ミラノサローネ2011(8)B-LINEにとってのイタリア

メトロクスがジョエ・コロンボのBOBYワゴンを輸入し始めたのは2001年冬です。それから10年。メーカーのB-LINEはBOBYワゴンを起 点に、 ジョエ・コロンボのチェアやボネットの作品を商品化してきました。’60-’70年代の路線でベースを作りながら、じょじょに現在のデザイナーの新作を扱 うようになります。いわゆる雑貨より大きく、ソファのような大きさには至らない、この中間領域が彼らの土俵です。マス市場の上のレベルを如何にとるかが勝 負どころ。世の目を引くだけの機能性に乏しい作品でブランドを作ることを拒否してきたと言ってよいでしょう。以前にも書きましたが、1999年、当時20代のジョ ルジョ・ボールドィンが一人で興した会社です。先週、ヴィチェンツァにあるB-LINEでミーティング(下の写真)をし、パドヴァで夕食を共にしながら(一番下の写真はプレス担当のシルビア)、感じたことがあります。

ボールドィンはヴェネツィアの大学で経済を勉強して、BOBYワゴンを生産していたビーエッフェに勤務をしていました。が、この会社がたたむことになったので、彼は金型を安く譲り受け、そこからB-LINEとして生産を始めました。従来の客を引き継ぎながらですが、資金のないところで樹脂材を入手するのも大変だったようです。また、彼は特にデザインの経験があったわけでもないので、BOBYの次に出す商品開発でも苦労があったと思います。いくらBOBYワゴンが40年売れ続けてきた大ヒット作であろうと、それだけではメーカーとしての発展が望めません。冒頭に書いたように、最初の5年程度は過去のマスターピースの復刻に力をいれ、そこでブランドの基礎を作りました。そして、この数年はコンテンポラリーデザインで新しい挑戦をしています。

この挑戦の一つにミラノという場所を使ったプロモーションがあります。工場や事務所がミラノにある必要は全くないのですが、人に商品を見せる場所としてミラノは意味があります。それで最初はミラノサローネの時期に市内のスペースを確保して展示をしていました。それはそれで沢山の反応がありましたが、その場所の弱さをサローネの会場で出展するようになって痛感します。フオーリでの展示も確かに多くの人の目に触れますが、それらの人たちはトレンドチェックのために歩き回っている人であったり、デートのためであったりする。彼らがその場で商談をすることは少ない。しかし、見本市の会場には、商品を買うためにやってくる人が多いのです。その場で注文書にサインをしていくわけです。

見本市会場に出展するようになっての変化は、注文数だけではありません。デザイナーとの位置関係が大きく変わります。それまではデザイナーを探しに行っていたのが、デザイナーからのアプローチが急激に増えます。ぼくも今までイタリアメーカーのデザイナーとのつきあい、あるいはミラノのデザイン事務所に対する外国人デザイナーの売り込みを目にしてきました。しかし、メーカーとしてさほど知名度が高いわけではない会社が見本市の出展を契機に、そこまで劇的に変わる姿をみて、イタリアのデザインの強さの継続性をやはり考えざるを得ません。その売り込みデザイナーの数、提案の数、外国人比率(イタリア企業にデザインを受けてもらったことが重要なキャリアになる!)・・・どれをとっても、それは日本のメーカーの比ではないです。注意してもらいたいのは、こういう事例がそこかしこにあることです。どこかの一塊の会社の成功事例ではなく、かなり一般的な事例であることに意味があります

こうして営業してくるデザイナーは何も若手だけでなく、世界のトップデザイナーも売り込んできます。そこで何が起こるか?結果として、ロイヤリティのパーセンテージや初期費用の負担において、メーカーは圧倒的に有利な立場にたてます。最新トレンドに食いつきがよくなります。そして、何よりもデザインに対する目が肥えます。例えば、日本人デザイナーに多いミニマリズム的表現が如何に商売のパイとしては小さいかを実感している彼らは、そう簡単にその路線にはのりません。イタリアにこの経験の自己増殖的な環境がある限りにおいて、日本のメーカーやデザイナーが欧州において闘うにはよほど欧州メーカーの戦略の傾向を肌で知っておく必要があるし、日本のメーカーがどうしたらそういう立場に立てるかを、例えば、クールジャパン政策(←これについては、日経ビジネスオンラインの連載に『クールジャパンが日本を救うか?』を書きました)は現実的に考えるべきでしょう

経験の絶対数をどうしたら自動的に増やせるか?フオーリではなく、フィエラで展示する意味が、ここにあります。単に表面的な感想を聞くのではなく、注文書にサインしてもらうことで見えてくる世界です。

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Category ミラノサローネ2011, メトロクスのイタリアの旅, ローカリゼーションマップ | Author 安西 洋之

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