですが、デザインウィークのように新作を沢山みていると、名作の数々に接してどうしても目を調整する必要ができます。そのために、このイベントはちょうど良いです。それからあの周辺のお馴染みのショールームをみて、午後はモンテネポレオーネからスピーガのトレンド確認です。

その後、ミラノ工科大学でPh.Dコースにいるブラジル人の学生とビジネスに必要な文化理解のためのアプローチについて話し合い、夜は毎年恒例の千葉工大の山崎さんとやっている夕食会でした。

 

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Category ミラノサローネ2014 | Author 安西 洋之