i.school 「食文化を知る・広げる」をみる

デザインやデザイン思考という言葉が、その言葉の定義もさまざまなまま(←まさしく、このブログのタイトルが「さまざまなデザイン」!)、いろいろな場所で使われ、あまり早く疲弊しなければいいが・・・と余計な心配をしています。そんなにフル回転すると、言葉を使うほうも疲れるし、言葉自身も疲れるのではないか・・・と。なにかを積み忘れた不慣れなクルマが街中を彷徨っている。今はまだ日があけない時刻だからいいけれど、そろそろ東の空が明るみを帯びてくると、「君、大丈夫?」ともっと気遣わなくちゃあいけないかもしれない・・・と、そんな風に「デザイン」や「デザイン思考」が見えてしまいます。もちろん、そんなに新参者ではないのですが、従来と違った舞台に立たされつつあるのです。

先週末、土日の東大のi.school を見学してきました。前回の「新聞の未来をつくる」は、10回のWSの最終回とプレゼンを見ました。そこでは、あるカタチになる前の生の観察結果をダイレクトに知らないと、学生たちが何をリアルに見ているのかがどうも分かりにくいと思ったので、生データに近い段階をじっくり見たかったのです。しかも、テーマは「食文化を知る・広げる」。日本の学生が3日間、韓国の家庭にホームステイ。スーパーマーケット、レストラン、家庭風景・・・などを写真で記録。その次は、韓国の学生が日本で同様にフィールドリサーチ。そして3日間、ワークショップという具合です。ですから、何としてでも、WSの初日ははずせないと思いました。

7-8人のグループが6つあり、一人一人が各20-30枚の写真を披露します。「何に気づいたのか」「何に面白いと思ったのか」「何を違うと思ったのか」・・・韓国のコンビニの前に椅子があって休憩できる。トイレットペーパーの個数単位にバリエーションがある。値段が割引ではなく、一個買うともう一個おまけになる。料理はおかずとご飯をまぜる。冷蔵庫のデザインがエッジがきいている・・・・ということを日本の学生がプレゼンすると、その理由を説明したり、韓国の学生が驚いたりするわけです。日本の学生が「日本ではメインのおかずはスーパーで買ってきたものをそのまま食べる」と説明したりして、首を捻ることも多々ありますが、それが彼の見ている現実である限りにおいて、それに注釈を加える人がいない場合、それがある事実としてWSでは前提の一つとなっていきます。

しかし、現実生活を顧みても、事実の収集というのはこういうもので、往々にして一面的であったり、断片的であったり、まとまった全体像が一気にわかることはあり得ません。その意味でWSを仮想的とは言えないなと思いました。およそ、多層的で多元的な日常生活をインデックス的に理解することはありえず、断片の集積です。日常生活は主観的にとらえるしかなく、その主観の共有したところにネタがある可能性が高い。でも、その共有部分が多いというだけでは、必ずしも問題解決提案のネタとすべき理由にはならない実際、複数の人間が、似たような場面の似たような対象を問題と切り取っても、その理由と解決期待度は似たようなものではないことが少なくないのです。だから、このWSの最初のステップを見るのが大事です。

今回の目標は、お互いの食生活を知ることで、今後、どのような食生活モデルが作られていくかを考え、しかも、韓国と日本の各エレメントの相互関係を把握していくとのことでしたーぼくの理解が正しければー。食生活というテーマは、誰もがその世界において「権威」であり、目でみることができる要素が多く、しかも、自分の手で触ってみたり、自らの感覚で味わってみることができ、こういうWSにはベストだなと思いました。また、韓国と日本は食生活に似た点が多くー箸を使い小皿があるー、だからこそ気づく差異があります。イタリアと日本では違い過ぎ、こういう短期の滞在で「意味ある差異」を見つけるのは大変でしょうが、近いからこそ見える世界があるわけです。イタリア料理とフランス料理の比較だと、かなり盛り上がるように。

このWSをみていて、同じテーマで年齢層が違う別グループが同時並行でやったら面白いだろうなと思いました。学生たちの食生活への未成熟さが面白い発想を生んだりするでしょうし、実態の差異の背景にある価値体系の差異に目がいかないがゆえに取っ掛かりよく問題をピックアップできるでしょう。だから、そうではない40代以上のグループに同じ経験をしてもらい、年齢層での比較をやると、そこに遠近法的な視点からみえる三次元的ストラクチャーが浮き彫りにされるのではないか。それによって、学生たちのー実際は協賛企業の社会人も入っているのですが、混入させない利点もあるかもしれないー議論と作業の良さも再発見できるのではないか。その時、冒頭で述べた、「デザイン思考」や「デザイン」の議論が経験レベルの競いあいから脱出できるという副産物も獲得できるかもしれない・・・と想像するのです。食生活というテーマだからこそ、こういう組み合わせを行う意義があるかもしれません。

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Category セミナー・講演など, ローカリゼーションマップ, 本を読む | Author 安西 洋之

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  1. [...] This post was mentioned on Twitter by Hiroshi Tamura and 藤田卓也 / 大学院生, 安西洋之. 安西洋之 said: i.school「食生活を知る・広げる」をテーマにして実施された韓国の学生と日本の学生のワークシ [...]