東京で考えたこと(5)ー西洋紋章デザイナーの山下一根さん 4

西洋紋章は金(黄色)、銀(白)、赤、青、緑、黒、紫程度しか色が使えません。しかも、金と銀は隣り合ってはいけません。「制約の中の芸術」である以上様々なルールがあります。それにしたがってデザイナーは描いていくわけです。この西洋紋章を描く人間は2-30人しかいません。山下さんは唯一の東洋人です。西洋人からの妬みもあります。欧州のとある掲示板には、「どうして山下さんが、我々の伝統ある西洋紋章をやっているのだ」ということも書かれます。

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山下さんは、こう答えます。「あなた方が後継者を育てていかなかったのが、原因でしょう」と。それはそうです。相撲の世界に外国人が多くいるように、日本の伝統工芸の世界で働いている外国人の職人もいます。 家紋を作る世界に外国人がいるかどうか知りませんが、同じように門戸を開ける、いつも受け入れる心の備えが大事でしょう。山下さんは、欧州の伝統の真っ只中でクリエイターをしているからこそ、その綻びと何を残さないといけないかが見えてきているのではないか・・・とぼくは想像します。

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前述したように、化粧品のパッケージのように、普通のグラフィックデザイナーと同じ仕事もしますが、彼は日本の伝統工芸品と西洋紋章の融合にも興味をもっています。 とても面白いと思います。二つの伝統が真っ向から向き会った時に、何を譲歩するかは極めて重要な判断です。日本庭園のデザインでも、日本庭園は日本でしか実現できないと主張してやまない人がいる一方、あるエレメントをキープできれば日本庭園のエッセンスが世界のどこでも表現できると考える人もいます。

料理の世界では、長い間にわたって異文化交流を潜り抜けてきました。フランス料理のヌーヴェル・キュイジーヌでは、イタリア料理や日本料理も重要な異文化提供者の役割を演じています。いずれにせよ、どんな分野でも、ひとつの文化で静的に閉じた状態であるということはありえないのです。山下さんは、これからどんな世界を、どんな文化を作っていってくれるのでしょうか。非常に楽しみです。

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Category さまざまなデザイン, 西洋紋章デザイナー山下一根さん | Author 安西 洋之