ミラノサローネ2011(23) サテリテについて考えよう

実験的なプロトタイプでアイデアや考え方を示し、それを見たメーカーのプランナーなりが「君、面白い考え方するね。今、こういう企画があるんだけど、今度、デザインを考えてみないか?」というオファーを受ける、というのがサテリテの位置づけだろうと考えられてきました。したがって、大学の学生たちの量産をまったく考えていないアイデアと若手のプロのそれも、同じ場で競い合う雰囲気があり、サローネの会場と比較してアバンギャルドでさえありました。暇なときはグダグダしていて、誰か来ると、「見れば?」っていうけだるさ(?)さえ漂っていました。しかし、じょじょに「ここまで量産を考えたプロトを作ったから、これに近いカタチでそのまま現実化してくれないかな」という営業顔の出展者が増えてきました。芦沢啓治さんは、「デザイナーはその業界をもりあげるためのボランティアになりさがっているのではないかというのはここ数年よく聞く話だ」と英国紙ガーディアンの記事を引用しながら、ブログで次のように語ります

サテリテに実力のあるデザイナーがいまだに展示をするのは、ここにチャンス、このチャンスしかないのではないかという焦りの表れだ。そしてそれだけの集客 があるという事実。ジャーナリストも多い。おそらくバイヤーも多いのだろう。このイベントのヒーローたちもちらほら見かけた。スーパーデザイナーたちだ。 ジャスパーモリソンやは子連れできていた。

かつてフオーリサローネにおけるトルトーナ地区も「私を見て!」的な印象が強く、デザイナー本人と話すことが面白い場所でした。今年あたりは、ランブラーテ地区の一部にそうした「名残」があります。ただ、こういった全体的な傾向だけを捉えて、「サテリテがつまらない」と評するのは酷な気がします。今週の日経ビジネスオンラインで書いた「世界が注目するデザインイベントで東芝とパナソニック電工の評価は?ミラノサローネで失敗しないために」では、ドイツ人デザイナーの椅子を、「OR」から「AND」への移行の一つとして考えると見えてくることがあると紹介しました。これはサテリテで出会った作品です。また、田村なおさんの作品は、サテリテで目を引いた作品であったと以前書きました

実は、昨年、彼女の評判だった葉をかたちどった作品(冒頭の写真)は見逃していました。今年、田村さんのことを知らずに、蛍のイメージを使った一人一人が自分が使う照度を決められるプロトタイプにぼくは惹かれました。自然をモチーフにして、モチーフがコンセプト自身のメタファーでありコアであり、その背景にはエネルギー削減というテーマがあります。問題意識の持ち方からコンセプト構築の仕方、具体的な表現へのプロセスがしっかりしているとの印象を受けました。他の日本人デザイナーのアプローチと違うなと思いました。彼女がパーソンズを出てNYで活動しているのは、後になって知りました。

明るいサテリテの空間で、このコンセプトのメッセージを伝えるのは難しかったと思います。都会のなかで蛍が見えない苦痛が、彼女のブースにはありました。昨年の作品を作るのはさほど難しくなかったのでーいや、こう書くと語弊があり、じゅうぶんに難しかったが、今年よりはやや余裕がもてたという比較の意味でー、見せ方に注力することができた、とのこと。しかし、今年は照明器具から(「蛍」が薄いテープ線上に何処にでも止まれる)配線まで全て自ら作ったので、プレゼンテーションの練り方が不足していたと語っています。ここで注意すべきなのは、ブースで興味をもってくれたのは、(去年のように)一般の人ではなく、メーカーやデザイナーの方たちだったということです。昨年の作品は6月にイタリアのメーカーから発表されるように、もちろん昨年もプロがみて評価をもらっているわけですが、今年のプロトもプロに見られ、製品化の打診があります。つまり、コンセプト自身がしっかりしているのが如何に重要かという好例です。スピリット的色彩の濃いフィロソフィーをコンセプトであると自ら勘違いし、マーケットのことは殆ど勉強していない。そういう日本人デザイナーがサテリテに多いなかで、田村さんの事例は参照すべきではないかと思います。

 

 

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Category ミラノサローネ2011 | Author 安西 洋之