ミラノサローネ2010(32) モッツァレッラチェア 

デザインはリアルに存在するカタチを模すことがあり、それが人の顔や姿であったり、あるいは動物のカタチをとることがあります。何回か書いたように雲をモチーフとすることにみるように、自然現象からイメージを引っ張ってくることもあるわけです。ところで息子の通った幼稚園では食べ物、例えば各種のタイプのパスタそのもので遊んだり、それらを作った工作が頻繁にあり、「食べ物を粗末にしてはいけない」と育ったぼくには、かなり刺激的であり挑戦的でした。ジュージャロのデザインしたパスタは、クルマのウィンドシールドの形状からヒントを得ていましたから、食品の擬似化とその反対(食品以外のイメージを食品に応用する)は一般にアリといえるでしょう。ただ、パスタを食べながらウィンドシールドを思い浮かべるのが食欲を増すかどうかという別の問題はあります。

books(橋本潤さんと山本達雄さんの二人の苗字に共通してある「本」の複数形)の山本達雄さんがモッツァレッラチーズをモチーフとした作品をサテリテで発表したことは、サローネ開幕初日に書きました。このチェア、確かに美味しそうです。肌触りもよさそうで思わず触ってみたい。しかし、正確に表現するなら、このチェアの形状を目にした時、タイトルも聞かずに真っ先にモッツァレッラチーズを思い浮かべるかどうかは分かりません。このいすは、どことなく愛嬌があり、どこに座っていいのか一瞬迷わせ、その後に腰を下ろしてポッコリと座面が沈むことを確認したときに安心感が生まれる・・・という特徴があります。そういう意味で、この作品はモッツァレッラチーズの形状を模したというだけでなく、モッツァレッラチーズを目にしてから口にするまでのプロセスを擬似的に体験しているのでは?とも思います。いすの名前を最後に聞いてより感動する。こういうタイプかもしれません。さらにこのフォルムについて言えば、食べ物とはリンクしずらいのですが、トイレのデザイントレンドと近いかなとも感じました。

すなわち安心感を呼ぶ誰にでも愛されるデザインということでしょう。特に子供や女性の受けは抜群のようです。山本さんは昨年のサテリテで鹿を模したチェアを出し、橋本潤さんの「くものいす」が男性に評価が高く、山本さんの作品は女性に人気でした。比喩的表現は、女性のツボにはまるのでしょうか。男性は抽象的であることを評価するのでしょうか。いや、抽象的であるから評価するというより、抽象的であることに安心感をもつのではないかとも思います。どうでしょう。モッツァレッラチェアに話を戻すと、ぼくはやや小ぶりかなとの印象をもちました。山本さんももう少しサイズを大きくしたかったようですが、調達可能なストラクチャーに合わせるしかなかったようです。

写真のおまけ。左側の女性はドリルデザインの安西(やすにし)葉子さん。さて彼女とぼくの間で撃沈された人は誰でしょう?

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Category ミラノサローネ2010 | Author 安西 洋之

Comment

  1. tommycoccinella 

    この写真は…!
    連日、飛びまわっていらっしゃいましたから、
    一生懸命のテンションがふと途切れた瞬間、眠りの世界に…(笑)。

    モッツァレラ、目にして「なんだろうこれ、座ってみたい」
    と思わせる、好奇心のくすぐりがあるみたいですね。
    で、座ったあとの、顔が不思議とみな同じでしたよね。

    男性のお客さん、構造的に「どうなっているんだろう」
    っていう疑問と、驚きでくすぐられるのかなと感じました。

  2. anzai 

    おや、撃沈されたのがどなたかお分かりになったのですね。さすが!(笑

    >で、座ったあとの、顔が不思議とみな同じでしたよね。

    「わっ、ちゃんと座れるんだね」って「意外にいけるじゃない」という高評価にいきやすいですね。そこに嬉しさが伴う・・・だから笑顔が多くなる。