グランパレのモネ回顧展+ベルサイユ宮の村上隆展

のっけから本音で書きますが、パリのグランパレで開催中のモネ回顧展は抜群に面白いです。一人のアーティストの人生の作品をこうやって展示すると、最高の知的刺激を提供できると証明するモデルといえるでしょう。かなり大袈裟な表現ですが、それだけの興奮を与えてくれる展覧会でした。「既にどこかの美術館や本でみた作品だから・・・」と思うと間違えます。既にみたことのある作品に近い、しかし微妙に異なる作品が複数ならんだ時、「あっ!モネが狙っていたのは、これだったのか!」と動的に把握できます。ある作品を凝視して自分の想像力で、その作品がより大きい存在になる・・・しかし、それは他の有名な作品とは面で繋がらない。そこにちょうどはまる面を構成するさほど有名ではない作品が挟まると、とてもダイナミックな世界が展開する。こういう経験の連続を、この回顧展で得ることができました。

ある世界(観)を理解するには一定以上の圧倒的なインプットが必要であると思いますが、量もさることながら、面を形成する重要なポイントの選び方がエッセンスとしてあるのだと痛感しました。人の構想とは連続的なインプットによって作られ、それらは本人にとって必ずしも明確である必要はないのです。明確とは記憶に鮮明に残っているという意味で使っており、即ち、鮮明な記憶で構想が成立するのではないということです。しかしながら、どこかの分岐のしるしはきちっとおさえておかないといけない。それが「面を形成する重要なポイントの選び方」だと思います。モネは日本の浮世絵などを250点以上コレクションしていたそうですが、それが、二次元表現や同一素材を多角的にみる決定的な契機となったかどうか。影響を受けたでしょうが、モネがそう考えた方向性は他の種類の経験との複合と統合によって意識したのだと想像します。それが自ずと見えてくるようになっているのが、この展覧会の凄さです。「あなたにとっての一冊の本は?」という馬鹿馬鹿しい質問には、モネは絶対無視したであろうと思います。

モネや同時代の画家たちがかように日本美術にヒントを得ていたとすると、村上隆はモネがそのようにヒントにする元ネタを揺り動かすことによって、西洋美術史に自分の居場所を「作り出した」アーティストであるといえます。新奇なサブカルネタでハイアートに持ち込むという説明のしかたもあるでしょうが、ベルサイユ宮の展覧会を見ながら、これはベルサイユ宮の文脈の評価をあげるために開催されたイベントだと考えました。宗教の時代であり、国家権力の時代であれ、美術はその時代のコンテクストに嵌るように作品を作ることを要請され続けてきた。その時々、特に20世紀後半以降の西洋においてアーティストが決定権をもつスペースは広がったかもしれません。しかし、それは社会のストラクチャー自身の変化であり、アートだけが特権をもったとも言いがたいでしょう。この村上隆の展覧会は、この「アートだけが特権をもったとも言いがたい」ということがよく表現されています。

だから、村上隆の作品が17世紀のバロック様式に合うかどうかを議論すること自身が、ある意味、おかしいのです。あうべく企画された展覧会が合わなかったという意見はありますが、この展覧会を合わないというにはかなり難しいと僕には思えます。合ったと言った上で批判するところは批判するのが、この展覧会のフィードバックとしてポジティンブな考え方ではないではないかと感じました。グラスファイバーやプラスチックという材質が、あの空間で同じような質感をもてることとか、村上作品で使われているカラーが宮殿で使用されているカラーと相似であるとか、コンセプトが両者において近い方向を示しているとか、そのような指摘ができます。が、どうもそう言っていることがチマチマしているように思われ、この展覧会の底流にある部分をロジカルに理解していないと全てがちぐはぐな姿にしか見えない・・・・という観点において、「裸の王様」であるかどうかーそれは村上作品のみならずベルサイユ宮殿そのものも含めーのきわどいポイントを衝いていることを挑戦的に見せている展覧会である・・・と思います。

これは、あの場所で実物に接しないと思えない感想であったと実感している最中です。

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Category 『ヨーロッパの目 日本の目』, 本を読む | Author 安西 洋之

Comment

  1. [...] This post was mentioned on Twitter by NonColors and NonColors, 安西洋之. 安西洋之 said: 「グランパレのモネ回顧展+ベルサイユ宮の村上隆展」をメモとして書いた。これから更に深く考えていく出発点 [...]