メトロクスものがたり(4)-買い付けの旅

およそ1年間、イデーで仕事しました。常連のお客さんからオファーをもらい、イデーを退職したのです。婦人服デザイナーで自分のお店で販売を手がけている女性が、旦那さんと一緒にアンティーク家具の店をはじめるので、そこで働いてくれないかというのです。旦那さんは商社の駐在員として米国西海岸で生活したことがあり、その頃に見ていたインテリアデザインに興味があったようです。

こうして西海岸や英国に毎年2回ほど出張する生活がはじまります。最初の2年は、オーナーと一緒でしたが、その後は一人です。アールデコや1930年代の家具がメインでした。クロームや黒のモノトーン、高級感のあるマホガニー系の赤茶色が、時代のムードとあっていたのでしょう。こうしたデザインあるいはいわゆる猫足の椅子などが扱い商品の主流でした。ただ、下坪さん自身の趣味ではありません。1950-60年代のデザインに興味がある彼にとって、これらのラインは重過ぎます。

アンティークの買い付けは気力勝負でもあります。約1か月、トラベラーズチェックをもって、各地を巡ります。小型トラックやワゴンタイプのレンタカーでショップカタログと地図を片手に、一軒一軒掘り出し物を探していきます。店だけでなく倉庫にも入り込み、埃だらけになりながら、棚の上や下に目をやります。「いいものは、店主も忘れかけたような棚のてっぺんか下に隠れてある」というのが学んだことです。

購入するとクルマに積み込み、宿泊先のホテルや契約先倉庫に運びいれます。丁寧に家具や照明器具を写真で撮影しながら分解していくのです。そして、それらを運送中の破損がないよう梱包していきます。そのため下坪さんは、今も名品の数々の構造を熟知しています。ピエール・ポランと話している時、下坪さんはザヌーゾのチェアの構造をすぐさま説明し、ポランに「あなたは、なんでも知っているんだね!」と大いに驚かれたこともあります。

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Category さまざまなデザイン, メトロクスものがたり | Author 安西 洋之