ミラノサローネ2011(10) ブランドのコピー家具に囲まれる

ミラノの高級住宅地にあるイタリア人知人宅。引っ越したばかりの家には、名作と呼ばれたり、トレンディとされる家具が目につく。「さすが金持ちは違う。趣味も悪くない」と思う・・・・が、それは半分本当で半分は嘘。なぜなら、その目をひく家具の数々はほぼ全てコピー品なのだ。趣味のよい奥さんが指定したデザインを、旦那さんがコピー品を作る家具工場に依頼して製作されたものだ。もちろん、金の問題ではない。あるいは「こんな遊びしているんだ」というジョークでもない。有名なデザイナーものを高い金を出して買う価値を見出していないのだ。ブランド品のコスト構成において名前代がどのくらいかよく知っている人間は、その名前代に金を払いたくない。

いや、材質が違う。品質管理が違う。そういうことも言える。しかし、同じ材質が使える環境だったら?高いレベルの品質を維持していたら? 機械で加工した場合のほうがきれいに仕上がることがある。だから機械をもっているブランドメーカーの工場を推すこともある。モノは作りなれたほうがきれいに仕上がる。だからコピー工場の作りなれたよりも、本物工場の作りなれたほうが良いとも言える。しかし、そこの差異にあまり価値をおかない人間は、こうしてコピー工場に発注する。全体としてバランスがとれればいいじゃないか、と。

毎年サローネで発表されるブランドメーカーの新作家具を買い続ける人はいない。洋服じゃないのだ。それでも、「こんな、えらく高価な家具を買う人はいるんだよな」とヨーロッパの社会構造を頭に思い浮かべながら見たりする。よくいう「ヨーロッパには、そういう層がいるんだよ」という台詞だ。確かにそういう家もそれなりに見てきた。しかし、そうしてみてきた人の家以上に資産をもっている家で、ほぼ全てが偽モノであることを知ったとき、これは新しい見方をすべきなのかと考え込んだ。どういう視点で、これを納得すべきなのか。

どこの業界でも、業界にいる人間は自分の業界の商品を正規価格で買わないものだ。ファッションなら7-80%引きで買ったり、それこそコピー製品を部分部分で使ったりする。クルマだってそうだ。しかし、ここで書いている主人公は、家具業界の人間ではない。しかも、お金がふんだんにある。そういえば、ここの家の使用人が作る料理はそう美味くない。高級レストランで食べなれた人間が、自宅では多分、一般のイタリア人家庭よりレベルの低い料理を享受する。このギャップとはなんだろうか。

人は何に価値をおくか。金があればブランド家具を買うと思ってはいけない。ただ安物の家具でいいとも言っていない。ブランド家具のコピー品を経済的理由ではなく選択する動機を知ることは、ブランド家具を買う人の説明を聞くよりよっぽどためになるだろう

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Category ミラノサローネ2011 | Author 安西 洋之

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  1. [...] This post was mentioned on Twitter by 安西洋之 and iwamoto(岩本 幸男), 安西洋之. 安西洋之 said: 金があればブランド家具を買うと思ってはいけない。ただ安物の家具でいいとも言っていない。ブ [...]