プロダクトデザイナーの弱点克服講座(2)

)の続きです。

ブラインドドローイングで意識下にあるイメージを浮上させるプロセスを踏んだら、一つのレクチャーがイラストレーターからありました。「服をみたら、その服がどういうポーズで一番映えるのか。あるいは、どう映えるようにデザイナーが考えたのか。その点をよく分析してください」と説明。パターンで丸を基調とするなら、腕の曲げ方もそれに沿うはずです。逆にいうならば、ポーズの取り方からデザインの狙いを読み取ることができるといえます。

もう一度、ラインの節節をおさえることを強調します。「服をよく分かったデザイナーの絵はラインのブレイクポイントが増える」わけです。これがちゃんと押さえられているとパタンナーがデザイナーの意図を読解できるのですが、例えばベッタリとしたラインを描くデザイナーの襟は、パタンナーもどう作っていいか分からないと言います。これは基本に戻ると、人間の骨格や筋肉の仕組みに無知なデザイナーは、よいファッションを作れないことを意味します。その点では人物像を描きなれた画家のほうがファッションデザインへの距離が近いかもしれません。さて、いよいよ服のデザインです。テーマは生徒からでました。「ものすごくセクシー!」です。

セクシーさは肌を多くみせることでもいいし、動作への制約を強めることで感じさせるセクシーでも結構。デザイナーの解釈に任せることになりました。最初に何種類かのアイデアを描きだし、最後に一つのアイデアに色をつけて完成という段取りです。このステップで、前述のマルか四角か三角か?のパターンをあらかじめ決めて攻め入るとたくさんの展開例を作りやすいとのアドバイスがあります。また、首を異常に長く見せる、胴体を短く見せる、お尻を大きくみせる・・・などテーマを決めることもアイデアが出やすくなるコツです。コム・デ・ギャルソンの服で腰回りに大きく膨らみがあるデザインがありましたが、「ヒップの位置を上にずらす」というアイデアだったようです。このような特徴も、ファッションデザインの考え方を知っていると、意味が分かります。

「女性デザイナーは実用性に走りやすい」のが女性ファッションのデザインのなかで男性活躍率が高い理由ではないかと雑談しながら、生徒の手の動きを眺めながら「描きながら形容詞を思い浮かべるように!」との注意が飛びます。ブラインドドローイングで得た発想の根元への継続的な刺激が必要なのでしょうか。

ある程度アイデアが出たら最終案の作業です。色鉛筆の色を水で伸ばしながら、シルエットを作っていきます。そして、完成です。以下の上がインテリアデザイナーの描いたものです。下に流れ落ちていくような動きがあります。一方、下はプロダクトデザイナーの作品。

2人とも服のデザイン画を描いたのは初めてです。「2時間でここまできたのは優秀だ」とファシリテーターは評価します。学生を終えたばかりで、職業としてのデザイナーはこれからであるために逆に受容度合が高いのか?とも思いましたが、「高校生の女の子に教えたことがあるけれど、ファッションとはこういうものだという固定概念が強すぎてなかなか良いカタチにならなかった」と彼女の答え。二人の生徒に感想を聞くと、「機能性で方向を決めることが多い、プロダクトデザインより自由度が高いと思う。線のブレイクポイントを増やすというのは、新鮮な経験だった」と一人が語れば、もう一人は「雰囲気やシーンを思い浮かべると、色合いや質感が自ずと決まってくるインテリアのデザインにファッションのポージングは近いのかな」とコメント。

当初の狙いでは「ねっ!プロダクトデザイナーが描くと、こうダサくなるよね!」という指摘をしたかったのですが、惜しくもこの2人に限ってはかないませんでした 苦笑。それでもプロダクトデザイナーが構成要素や機能からものを考える、ユーザビリティを検討するにしても、人の筋肉の動きをここまで見つめていないー人間工学のエキスパートが観察するのとは違うーところに、どうも乖離があるなぁとの印象は受けました。それは「線のブレイクポイント」に焦点をあてることで確認できます。輪郭の美しさではなく、一連の動きにあるポーズで表現されるシルエットに見るべき価値があるークルマもフロントよりバックが重要で、じっと見つめるのではなく一瞬で印象に残ることが大事であろうとー、その視点の違いが身に着かないと、やはりプロダクトデザイナーの描く服はダサいのだろうと思います。

そして、デザイナーではないぼくがあえて言うなら、ブレイクポイントの発想がプロダクト自身を面白くする契機になるのではないか?というテーマはそれなりに顧みるべき点であろうということです。人間自身にどこまで立ち向かうかを含め。

 

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Category イノベーティブ思考 | Author 安西 洋之