「震災で問われるメディアの使命」を読む

今日、日経ビジネスオンライン・新ローカリゼーションマップの連載記事「世界の親が公文式に熱狂する理由」がアップされ、何気なくアクセスランキングを眺めていて、一つの記事が目にとまりました。「震災で問われるメディアの使命」です。1ページのみの短い記事ですが、心に残る内容です。

私も何度か被災地を取材しましたが、あることに気づきました。取材が難しい場所に、多くの海外メディアが入っているのです。震災直後もそうでした。被災地 の海岸は、交通が寸断されていて、携帯電話もまったくつながりません。ところが、外国人記者たちがカメラを担いで、取材を続けているのです。

原発事故による避難範囲の日米差異、外資系企業の東京脱出、西洋で定番のリスク管理は最悪を想定・・・といったことが311以降、既に「常識」のように定着しましたが、外国人ジャーナリストはリスクをおかして「奥へ行く」のです。ジャーナリストがリスク管理のルールとは違う、ジャーナリストの職業倫理で「現場を伝える」ことに意欲的に動いたというのです。外国から来たスタージャーナリストのお粗末な報道が批判のネタにもなりましたが、一方で「なぜ、日本のカメラマンはこの情況を伝えてくれないのだろう」という違和感をもつ人たちの声もネットで散見しました。これは、外国人ゆえの別の視点のカメラアングルの問題だけではなく、足を運んだ場所自身が違ったのです。「情報不足で向こう見ずなことをしたのだろう」と嘯くのは浅薄でしょう。

日本人記者は報道の最前線でほとんど命を落とすことがない。欧米の記者に比べて、その数が極端に少ない

そこで、このような事実が明らかになります。戦場カメラマンの立場の違いー第二次大戦後、欧・米の戦場は同胞の報道が多いーではありません。「最前線」の種類は沢山あります。もちろん、ジャーナリスト同士の競争も激しいのでしょう。ただ、第一情報への執念深さが違うのだと思います。そして、この記事を書いた記者はこう書きます。

今回の震災で、なぜ世界は日本のニュースが溢れ、援助や義援金が次々と届いたのか。一方、日本と日本人は、なぜ世界の災害に対して、機敏な援助ができない失態を繰り返すのか。それは、自戒の念も込めて言いますが、メディアにその主因があると思います。

震災報道に関しては、マスメディアへの批判が多く、かなり信頼性が落ちたことは否めません。そういったシチュエーションのなかで、記者は自らを反省している。ぼくは、これを読んで、実は初めて、以下にある『アメリカ人よ、なぜ鶴を折る』を読みました。これがアクセスランキングで上であることは気がついていたのですが、あまりぼくの関心を惹きませんでした。

このことが、米国人の心に少なからぬ影響を与えています。4月のランキングで5位になった『アメリカ人よ、なぜ鶴を折る』 は、全米で広がる折り鶴現象をリポートした記事です。米国人が義援金だけでなく、「心のつながり」を示したいと、あらゆる都市で人々が自然発生的に集ま り、千羽鶴を折っているという内容です。こうした流れを後押ししているのは、被災地に乗り込んだリポーターたちが送り続けている映像と原稿に違いありませ ん。

約1ヶ月前の記事を今になって読みました。良いレポートです。コメントも40件あります。そこには「千羽鶴ではなくお金が本音」という意見が少なくありません。ぼくもそういう考え方を全面的に否定するつもりはありませんが、このレポートを読んでの意見としてはお粗末過ぎると思いました。もちろん、コメント欄には、それらの本音を嗜める意見もあります。

千羽鶴など見たことも聞いたこともない外国の人に日本から贈るのではなく、米国の人たちが日本の習慣にあわせた心の表現をしようとしている行為に対し、たとえ本音でお金が欲しかったとしても、それを言うのはいわば「ディシプリン」されていない。心の余裕のない時の千羽鶴は迷惑かもしれません。しかし、「食料がただ欲しい」という時期が過ぎ、なんとかやっていけるかもしれないとかすかな光が見えたとき、心を後押ししてくれるものは嬉しい__このテーマには、いくつか次元の違う話があります。

ディテールやタイミングを問う次元と、心で通じ合うには理念やコンセプトで繋がる志向性と態度が問われるべきという次元。これらはどれも正解でありながら、これらを一緒くたにしてはいけないのです。そして、重要なのは、100%満足する支援などあり得ないという認識です。アプローチの向きが受け手の望む方向に近いなら、それは後者の次元で判断し、そこから次のコミュニケーションの糸口を作っていく工夫が必要です。そのレベルで繋げるかという判断ができないと、いつまでたっても駄々っ子のような意見しか言えません。

修羅場を歩きメッセージを伝えること。抽象性の高いコミュニケーション。この2つのことは、全体のフレームを作るになくてはならないものです。だからこそ、外国人記者はより危険な地域に足を踏み入れるのだろう・・・・とぼくは思いました。

 

 

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Category ローカリゼーションマップ | Author 安西 洋之