ミラノサローネ2010(31) ハンドメイド・イン・イタリー

ヨーロッパ文化部ノートに「ローカリゼーションワールドを考える」というエントリーを書きました。6月7-9日にベルリンで開催されるローカリゼーションワールドをサイトでチェックした感想を記したのですが、これを見て分かるのは、ローカリゼーションインダストリーとは、現在大きく二つに分かれ、一つは翻訳です。仕様書やマニュアルを対象市場言語について 1)ローカルユーザーが瞬時に分かるように質の高い翻訳を提供 2)この作業を効率よく正確に行う ためのサービスです。同じ内容の繰り返しをどうデータ化するかもビジネスのネタになります。二つ目はIT業界、特にソフトウェアのローカリゼーションサービスです。基本的には翻訳と趣旨は同じですが、インタラクティブ画面のデザインのように視覚情報ー文字も視覚情報ですがーのローカライズもテーマになります。この翻訳とソフトウェアのローカライズから派生した形として、検索エンジンのSEO対策として、「この国のこの市場で受ける言葉は何か?」を国ごとに提供するというサービスもあります。ローカリゼーションインダストリーとはかなり限定された範囲にとどまっており、料理、食品、日用品などの世界でのローカリゼーションはインハウスのノウハウになっているのか、これは考えさせられる状況です。

さて、この「ミラノサローネ2010」は、特に昨年12月から今年3月にかけ、ヨーロッパを市場として考えサローネに参加する人たちを想定して書きました。そのなかでローカリゼーションの意味と必要性を色々なアングルから語ったのですが、ローカリゼーションワールドのサイトを見ながら、「これは、ローカリゼーションの重要性について、もっともっと色々な人が語り考えないといけないな」と思いました。「グローバルに考え、ローカルに活動せよ」というせりふは世の中に溢れかえっています。しかし、その割りに「ローカルに活動せよ」の中身がよく吟味されていない。そういう印象をもちます。もちろん、それはグローバルに考えるとは、いったいどういうことを言うのか?という前提が不明確であるということもあります。地球規模といっても、それがビジネスの世界で本当に文字通りの地球規模であるかどうかはあまり問われていません。普通は、かなり恣意的な文脈で使われています。しかし、それが悪いことではなく、今話しているグローバルとはどういう範囲で使っているのかの前提を明確にすることが大事なのです。そしてローカルも同じです。そういう前提をはっきりさせないために、「グローバルに考え、ローカルに行動せよ」も分かったような分からないようなキャッチフレーズに留まるわけです。

「山下範久『ワインで考えるグローバリゼーション』を読む」で、不法滞在の外国人を雇っているイタリアにある工場で作られたブランドのバッグに対抗し、「われわれの工場は100%イタリア人の従業員である」と謳っている会社があることを以下の流れで紹介したことがあります。

グローバルな現象が多くなればなるほど、もう一方で生産地域の強調が行われます。メイド・イン・EUではス ペイン産と同じにみられていやだというイタリアの生産者は、メイド・イン・イタリーという表示にこだわり、南イタリアと差別化したいトスカーナの会社は、 メイド・イン・トゥスカニーを謳い文句にしようとします。地域を狭めることによって、自己の存在を際出せていくのです。しかし、ここにも落とし穴があり、 土地だけでなく、作る人の国籍はどうなのか?という課題があります。

この生産条件の列挙は、もう片方で販売ターゲット枠の明白化をも意味します。「こういう価値、ああいう価値をあなたは見逃しませんよね」と迫ってくるわけです。「見逃すのは賢い消費者ではない証拠だ!」という反語表現を含んだアグレッシブさが、ここにはあります。押しつけがましいといえばそうなんですが、その迫力に押され気味になるのが悪くないと思える。そういう微妙なポイントに立っているといえます。

メイド・イン・カッシーナという表記で限定化を図るアプローチがありますが、ハンドメイド・イン・イタリーと生産方法をアピールするのも一つです。ローカリゼーションは、基本的に市場への適合化ですが、情報発信の方法から考えるべき事柄ではないかとも思います。いわば、態度というか佇まいの次元から問われるテーマかもしれません

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Category ミラノサローネ2010 | Author 安西 洋之