伝統のなかに生きる
Date:08/10/6
先週、学会に出席するためにイタリアにおいでになった日本の大学の先生とお会いしました。国際関係論がご専門です。ブレラ美術館の近くで、やや遅い昼食を食べながらの雑談でしたが、とても印象に残る言葉がありました。
「イタリアは三度目ですが、こうして色々とみていて、つくづくヨーロッパは伝統を守ってきたところだということを感じましたね。今更ながらなのですが、そう思ったんですね。それに対して日本は伝統を捨て去ってきた。やはり、日本の文化のもつ特性を活かす伝統のなかに生きないと、駄目ですね」
「日本はヨーロッパを歪んだ目でみてきました。アメリカを通したヨーロッパなんですね。近代合理主義そのものも、大量生産、大量消費というアメリカの解釈であって、ヨーロッパのそれじゃないわけです。これはまずいです」
伝統を守ることでブランドを構築する条件を整え、そこにプラスアルファの価値を追加することを可能にしてきた。それがヨーロッパです。他方、日本は過去をどんどんと捨て去り、変わり身の早さを得意としてきました。したがってブランドを作るための要素がバラバラに散在しているため、それらを一つのコンセプトにまとめあげるのに苦労が多いわけです。あるコンセプトを練り上げるには時間が必要です。なにもないゼロからのコンセプトというのは実は現実的ではありません。時と共に蓄積していくエレメントが、その結合に必然性をもってくることによって、その結果、ブランドがブランドたりうる条件をそろえるということになります。
過去は捨てるものではありません。生かすものです。変わり身の早さもある時まではいいですが、適当な時期にその癖は取り去る必要があるかもしれません。ぼくは、ヨーロッパのトップファッションブランドを眺めていてよく思うのですが、彼らの身のこなし方、あるいは装いの変え方、これは決して早すぎず、また遅すぎないのです。この妙がブランド維持するための時間感覚なのではないかと思うのです。このスピード感を身につけることによって「古臭くない伝統」のあり方というのが自ずとみえてきます。







