夏から秋にうつりつつある日々のなかで

夏が後ろ髪を引っ張られるように連れ去られ、秋が侵入してきました。

6月に小学校を終えた息子の中学校もやっとはじまり、長い3か月の夏休みが終わりましたが、「ああ、やっぱりイタリアの文脈がよく分かっていないなあ」と痛感する経験が学校初日からありました。どうせ入学式なんかがあるわけじゃないんだからと思って、初日に学校に子供について行かなかったら「親が来ていなかったのはウチだけだったみたい」と息子が帰宅して不満そうに語ります。儀式的な集まりではなかったのですが、体育館に新入生と親を前に運営上の説明があったようです。こういうのがあるだろうと思っていると期待を裏切られ、そんなことに力を入れないだろうと思っていると案外の案外があるんですね。要するに勘が十分に効かない。そのたびにイタリア生活初心者に戻るわけです。

イタリアで生活をはじめたころ、親分から「言葉は経験の幅によるね」と言われたことを、こういう時に思い起こします。あることの経験をしないと、そのことに関連する言葉は存在さえ考え及ばない。義務教育からその土地で生きていない不利な点です。言葉も勘も。葬式のことなんかあんまり詳しくもなりなくないけど、それなりに回数を出ていると服の勘も分かってきます。こういう人のこの季節の葬儀なら、ジーパンにポロシャツでもいい、とか。昨日参列した教会での葬儀では喪主がネクタイなしの黒いシャツで、スーツにネクタイはお棺を運ぶ葬儀屋の屈強な男たちだけでした。こういう経験のない最初のころは、ダークグレーのスーツにネクタイで出かけ、「あれっ???」と居心地の悪い思いをしたものでした。真っ黒じゃなくてもいいだろうと思ったら、もっと崩れていたわけです。

長いイタリア生活で「変わったなあ」と思うことのひとつに服があります。20年数年前、日曜日の昼間はジャケットにネクタイで散策する人が目立ち、ジャージを日常着て歩く人は、イタリア人ではなくアフリカの人でした。だいたい「おしゃべり好きのイタリア人は黙々とジョギングなどしない」と言われ、確かに友人と駄弁りながらジョギングする人が多かったです。スポーツをする人はスポーツをしても、それが日常風景のなかにあまり入ってこなかったのです。あえていえば、自転車は日常のスポーツ文化として一般の人の目に見える存在でした。それがアメリカ発のスポーツファッションが定着し、アップル製品を手にしながらジョギングするに至ったのです。そう、まさしく「至った」という感覚です。西海外から地球を半周して到達した、と。

一時期、トレンドリサーチで、スポーツ雑誌を片っ端から買い集めていたことがあります。「ウォーキング」「ヨガ」あたりをみると、「西海岸文化臭さ」がぷーんと匂うのに、「ヨット」「サッカー」「テニス」ではヨーロッパの香りがしてきたものです。「トレッキング」はそれぞれの文化のなかで成立していて、これはこれら2つの流れとは違うなあとも思いました。そういうリサーチのなかで、禅に興味のある人が地中海でヨットを浮かべるに熱中することは少ないし、ヨットやスポーツカーに金をかける人たちにおける「東洋趣味」は極めて限定的であるということが肌で感じられるようになりました。ぼくがレクサスはヨーロッパで間違ったアプローチをしていると繰り返し話してきたのも、このスポーツをキーにしたときのタイプの違いは、そう簡単には変わらないと思ったからです。日本におけるスポーツの選択とは若干違っていると見えました。

こんなことをボソボソと独り語ちながら、夏の始末を終えつつ、秋の怒涛の日々へと移っています。来週は久しぶりにタイに滞在します。最初が30年前、2回目が23年前。そして、今度が3回目。タイのデザイン推進機関であるタイクリエイティブ・デザインセンターでレクチャーとワークショップを行います。タイのビジネスマンとデザイナーに異文化市場の見方を話してきます。同時に、今後、アジアの地域でローカリゼーションマップがどう貢献できるかをいろいろと確かめてこようと思っています。そして再来週は日本です。何か所かクローズドなところでレクチャーやワークショップを行い、滞在最終日に勉強会。ワークショップそのものをテーマにとりあげ、ワークショップをこねくり回してみます 笑。

そういえば全然関係ないのですが、最近、日本のテレビドラマで非常によく登場する舞台が漁村です。これ、何を象徴しているんでしょうか?

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Category イタリア料理と文化, ローカリゼーションマップ | Author 安西 洋之