頭の切り替えには強制力が必要?

7月下旬に日本からミラノに戻りました。

日本ではいつものように沢山の方との新しい出会いがありました。ローカリゼーションマップの活動をスタートして1年数か月でじょじょに認知度もあがり、初めてお会いした方から、日経ビジネスオンラインの記事について細かく感想をいただくことも増えました。また、若い方たち、学生をはじめ30代前半くらいまでの方とのおつきあいも広がり、彼らと何をするべきなのかも深く考えるようになりました。

仙台の海にも出かけました。津波の被害のあった沿岸部に小学生の息子を連れて行ったのです。ぼくは小学生の5年間、父親の転勤で生まれ育った横浜を離れ、仙台市内に住んでいたことがありました。あの頃、友人と連れ立って10数キロの距離にある海岸に自転車でよく出かけたものでした。そして40年近く、あの場を再訪する機会はなかったのです。ですから、津波ですべてが破壊された風景をTVで見たとき、少し時を経たらあの場に出かけてみたいと想っていました。

息子を連れて行ったのは、自然の破壊力を見せておくべきだと考えたからです。数年前、ドイツからオーストリアにかけての道をドライブしながらアイルランド人の友人が、「小学生のころ、この近くのナチの強制収容所に父親に連れて行かされたんだ。人間ってどんなに愚かになるかを知っておくべきだ、とね」と語りました。ぼくは、その教育に感心しました。そして、小さいうちに、人の愚かさと自然の怖さを知らしめることが親の務めかもしれないと気付いたのです。

仙台の海と街で想ったことは、また別の機会に書きましょう。たぶん、この秋に行うプロジェクトについて書くときが「別の機会」かもしれません。今回、日本で強く思ったのは、ズームアップとズームアウトを同時に扱うコツを多くの人がマスターしないといけないだろうなということです。ズームアップで焦点を合わせたのはいいけど、その焦点の横10センチのほかの人の焦点が見えなくなっている。ズームアップの横移動ができないのです。ぼくは3点からの視点の大切さをよく言っていますが、3点をもてればズームアップの水平展開が比較的楽にできると思います。しかも、「正当性」とは何なのかを自問したこともなく、ズームアップしているから問題なのです。

日本から戻り中三日で、今度はウンブリアに出かけました。「日本の頭」をガラリと変えるには絶好の契機です。人は、それこそ愚かなもので、環境に支配されます。思考を大きく切り替えるには、水平軸と垂直軸の移動を頻繁に繰り返すことです。すなわち、場所を移動する、使う言語を変える、時間軸を過去に遡る(あるいは未来を企画する)、という三つのことを強制的に行うことです。ふつうの人にとって、これらのことをせずに別の視点を獲得するのは、まず至難の業です。

ウンブリアの自然に囲まれながら、自然とのインターフェースとは何かを考えていました。

テラスで食事をしていると人懐っこい一羽の鳥が必ずと言ってよいほど近寄ってきます。そして皿の上にあるものにくちばしを伸ばそうとする、蚊取り線香の光る台を持ち去る、テーブルの近くにふんを落とす、ワイングラスを倒す、頭の上にとまり頭皮をつっつく・・・かわいいけど、迷惑極まりないです。犬か猫が飛び歩いているようなものです。どうも、ここの家で飼っている犬がこの小さな鳥を救ったことで、鳥が巣意識をもったとのことで、犬と仲良く遊びます。野鳥の「ペット化」なのか、ヒトの「わがまま」なのか?きっと、数か月もすれば森の中で生きるだろうとも想像しますが、ヒトの食べ物をつまんでいる限り、野生に戻るモチベーションがありません。どこの誰の視点にたって、この状況をみるとよいのか?ということを繰り返し思いました。

ウンブリアにいるとき、『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか - 世界で売れる商品の異文化対応力』が発売になりました。おかげさまで、オンラインと書店ともによい販売スタートをきったようです。ネット上でもぼつぼつレビューが出始めました。みなさんの感想を聞かせていただくのが楽しみです。

 

 

 

 

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Category ウンブリアの夏, 子育て | Author 安西 洋之