セント・マーティンズ大学について語ろう(3)

セント・マーティンズ大学について語ろう(2)」からの続きです。この回では、何をイノベーションとみるか?ということを考えてみましょう。ファッションイラストレーターの師事した先生は、時代ごとのファッションのパターンを教えます。そのシルエットパターンは丸、四角、弓状などに分類され、たとえばJAZZ AGE と呼ばれた1920年代、四角が主流でした。映画『グレイト・ギャツビー』に出てくる登場人物たちをイメージすれば「ああ」と納得するでしょう。すべて下にすっと流れ落ちるようなスタイルで、アクセサリーも長く垂れます。

横に広がるのではなく、縦の動きです。スカートの裾のところでやや広がるのも特徴ですが(上の右端)、およそ縦を基本とします。それが1950年代のファッションでは、腰を細く絞りスカートが半円状になります。そう、丸の時代です。そして、モデルの立ち方はX字のように組み、手もダンサーのように横に伸びます。

しかし、1960年代になると丸から四角に変換します。モデルも手を腰にあてたり脚の片方を曲げたりすることが多くなります。

こうしたシルエットの特徴の変遷を単純化したスケッチに落とし込む。パターンを身につけるのです。卒業生のファッションイラストレーターは「ファッションを勉強すれば、何年代はどういうデザイナーが活躍して、その代表作を諳んじ描くこともできます。しかし、それをシンプルなカタチで体系だって説明できるように教育された人は少ないのでは?」と語ります。

ヨーロッパ近代とは、ものごとに境界線をひいて分類をすることにはじまったとぼくは理解しています。そこで肝心なことは、分類わけしてそこに当て嵌めて満足するのではなく、どうしても嵌らないことをどう問題として見えるカタチで目の前にそのまま提示しておくか、いわば付箋を張り付けておくことではないかと思います。

パターンを学ぶとは、本当の解決すべき問題点や革新的な方向を見極めることです。ですから、セント・マーティンズの教育に沿っていえば、それぞれの時代のパターンに入りきれなかったデザインにイノベーティブの芽をみることです。その芽がどう転換を創っていったかを学べば、学生は今、何に流されないようにすべきか、何処に自分のアンカーを下すと良いのかが分かってきます。エッジを効かすポイントが見えるのです。

2010年にパリのグラン・パレで開催されたモネ回顧展の感想を書いたことがあります。

「既にどこかの美術館や本でみた作品だから・・・」と思うと間違えます。既にみたことのある作品に近い、しかし微妙に異なる作品が複数ならんだ時、「あっ!モネが狙っていたのは、これだったのか!」と動的に把握できます。ある作品を凝視して自分の想像力で、その作品がより大きい存在になる・・・しかし、それは他の有名な作品とは面で繋がらない。そこにちょうどはまる面を構成するさほど有名ではない作品が挟まると、とてもダイナミックな世界が展開する。こういう経験の連続を、この回顧展で得ることができました。

ファッションイラストレーターはセント・マーティンズで、この回顧展のキュレーターの「企み」のしかたを学んだのではないか?と想像しました。次は、彼女のスケッチブックを紹介しましょう。

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Category イノベーティブ思考, ミラノサローネ2012, ローカリゼーションマップ | Author 安西 洋之