ミラノサローネ2012(13) 今年はオープンソース元年

今年のサローネのポイントは2か所だと思いました。ひとつは Fabbrica del Vapore 。そこで実施されているLow Cost Design とAutoproduzione a Milano 。後者はエンツォ・マリの35年以上前のアイデアがベースになっています。今後、 Fabbrica del Vapore がFabLabのミラノの拠点になっていくことが時代の方向を指しています。

もう一つがDomus and Audi です。ここに FabLabトリノのオープンワークショップがあり、FabLab はエンツォ・マリの発想がやっと実現しつつあるという説明があります。すなわち、これがFabLab を巡るイタリアのコンテクストなのです。さらに、オープンソースを利用して実現したアイデアの数々をテーマにした展示が2階にあり、たとえばオランダの Droog Design が素材の再生社会システムを提案しています。ランブラーテではなくクレリチ宮という市の中心にある格式のある建物で、このようなイベントが開催されていることに今年のサローネの意味を見るのです。保守的なイタリアが、こうして外のトレンドと折り合いをつけ始めている、と。

上の写真のテーブルにあるのは3Dプリンターの原理を使って料理のレシピをフレキシブルに提供しようという提案です。スペイン人のデザイナーたちがシェフとコラボしながら進行中です。

まだまだ未完成ながら、とにかくプロトを出して多くの人からフィードバックを受けてアイデアを発展させていく姿勢が基本であり、デザインとはすべてのプロセスをカバーしていることがよく分かる事例です。

上はミラノ大学で行われているBMWのMINIに対する「非カーデザイナー」の提案です。これまでも「非カーデザイナー」のプロジェクトはいろいろとありましたが、この展示を見ていると、もうクルマのことはカーデザイナーの専有物じゃないという時代性をより強く感じます。EVへの潮流に加え日常性重視やオープンソースが当然視されていく現象を、この展示は物語っています。そのような気分のなかで、サムスンはよくその空気をとらえていると思います。

サムスンの軽妙なスペースをみていて、日本企業は「空気を読む」のが大好きなわりに、外国での空気にはあまり関心がないんだなということに気が付きます。しかも、日本企業はどうも展示イメージが「固い」。建築家を登用することがはやっているようですが、アーティストに任すともう少しイメージを軽めに出せるのではないかと思います。隈研吾が語っているような背景が建築家の周囲にあるにせよ、建築家はアーティストになりきれないでしょう。

隈:そう。ある若手の場合でいうと、有力なギャラリーが既に付いていて、彼をアーティストとして積極的に売り込んでいます。つまり、建築家を「建築のデザイン技能を持つ人」として扱わずに、一 種、アーティスト的な存在としてパッケージングして、早めに換金してしまおうとする仕組みです。

建築家の方も、そういうパッケージに乗れば、建築を設計するなんていうダサいことに関わるより、手っ取り早くお金が入ることに気づいてきた。僕は、そういう新世代の建築家をひそかに「パビリオン系」と呼んでいるんだけど。

街中で雑談をしている女性たちはもちろんファッション系「サクラ」ですが、このような「空気のつくり方」を日本企業も習得すると良いでしょう。

以上のような流れをじょじょに感じつつつ、一歩一歩前に歩を進めているのが千葉工大の山崎和彦教授の研究室です。2年前から10人程度の学生と一緒にデザイナーズブロックに出展し作品を販売しています。そして、今年は会場でワークショップも行いました。場所はカフェです。事前にワークショップのやり方が書かれたマニュアルを用意し、普通の場所で実施します。

ワークショップといえばポストイットや数々の材料をそろえて参加者をのせることが抜群にうまいファシリテーターがやるもの・・・という壁を取り払おうとしています。あの陶酔的なムードに至らないと敗北感を抱くことを排除しています。今回は個人個人が動物との経験談を書き出し、それを話し合うことで、体験の共通点と相違点をピックアップし、その共通点から動物のカタチをデザインするに至ります。

上の写真は学生の作品で、はがき大の板をレーザーカットして作ります。しかもオープンソース時代にあわせデザインパターンを用意し、デザインが苦手な人でもモディファイしていき実現が楽にできるようになっています。

有名ブランドの有名デザイナーの新作を追うだけなく、サローネの時期に集合知の生かし方を世界から集まった人たちが話し合う・・・そういう風景の変化がこれからもっと広がっていくでしょう。

 

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Category ミラノサローネ2012 | Author 安西 洋之