「スローファッション」のアイデアを探る

この2週間の動きをメモしておきます。

はじまりは2月25日の月曜日です。その二日前に日本よりミラノに戻ったのですが、その時点では24日のサンケイBIZにアップした「娘がパパに教えるグローバル戦略」の企画をどう進めるか?が頭の中でぐるぐるとまわっていました。大企業で決裁権のある人に部下の提案にYESと言ってもらうには、娘の説得が有効ではないかというアイデアです。今、このワークショップを実施すべく準備をしているのですが、一方で「大きな構想」にぼくの頭脳が引っ張られているというのが、この約2週間です。

2月25日に何があったか?

ミラノの運河沿いにあるテキスタイル工房 L’HUB で青森県十和田の裂織りのワークショップを見学しました。十和田で受け継がれてきた生地の再生技術のイタリア人への伝達です。この内容は3月3日のサンケイBIZのコラムに書きました。それまでプロジェクトを主宰している佐野里佳子さんから裂織りについて何度か聞いていましたが、正直言って、ぼく自身が「自分ごと」として受け止めてなかったことを、ここで正直に書いておきます。

昨年9月、東京で佐野さんに「ドバイに行く機会があるなら、ファッションウィークの間にミラノの面白い工房でワークショップをやったら?」とアイデアを提供し、その後、L’HUBを紹介してお互いの調整をしましたが、これは「えるまっぷガールズ」の一つとしてやや距離をおいていました(← やり方にあまり口出しをしない方がいい、という意味です)。若い女の子の市場を作りながら伝統技術を継承する意義はありますが、ぼくがやることではないだろう・・・と思っていたのです。

ですから日本でのスケジュールがバッティングしそうで2月25日前にミラノに戻れそうにないかな?との状況になった時、佐野さんには「申し訳ないけど、その場合はワークショップに出れないけど、ごめんなさい」と伝えました。ただ、それまで裂織りの作業を実際に見たことがなかったし、イタリア人の参加者たちがどういう表情をするのかを見ておく必要は感じていました。ワークショップをやると、だいたい決まったように「うまくいった」「良かった」というコメントを聞くのですが、そこにいないと参加者の何処に突き刺さったのかが見えないのです。幸いバッティングは避けられ、23日にミラノに戻ることにしました。

時間が遡りますが、ミラノのL’HUBのワークショップの告知は2月8日です。L’HUBが募集をかけてくれイタリア語で1500近い人や機関にメールが届いたはずです。ぼくも何人かのイタリア人に知らせましたが、数日で二回分のWSの席はほぼ埋まりました。佐野さんから電話で「上海にいるイタリア人からワークショップのオファーがきました」と聞いたのは確か2月14日です。佐野さんは、「やります」とほぼ即答をしたようです。ここで25日のミラノのWSをみる意識がぼくの内で徐々に変わり始めましたが、前述したように「自分ごと」ではなかったのです。

ぼくの頭のなかでスイッチが入ったのは、25日に参加者の一人から「イタリアにもこれに似たリサイクル技術があるが、裂き織りと同じように死滅しかかっている。十和田の知恵を通じて、我々の技術の大切さを再発見した」との感想を聞いたときです。伝統技術を語る時にある「差異性」は、伝統技術がゆえに世界で「共通性」があるとの現象の相関関係で成り立っており、そのため逆に「伝統技術を世界共通の問題解決に応用するプラットホームがある」とみなすことができると気が付いたのです。去年、東大の学生たちと始めたMARU PROJECT でも、バジリカータのドライフードから日本にある「鮮魚信仰」の価値観をどう変えるか?という動きがスタートしました。これと同じで、世界にある状況や価値のアンバランスとバランスの差を上手く活用することで社会を住みよくする価値変化を導くことが可能だろう・・・・との思いが、ぼくの心の内で沸々と出てきました。

26日、佐野さんとThe HUB ミラノで長時間話し合いました。ぼくが提案したのは、伝統技術の継承だけでなく、マスカスタマイゼーション(=大量生産品を消費者がパーソナライズする仕組み)とリバース・イノベーション(=途上国でのイノベーションを富裕国に持ち込む)の二つの観点を加えることです。マスカスタマイゼーションはL’HUBも目指している方向で、1月に佐野さんとスカイプをした時、「それが私のやりたいことなんです!」と言っていたのですが、プレゼンのなかに明記されているわけではありませんでした(と思います)。このあたりから裂織りは「自分ごと」になり、このコンセプトをサンケイBIZに書いておこうと決意したのです。それが、「「古の知恵」と再生メカニズム 裂き織りが提案する意味」です。27日、トリエンナーレで翌日帰国する佐野さんと再び会い、「えるまっぷガールズ」の今後のコラボのやり方も含め、プログラムの詰めにかかりました。

28日からぼくは動き出しました。カリフォルニアからもワークショップのオファーが入ったと佐野さんから連絡が入りました。これはもっと大きな構想図を描いておかないといけないな、と思い始めました。工科大学の先生やテキスタイルのデザイナーなどにコンタクトしてアポをとり始めました。イタリア以外にも社会問題意識の強い人のネットワークを作るために、The HUB の重要メンバーにも会うことにします。こういうなかで今回ワークショップを実施したL’HUBの全体での位置づけも考えられるに違いない、と。

今週になってアポが確定し、一方、佐野さんは急遽二日間だけロサンゼルスに出張することになったので、水曜日は成田空港で彼女が搭乗する直前にスカイプをして意見調整を行いました。そしてぼくは4人のイタリア人と米国人に会い、二つのポイントで彼らの目が光るのを確認しました。一つは「世界の困窮した各地で生まれた技術の共有化が現代の都市生活も救う」であり、「ザーラやH&Mのようなファーストファッションが半完成品を販売し、裂き織りに代表される伝統技術で消費者が服をパーソナライズする可能性を探りたい」というのが二点目です。

米国滞在中の佐野さんとはツイッターのダイレクトメッセージとメールで頻繁に交信し、大枠の考え方を描いていきました。金曜日に帰国した日に、彼女の慶応大学SFCの恩師である井上英之さんに東京で会うアポがとれたのでプレゼンしたい、ということで時間勝負になったのです。井上さんはイノベーションや社会起業という分野で活動され、現在はスタンフォード大学におられます。ぼくは一つのメモを書きました。スタンフォードやHUBのような新しい概念にセンシティブなところが風を作り、裂き織りというヨット(これと共に世界各地にある再生技術)の追い風になり、ファーストファッションに「スローファッション」を提案することで潮の流れを創れないか?と。結局、それが人々の価値や意識を変えていくメカニズムになるのではないかと思うのです。

佐野さんは井上さんと金曜日、今日の土曜日の二日連続で話し合うことができたようです。ミラノのワークショップの告知からちょうど1か月で新しい展開への予感が生まれました。

 

 

 

 

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Category イノベーティブ思考, ローカリゼーションマップ | Author 安西 洋之