松嶋菜々子主演『家政婦のミタ』をみる

このドラマ、毎週、視聴率がぐんぐんと伸びているそうです。松嶋菜々子演じる家政婦ミタがまったく笑みや感情を出さず、ロボット的に仕事をこなしていく。ミタは崩壊した家庭に派遣されているのですが、その家の各メンバーがそれぞれ勝手に自分の気持ちを「正直」に表現し、ダイレクトにミタにいろいろな依頼をすると、ミタは「承知しました」と受けていくのです。それで、「小さな(?)正直」は「大きな破綻」をどんどんと製造していきます

透明性ーものごとは隠すことなくガラス張りにするほうが良い。暗示的であるより明示的であるべきだ。説明責任が常に問われる。その時々の感情は抑えるべきではないーという言葉が世の中を闊歩するなかで、それが一方通行的に進むことが適切なのか?というテーマが、ここで問われているのではないかとぼくはみます。今や、情報提供のプレッシャーが非常に強いです。数々の企業不祥事などからの反省も当然の成り行きながら、「ガラス張り」があるゆる局面においてベストチョイスなのか?といえば、そうとも言えないことが多々あります。一生隠し通したほうが全体の幸せを作ることもあります。

この月曜日、日本に来ました。その翌日、赤坂のインターコンチネンタルホテルでアリババのサプライヤーDAYがあり、およそ450人を前にローカリゼーションマップについて講演する機会がありました。そして他の方のパネルディスカッションを聞き、お会いした方たちと話していて、ネット上だけで異文化市場を読む難しさを考えました。難しいが、経済的リターンが即見えないところでネット上の情報に頼るしかないパターンが非常に多い。よって、「だからリアルな経験が必要なんだ!」とは言わない道を探さないといけません。ネット上には有象無象の情報-このブログも!-が徘徊していますから、どのように実態に近い情報に出会うかー出会えるかーは成功への分岐点になります。

この問題は昨日の勉強会「インフォグラフィックにみる文化差」でも提示され、面白い表現が目につきやすいということと、第一次情報から含めて信頼に足るレベルであるかどうかは別問題であり、現状、ここに多くの「穴」があることが浮き彫りにされました。情報の受け手が「分かりやすさ」「伝えやすさ」「共感のされやすさ」を重視すればするほど、本来かえりみられるはずの情報そのものの質の検証作業が遠のくというパラドックスに陥っています。定量情報ならよく、定性情報により不安だと述べる前のレベルで、そもそも情報がどのアングルから把握されたものであるかの確認が習慣化されていないのです。眼前に提示されている情報の「裏読み」の仕方を学ぶ必要があります。

ヨーロ危機およびイタリアの現況について多くの人から質問を受けますが、今回の問題の一つに、やはり透明性が挙げられています。たとえば、イタリア社会全体の「暗示的表現」を批判することを、英国の雑誌「エコノミスト」は大きな役割として任じている感がありーそれは対日本もそうですー、今回のイタリアの市場の「売り」は、まんまとその批判のツボにはまっています。イタリアの社会が変わらなければいけない点もたくさんあるのは当然ながら、批判の尻馬に乗るのも愚かではないかと考えています。それは、ユーロの優等生であるドイツを一方的に絶賛するわけにもいかない躊躇がアングロサクソン系雑誌ゆえに見られるからです。ここに「裏読み」が不可欠だと思います。

第一次情報が自分で経験したことであったとしても自分の視座には自覚的でないといけませんが、だれがポストしたかまったくわからないネット上の情報をどう選択していくは、前述したように、今を生きるに大きなテーマです。だからこそ、信頼を獲得したいとの思いが強い発信者は情報提供過多に陥ります。そして、多くの矛盾が指摘されて墓穴を掘る可能性が高くなります。が、その矛盾こそが信用できるとみる受信者もいますから一概に否定はできません。しかしながら、少なくてもこの構図を常に意識しないといけません。たまに軌道をはずしながらもなんとか全体的な信頼を得ていかないといけないーちょっとTwitterでクリティカルな反応を受けても気にしないで全体像をより確実なものにしていくー根拠をどう自分で強いものにしていくかが「鍛錬」の目標になります。

ミタが派遣されている家庭のメンバーは、ミタにそのような「鍛錬」を目的としたトレーニングを受けているのではないか・・・とみると、ドラマとしてはつまらないか(笑)。

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Category 『ヨーロッパの目 日本の目』, ローカリゼーションマップ | Author 安西 洋之