柳本浩市『DESIGN=SOCIAL』を読む

今はとりとめのないことを肯定的に考えられる時です。整理されインデックスがついていることが、それだけで価値があるとみられるより、整理されて落とされた情報に「自分向けの情報」があるのではないかと疑念をもたれるかもしれません。あらゆるものは混沌にしかなく、一見、連続的であり、一見、非連続的である。連続性があると見えるのは、自分の地図がそうであり、非連続性であると見えるのは、自分の地図の粗のせい

管啓次郎さんの『本は読めないものだから心配するな』は、書評集です。ちょっと変わっている本で通常ある目次はありません。そもそも紐付けする各章のタイトルがないのです。悪い表現をすれば、だらだらと色々な本の感想が書き連ねてあります。しかし、読む進むなかで、よくあるタイトルがないことが全然気にならず、およそ読書体験とは、雑読で得た記憶の痕跡がバラバラに散在しているもので、しかし、ある視点をもつと、CGのように一気にそれらの痕跡がある有機的カタチを帯びてくる・・・ということが身をもって分かります。

博報堂DYグループエンゲージメント研究会『「自分ごと」だと人は動く』は、大量と形容するのでは足りない大海以上の情報をスルーされないために、どのように「他人ごと」から「自分ごと」に受け取ってもらうかの仕組みを書いています。メディアからの一方的情報の波に押し流される受身の「被害者」ではなく、積極的に情報を選択して動く「主体者」としての生活者の存在を前提に、この生活者とどのようにすればコミュニケーションをとっていけるか?が、マーケティングや広告の課題であるといいます。

幼稚園の頃から、「自分ごと」としての実践生活者であり、とりとめのなさに文脈を読み取ろうとしていたのが、柳本浩市さんではないかと思います。彼の本書『DESIGN=SOCIAL』は、『本は読めないものだから心配するな』のデザイン版であるとも言えるでしょう。柳本さんはKDDIのiidaブランドのデザインプロデューサーでもありますが、子供の頃から徹底的に「デザインと社会のつながり」に尋常ならざる関心を抱き続け、小学生の頃に既にあらゆる種類のコレクションの売買でかなりの金額のやりとりをしていました。彼はLPレコードを買えば、どういうコンテクストを作れば、それに価値が付加されるのか?を社会メカニズムとして興味をもち、実際に自らそれを実行したわけです。コレクターという名で柳本さんを呼ぶのは、正確に彼の生業を表現していません。

子供の時にやっていたことを趣味として持ち続ける大人は少なくないですが、それがそのまま生業になっている人は稀です。ピアニストやスポーツ選手は、早期教育の一環としてはじまった子供の時の実践が経済リターンに結びつくことが多いですが、柳本さんの場合は彼らとかなり違います。本を読むのが好きで作家になる人もいますが、およそ個人で完遂できる世界です。が、社会とリンクしながらは簡単ではない。まあ、いい。とにかく、本書は年期が入った活動の一部が紹介されています。しかも、とりとめもなく。ブラウン、シトロエンのカタログ、コカコーラのポスター、スイスのグリッドデザイン、エアラインのカラーリング・・・と話題は拡散するようでいて、そうはならない。それらの社会文脈の読み込みが「締める」のです。「世界で用いる赤の理由」では、ロシアアバンギャルドと革命の赤、注意を喚起するサインと価格サービス、世界の郵便カラーと事例を挙げていきます。

そう、冒頭に書いたように、自分の地図があると、あらゆることが連続的にみえてくるのです。もちろん直線だけではなく、あらゆる種類の曲線が交差しながらも広がっています。マッピングがいかに重要か。本書を読むとよく理解できるでしょう。

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Category 本を読む | Author 安西 洋之

Comment

  1. [...] This post was mentioned on Twitter by Miyake Youichirou, 安西洋之, 安西洋之, sheena_ryo, 柳本 浩市 and others. 柳本 浩市 said: ありがとうございます。見た目でデザイン書に括られてしまうのが残念ですが [...]