ミラノサローネ2010(19) クラウドを感じるとき(4月14日)

今日、4月14日からミラノサローネがオープンし、さてどこからスタートしようかと考えました。通常は市内のフオーリサローネをまわり、2-3日後に見本市会場に向かいます。それまでの訪問者の反応を各スタンドで聞くためです。しかし、今年はその順序をとりませんでした。多くの人と行動パターンと同じにすることで、どういう気分を味わうことになるだろうか?と考えたのです。今年のサローネを回る前に自分で決めたのは、不況を原因としたネガティブな推測をせずーコストを抑えた作品が多いー、いずれにせよ不況で大半の人々が楽ではないなか、デザイナーやプランナーはどういう方向に光明を認めようとするかを考えてみようと思いました。これが今日の出発点です。

意図的にサイズを大きくすることにどういう意味があるだろうか・・・ということを上の写真のスタンドを眺めながら考えました。何年か雲状の表現が目につきますが、フワフワした気持ちの良いイメージ以上の何かを象徴するものとして考えたことはありません。が、上の大きな照明を見ながら、フッと「いや、雲がもつ収縮性や膨張性にポイントはないだろうか。雲が異常に大きく低く垂れ込んでも、その大きさを受容する土壌変化を物語っているのではないか・・・・」と思い始めました。この時点では、ここまでです。

メトロクスがフィレンツェのビトッシの製品を販売を始めてから毎年サローネでの展示を見ていますが、今年は大きく変化しました(上の写真:昨年のスタンドと比較すると、その変貌ぶりがよく分かります)。アートディレクターの採用がその要因です。昨年11月にビトッシを訪問した際の文章を引用します。

「我々の長年の歴史をどう整理して枠組みを作っていくか、これが来年の大きなテーマである。確かに、今年の売り上げは減少したが、だからといって、こうい うことや新しいプロジェクトの推進を止めてはいけない」と語ります。過去の遺産、トレンドにあるデザイナー達の作品、これらをどうつなげていくかです。ア ルド・ロンディ亡き後、実質的には空席であったアート・ディレクターに就任予定のデザイナーが、この重責を追っていくことになります。自分の原点を常に見 つめなおし、自分の辿ってきた道をはっきり定義し、それが世の中にどう認知されているかを認識し、どうこれからの線を延ばしていくか・・・このロジカル思考が基本にありブランドが成長していくことがよく分かります。

その次にB-LINEへ向かいます。ビトッシとは一列挟んだご近所。こちらもなかなか意欲的な進撃ぶりです。

今年の新作はオーストラリア人のKristian Aus (B-LINEのGiorgio Bordin とツーショット)がデザインしたSplashです(写真右)。雨粒が地面に落ちた瞬間に跳ね上がるイメージをとらえ、イメージのままではベースとして使い、ひっくり返すとスツールになるという具合です。このクリスチャンの家系は、前世紀の前半にノルウェイからオーストラリアに移民したようですが、ポートフォリオを見せてもらうとなかなか几帳面な性格が伺え、これも北欧の血かな?とも思います。ジョルジョと3人で冗談の言い合いをしながらも、B-LINEが新たな道を探り始めていることは十分に伺えました。

デザインのパディリオンをざっと歩き、カルテルが黒を基調としたのはポップカラーへのアンチテーゼなのでしょうが、若干分かりにくいメッセージに戸惑わないわけにはいきません。分かりやすいようで分かりにくい。分かるか分からないかの一線を跨ぐものとは何だろう・・・というのが、この時より頭にもたげてきたテーマです。少し分けの分からないものが多いサテリテで思案の散策をしてみようと、浴室関係は一切パスしてサテリテに行きました。しかし、今年のサテリテはかなり完成度の高い作品が多く、生アイデア勝負の今までとはやや趣を異にします。「フオーリサローネからデザイナーが戻ってきたな」とも感じます。そういうなかで、韓国のデザイナーの作品に目をひきつけられました。ロンドン在住のこのデザイナーは、オリエンタルを感じさせず、中東やロシアにダイレクトに売れそうなアイデアを披露しています。日本人デザイナーにはあまり見ない傾向です。

バスタブを縦にしたチェアです。単純にして斬新なアイデアには観る者をニヤリとさせますが、ぼくが感心したのは、このデザイナーはかなり明確に市場のありかを絞って提案しているのではないかと思わせる点です。ただ、ご本人はいなかったので確かめられなかったので真偽のほどは不明です。そのほか、紹介したいブースがいくつかあるのですが、それらは後日に別の観点から書きます。ここでは2年連続でフォローしてきた橋本潤さん、彼とパートナーを組んでいる山本達雄さんの作品に触れておきます。彼らの作品への見学者の反応を観察するため1時間近くブースの前に座ってみました。

橋本さんは08年の一枚の板で作る「うすいいす」と09年のワイヤーで緻密にしかけた「くものすのいす」を統合させた「あみのいす」-つまり一枚の網を折ったカタチーであり、山本さんはモッツアレッラチーズをイメージした「モッツアレッラ・チェア」です。去年もそうですが、女性は山本さんの作品に引き寄せられ、橋本さんの作品は男性に人気です。人々の反応を見ながら、ぼくは一つのことを想起はじめました。この両人の作品はクラウドというコンセプトで括られないだろうかということです。そう、冒頭近くで思った、「雲のあり方」です。明日以降に引き続き考えていきます。

尚、ドリルデザインと芦沢啓治さんの作品が運送会社のミスで配送が遅れ、初日を棒に振ってしまうことになりました。貨物が会場に届いたのは、閉館の19時近く。それからセッティング作業をはじめましたが、無制限には残業できないため、今晩中には終わりそうもありません。明朝に完了することを祈りましょう。下の左は20時近くの作業風景です。右は展示を待つ作品たち。

<追記>

ドリルデザインの安西葉子さんの以下Twitterによれば、22時に設営完了したとのこと。これで一安心です。

http://twitter.com/yasunishi_drill

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Category ミラノサローネ2010 | Author 安西 洋之