ローカルの意味を再び問う

ローカルという言葉をある特定のエリアとして指すだけでなく、あるムーブメントのコアとして捉えるべきであるとi.school の田村大さんがプレゼンで強調したとき、「いいこと言うなあ。ローカルを静的レベルで言うだけでは行き詰るだけだし・・・」と思いました。その後、田村さんが「あのポイントに対して聞いてくれてた人たちがあまり反応しなかったようなので残念でした」と僕に話しました。それはどうかな?消化に時間がかかっているのではないかなと想像しました。きっと「スローフードというコンセプトが世界に広まったようには、『もったいない』のような日本の言葉が世界に広がったことがない」(田村さん)に象徴されるのは、製品は世界に広まったけどコンセプト自身が世界に定着した例は稀ということを指しているのでしょう。今日、六本木ミッドタウンで行われた「コンテクストをデザインするーローカル価値の異文化対応」での舞台裏一場面です。

ソニーのウォークマンは新しいミュージックライフを作り、「コンテクスト創造」の日本企業の優れた例として伝説のように語り継がれていますが、複数のアイテムを抽象レベルで統合させることが日本のさまざまな活動において、相変わらず不得意であることを田村さんの言葉は指摘しているのだと思います。ローカルについての定義も実は同一線上にあり、「地元の人が一番だよね。外の人はその応援に徹するべき」「土地にある過去のネタをいかに現代に再生させるか」との表現が唯一の「正当であり正統である」との拘りから脱却すべきということです。もちろん、それらを全面的に否定するのではなく、色々ある手法の一つとしてみるという理解をぼくはしました。即ち、複数の他の文脈にローカルを持ち込む見方や発想の転換が求められています。言い換えると、どこの次元に持ち上げれば統合ポイントが見えるか?という勘が鍛えられていないと、迷路を壁より高いところでみるためのジャンプができません

例えば、イタリアデザインが世界で評価されるのは、今、イタリア人デザイナーの能力ではありません。レオナルドやミケランジェロの才能を「宣伝」に使うし、1950-70年代あたりまでの「イタリアデザイン高度成長時代」は多くはイタリア人デザイナーが作ったものでした。リチャード・サッパーは例外です。しかし、その後はイタリアで仕事をする「イタリア化した」外国人であったり、テキスタイルやファッションを起点とした「総合デザインメカニズム」とも呼ぶべき側面に評価の焦点に移りました。

それでは、どこの国でもそのメカニズムを移植すれば?ということになります。確かに、多くの国が「デザイン産業立国」たらんとしています。が、それなりのレベルには行くのですが、なかなかできません。「よく分からないけど、イタリアのデザインは面白そうだ」と言われるのと同じレベルで、英国やフィンランドにデザイン留学はしないだろうと思うのです。多くの外国人が入り込んでいても、メカニズムの多くの要素がイタリアのライフスタイルと表裏一体となっていることによる壁です。しかし、これが強みであり、同時にイタリアデザインの弱みでもあります。英国や北欧に比べ暗黙知の部分が多いため、全体像を掴むには迷路を辿る確率が圧倒的に高いのです。暗喩と修辞法が発達した文化の理解は難度が高いはずです。

やや脱線してしまいましたが、多くの概念と同じように、ローカルの意味の理解にはそれなりの経験が必要なのではないかということを僕は今日再認識したわけです。ローカルは現地であり地元であり・・・自分の実感に従えば良いと思い勝ちだから危ない。特に、日本では他の宗教圏のような共有すべきテキストが不在と考えられているからなおさらですー。そして、その延長線上で推測するならば、i.school の横田さんと博報堂イノベーションラボの清水さんにファシリテートしていただいたワークショップのプロセスは、ある人には大変刺激的で、ある人には意味不明な宿題が残ったのではないかと考えました。ぼく自身にとっては、非常に面白かった。コンセプトがローカリゼーションマップのコンテクストへの迫り方とよく繋がっていて、「このワークショップのフォーマットは、今後、ローカリゼーションマップのワークショップとして応用して使わせてもらいたいなぁ」と感じました。

ご協力いただいた皆さん、参加された皆さん、どうも有難うございました。また、お会いしましょう。

 

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Category ローカリゼーションマップ | Author 安西 洋之

Comment

  1. 宇都宮茂 

    わかりやすく表現されていてしっくり来ました。
    ローカルもそうですが、パーソナルも同義な気がしています。
    日本人は、不思議と他者との関係性を気にするそうですね。(ハイコンテクストでしたっけ)
    それがいい面に向かえば、外ともっとつながっていけるのかなと考えております。
    ワークショップは、安西さんが仰る感じが自分もしました。
    自分的には消化不良な部分が残りましたが、それが横田さんの狙いだったかもしれないです。

  2. 安西洋之 

    昨日は参加くださりありがとうございます。

    「マルちゃん」の本にも書きましたが、パーソナリゼーションはローカリゼーションの究極のカタチであると考えています。ただ、それが唯一の解というわけでもないと思います。今後、この点をさらに考えていくつもりです。