「クール・ジャパノロジーの可能性」を聞く

日本のアニメなどで表現される「かわいい」ポップカルチャーが、欧州で公的には隠す領域に属すことを以前、「可愛い女の子が座るスペースと場所」で指摘しました。

AKB48的な「可愛い女の子」を受け入れる社会のなかでのスペースの広さとポジションが常にチェックの対象になります。そこには、往々にして「幼児性」というイメージが想起されるからです。これは社会的に視覚化するのではなく、個人的に隠す方向にいく傾向にあります。

しかし、ぼくは常に未来永劫そうであると言っているのではなく、時間の経過と領域の変貌に注視すべきという意味で言っています。また地域的な差もあります。フランスでロリータファッションの紹介をすることと、イタリアでそれを見せることでは、傾向として似たような反応があったとしても絶対数に違いがでてきます。

ヨーロッパで東洋人と結婚をした男性たちが、割とよく語っていることに、「強すぎない女性がいい」という表現があります。どんなに強いと思われる東洋人で も、ヨーロッパの弱い印象を与える女性よりは「癒される」と言った意味合いが含まれています。AKB48のドキュメンタリーを見ながら、考えたのは、この ことです。AKB48に熱い人達はネットで日本のアニメなどに情報を集めている人達ですが、そういう存在は確かに一定の層を占めています。その彼らが、社会のメインの価値を作る人ではないが、無視できるほど小さくもなく、且つそのレイヤーは増加することはあっても、減少することは当分なさそうです

先週の土曜日午後、東工大の世界文明センター主催のシンポジウム「クール・ジャパノロジーの可能性」2日目、「日本的未成熟をめぐって」を聞いてきました。モデレーターの東浩紀が、趣旨のなかで今の現象をこう書いています。以下、抜粋します。

そもそも日本的なものとはなにか、クールとはなにか、なんの合意もありません。クール・ジャパンへの視線は、単なる日本趣味であったり乱暴な産業振興論であったりすることが多く、当のクリエーターはそれをとても迷惑がっている。そんな光景もしばしば見かけます。

ぼくは、これを読み、乱暴ではない産業振興になりうるべき「日本的なるもの」がシンポジウムの重要なテーマになるだろうと想像していました。日本的なるものの定義に合意は不要であり、それぞれが一人一人で作業していくものだと考えており、そう考えなかった間違えがトヨタのレクサスにはありーしたがって欧州市場で失敗したー、その逆を仕掛けたー自分で日本美術の定義を行ったー村上隆の躍進があったのだと思います。また、日本の工業製品がなぜ欧州でガジェットとして見られるか?というところで、幼児性や未成熟とどう繋がってくるかを考えることは、丁寧な産業振興論になりえます

その観点でシンポジウムをみた時に一番有意義な発言を重ねたのは村上隆であったと思います。黒沢清が自分の映像を「スタイリッシュで静か」と受け止められることを発言の基点においていましたが、学生相手にベーシックな話をしたとすればそれはそれでよいのですが、いずれにせよ、そうした「見られ方」をすること、あるいは自分自身でももう一つの視点にたつと「そう見えること」を当たり前の認識をもつことは基礎的な素養でしょう。

尚、日本的未熟性を西洋論理の超克への積極的手段として意味を見出すことは、自然との共生ででてくるエコロジー思想と似たところがあります。曖昧であること、弱くあること、これらが発想の転換に繋がることは否定しませんが、ある世界観を多くの人たちに理解してもらうためには、「曖昧であること、弱くあること」も説得的である必要があります。村上隆が「早晩、ぼくの作品は欧米でスポイルされていくのでは・・・」と語っていたのは印象的で、ぼくは、まさしく、この説得的であるべき世界観の構築が市場の維持と拡大には重要であると彼が認識しているのではないかと想像しましたー彼は、今までも説得的であろうとしてきたし、それを実行してきたと思うのですが、それを更に発展させないといけない、と考えているという意味で

<上の2番目の写真は、先週の幕張でのFOODEXが終了した後のとある中国ブースの様子です。どこもごみも含めてきれいに片付けているなか、中国ブースには、こういう光景が散見されました。何をユニバーサルな価値の優先順位とするか、何を無視するかを考えるとき、こういう後片付けの差異を検証することも重要です。即ち、ごみを放置をする説得的な論理をもてるか?ということです>

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Category 『ヨーロッパの目 日本の目』, セミナー・講演など | Author 安西 洋之