ミラノサローネ2012(10) ローカルとファブレスの間にあるもの

今週は、少し日記風のメモのスタイルで書いていきます。

昨日はThe HUBでMARU PROJECTについてラウンド・テーブルを行いました。地域活性化などの活動をしているイタリアのメンバーとi.school の学生たちとのディスカッションです。そのなかで学生たちが掴んだイタリアでのこの種の議論でのキーワードは、地域への「アイデンティティ」「プライド」「生活の質」の三つでした。これらの言葉が頻出するのです。ここを入口に探っていくと何かが見えてくるのではないか?ということが分かったようです。その後、トルトーナ地区へ全員で移動し、Creative Ways -Design and Crafts for Trentino を見学。トレンティーノのクリエイティビティの強化にどうデザインしていくか?というプロジェクトです。このプロジェクトをリードしたデザイナーから話を聞きましたが、デザインという言葉の指す広さやその活用が分かりやすくまとめられた150ページ以上の小冊子まで用意されていて感心しました。

今日はミラノ工科大学でMARU PROJECTのワークショップ2回目です。前回はマスタークラスの学生でしたが、今回は学部1年生です。デザイン学部の1年生にとって、日本の大学の工学部の学生が主導する英語のワークショップは相当に刺激的だったようです。最初はかなり戸惑いもありましたが、後半になってくると和気藹々に進みます。アイスブレイクがワークショップで如何に大切かが分かる展開でした。要は活発な発言が自発的にでないワークショップはワークショップの意味がないわけです。ここまでイタリア人の学生たちをのせることができたのも、イタリア人との3回目の場であったこともありますが、i.school の学生たちの学習能力の高さは大したものです。

終了後、学生たちはイタリア半島の南、バジリカータへ4日間の旅に発ちました。エネルギー企業のENIの財団のアレンジで、かの地でいろいろな団体とコラボレーションの可能性を探ってくる予定です。明日はイタリア国営放送RAIのインタビューも受けることになり楽しみです。で、ぼくは工科大学を離れ、即トリエンナーレに駆けつけました。このところトリエンナーレは商品プロモーションをもろに出す企業が多くなり若干興味が失せる場所になってきましたが、それでもトレンドのキーワードを探るに、ここをスキップするわけにもいきません。トリエンナーレと次に訪れたファブリカ・デル・ヴァポーレを見学した今日の結論を先に述べると、EUの二つのコンセプト「多様性の維持」「社会的持続性」の定着が図られるように滑走路の整備が着実にはじまっているということです。トリエンナーレでそのひとつとして、il piccolo designer があります。日常生活にある小さなモノの世界の「意味の再構築」です。これは多様性と持続性の両方に足がかかります。

ファブリカ・デル・ヴァポーレでいえば低コスト・デザインのLow Cost Design であり、Autoproduzione a Milano です。数年前から市販のDIY のコンポーネントを使いファブレスのコンセプトで家具を作る動きがありましたが、単に経済不況の影響ということでなく、ICTの世界にあるアプリのパーソナリゼーションのリアル(物理的モノ)版の現実化が到来している感が強いです。つまり、ヴァーチャル感覚で馴れたことのリアルへの反映と言えます。別のアングルから言うと、一人一人があらゆることで主導権を握ることが可能かどうかの実験がスタートしつつあるのではないか?-20世紀の大量生産に対しーということでしょう。ジャンプしますが、この文脈に MARU PROJECTをおくと、ローカルの主導権回復活動になり、なおかつ、それが従来的な「伝統社会の規範への復帰」とならない欲求と並行しているのが見えてきます。

最後に。トリエンナーレの庭で行われている松本康さんの作品は、一つの部屋です。ここで小さなスペースというとル・コルビジェの南仏の家を思い出すのですが、松本さんは人が内にたてるアナログカメラの原理そのものの世界を作りました。この写真にあるワイングラスも彼の作品ですが、こうして水を入れると向こうの風景が逆さに見えるーこれを仕掛けに、壁の各所に水を入れた球体を埋め込んだのです。彼はキャノンのデジタルカメラのデザイナーなのですが、今回、個人の立場で出展しています。キャノンもスーパースタジオで毎回大げさなインスタレーションをするより、こういう方向で表現の道を探るべきだろうな・・・と思った瞬間でした。

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Category ミラノサローネ2012, ローカリゼーションマップ | Author 安西 洋之