山本真司『35歳からの「脱・頑張り」仕事術』を読む

ネット上でいろいろとブックレビューを読んでいて気になることがあります。本の要約から書き始めることが多い。この点です。そして、その本がどんなタイプの目的に合うかがコメントされている。他人に本を紹介するために書いているのでしょうか。プロの書評家じゃないのに?それはそれで勉強の一つとして良いのですが、そんなに時間に余裕があるのかなとぼくは思ってしまいます。何が言いたいかといえば、本は自分の何らかの内的動機とのリンクでしか読めないはずなのに、そのリンクを外れた部分で語ろうとしているという無理を感じてしまうのです。

個人的事情の襞で読み込むと読書体験は圧倒的に血となり肉となりえます。内容を細かく覚えている必要はない。いやおうなしに頭に入った内容が自分の言葉で残っていればいいのです。それが自分の言葉にならないのなら、内容かタイミングがマッチしていないと諦めるしかありません。いつか用を足すこともあるかもしれないなと軽く流せばすみます。本の海を泳ぎ切ろうなどと無駄なことを考えるのではなく、それなりの流れの本の川を横断する程度に構えることです。もちろん、大海を泳ぐのが趣味であれば問題ありません。趣味が趣味たるゆえんです。

実は、これはローカリゼーションマップへの立ち位置でもあります。ローカリゼーションマップは地域の傾向を大ざっぱに素早く掴むためのものです。100%地域文化を理解することはありえないのですから、自分のビジネスを「今日」前進するための礎があれば十分なのです。「これでは不十分ではないか」と思い悩み、プランを実行するという本来すべきことができないという罠に陥らないには、「本の要約など不要」と割り切ることです。この発想の転換ができると、つまらない映画などないし、つまらない人などいないし、あらゆることは吸収すべき対象になり、吸収しえなかったことは不要であったのだと思えるのです。

コンサルタント業界の人は新しいプロジェクトを前にしたとき、スタートの1-2週間で頼りになる仮説をたてろと言います。そのために、さまざまな人に電話をかけまくり話を聞き、現場の実感を貪欲に獲得すべきだ、と。本書の著者・山本真司さんもそうです。どうして、このことが強調されるのか。逆に言えば延々と時間と金をかけて情報収集と分析を行っても、事業企画をたてるに100%満足できるネタなど決して用意されるはずがないという前提があるからです。それよりチームが効率よく「小さな失敗と軌道修正」を重ねながら前進してプロジェクト音が高々と鳴り響くことが大事なのです。ローカリゼーションマップはポジションとして、コンサルタント業界でいうところの「仮説思考」に相当するでしょう。

こうでもしないと全体図が見えてこない。しかしながら全体図をみた実感のない人は、このぼんやりとしたラインに不安を抱きます。もっと明確なラインを描くべきではないかと考えてしまいます。「そんなことない、十分」と思ってもらうには、実際に何度かそういうあいまいな地図でスタートを切り、だんだんと輪郭を作っていくとの経験を積んでいくしかありません。経験主義の横暴ではなく、経験則の構築です。

今朝、本書をミラノに戻る機内で読み終えヴェネツィアの上空1万メートルからイタリア半島を眺めながら、半島は反転したとする説を思い出しました。現在長靴の膝にあたる部分は地中海ですが、かつてはアドリア海にあったというのです。アペニン山脈を真ん中にひっくりかえったわけです。両岸の地層を調べると半島がぐるりと寝返ったとするのが妥当だといいます。こういう説はロジカルに考え、かつ思考のジャンプがないと出てこないでしょう。それにしても、夢膨らむ仮説だと思いませんか?

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Category ローカリゼーションマップ, 本を読む | Author 安西 洋之