ファッションデザイナーは何を伝えるか?(1)

先週、日経ビジネスオンラインである記事に目にとまりました。「若者がファッション専門学校に来ない - 教育とビジネス現場の深刻なミスマッチ」です。

昨今、多くのアパレルメーカーが業績不振で採用者数を大幅に減らしている。店頭での販売員は足りないくらいだが、型紙(パターン)やデザインを行う 商品企画部門での社員採用はほとんど無いに等しい。むしろ、パターンやデザインなどの商品企画部門を完全に無くしてしまって社外のOEM(相手先ブランド による生産)やODM(Original design manufacturer、相手先ブランドのデザイン・設計から製造まで請け負うこと)の企業に外注してしまうケースが増えている。

一方、ファッション専門学校ではパターン作りやデザインなど商品企画を重点的に教え、それを学びたい学生が進学してくる場合が多い。当然、企業側との需 給のミスマッチがある。もし、学生がパターン作りやデザインなどの商品企画に属する仕事に就きたいのなら、アパレルではなくOEM/ODM企業や商社の製 品事業部、海外の縫製工場などに就職先を探すべきである。

ファッションそのものへの関心は高いのに、就職先としてのファッション産業の人気はなく、ファッション専門学校にも人が来ないというのです。それはそれとして考えるべき話題なのですが、日本のファッション専門学校の教育が重視する「自分の手で服を作れる」との趣旨を今後も維持するのか、軌道修正していくのか、その点にぼくは興味を惹かれました。

今年、ミラノサローネで多くのデザイナーの考えることがが沸騰点に到達していることが非常に気になりました。そこでプロダクトデザイナーの周辺からプロダクトデザインをみたらどうだろうと思い、ファッションやテキスタイルのデザインに関わっている人たちから「発想のありか」について聞いてきました。それらの一端は「セント・マーティンズ大学について語ろう」「ファッションデザイナー・村田晴信さんに聞く」「ファッションデザイン教育におけるテキスタイル」というエントリーに書いてあります。

ファッションデザイナーの村田さんもテキスタイルデザイナーの今井さんも、お二人とも「日本では手を動かすことを徹底して教えられたけど、イタリアではさ ほど重視されない」と語っていました。英国の教育はさらにその傾向が強まるのは、「セント・マーティンズ大学について語ろう」でも紹介しました。それなのに、日本のファッション業界でさえ、二人が「強み」として語った部分が正当に評価される範囲が狭まる傾向にある、と冒頭の記事を読んで思ったわけです。

パタンナーの岩井梓さんに話しを聞きました。彼女はイタリアやフランスのファッションハウスのコレクション向けパタンナースタジオで働いています。

「例えばシャツの胸ポケットを決めるとき、日本のファッションデザイナーって肩から何センチ、センターから何センチって指定することが多いんですよ。イタリアでは、デザイナーはスケッチに『このあたり』って描くだけで場所をきっちり決める提案はパタンナーの役割なんですよ」と岩井さんは日本とイタリアの比較します。彼女はファッションデザイナーの小出真人さんが推進している Made in ME Project のパートナーですが、小出さんは「基本的に優秀なファッションデザイナーは国を問わず、自分で手を動かすかどうかは別として、服の構造をよく知っています」と語ります。

ファッションデザインを学ぶにあたり、シルエットを立体のカタチに移行させるに構造が分からなくていいわけがない。しかし、「優秀ではない」デザイナーは、構造を考えずに絵を描きます。だから「優秀ではない」とも言えますが、構造が分かっていれば優秀なデザイナーになれるというわけでもありません。パタンナーにポケットの位置を「このあたり」であると実寸ではなく、「位置の意味=そこでなくてはいけない感覚」を伝えられる人がデザイナーを名乗れる資格があるのだと思います

人はどういうプロセスで発想するのでしょうか。フィールドによって異なるのでしょうか。

ファッションデザイナーはシルエットを考えます。そのシルエットは動くため、コンセプトは映像としてイメージしやすいようだと気づきました。それがプロダ クトデザイナーの場合、映像をイメージするのですが、コマ送り的にすることで分析的にカタチのイメージを確定していく傾向があるようです。それではファッ ションも動いたままなのでしょうか?シルエットをカタチにするのはパタンナーという型紙を作る人です。パタンナーの岩井さんに聞いてみたら、やはりプロダクトデザイ ナーと同じく、いったん「一時停止」のボタンを押しているようです。

次回は、ファッションデザイナーは本当に「手を動かす」必要があるかどうか、「一時停止」にはどういう意味があるかなどを考えてみたいと思います。

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Category ローカリゼーションマップ | Author 安西 洋之