八子知礼『図解クラウド早わかり』を読む

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1月28日から日経産業新聞で「アイルランドーIT立国の復権」という記事を連載しています。ITを重要な基幹産業として位置づけ高成長を遂げたアイルランドですが、2008年からの経済恐慌で政府の財政も厳しくなりました。スペインと並び不動産バブルが派手にはじけた様子は、ダブリンの街を歩いてもすぐ分かります。不動産王が買い占めた4星ホテルは、今、稼働率をあげるために信じられない低価格で泊まれるところがあります。しかし、アイリッシュは黙ってうつむかない・・・という実像を、この記事では紹介しています。

強みのITを生かし、環境政策やエネルギーの高効率を目指すスマートグリッド(次世代送電網)をシステムとして構築し、ここで成功したモデルを他国に輸出しようという計画です。人口500万人以下の小国であるからこその優位性ー自動車で長距離走る場所がないーもあり、またドイツにおける自動車産業のように産業的しがらみもなく、デンマークのような環境技術はもっていないけれど、それぞれの技術の統合力で勝負にでています。各家庭にスマートメーターをとりつけて電力管理を行い、国全体のエネルギーの効率的分散化を図っていきます。2020年には国内250万台の10%はEVやハイブリッドとすることを目指していますが、EVには電力を使うだけでなく溜め込む役割もあり、スマートグリッドでの重要なパラメーターです。要するに、アイルランドはクラウドコンピューター時代にあわせた、新しい社会作りに果敢に挑戦しているわけです。

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クラウドをテーマにした八子さんの本書でも、こう説明します。

意外かもしれませんが、クラウド社会の到来を考えるときには、これから数年間で普及すると言われている電気自動車(EV)の存在を無視するわけにはいきません。というのも、今後はクラウドデータセンターとEV充電インフラとの間で、電力の取り合いが起こることが想定されるからです。クラウドと電気自動車、さらには家庭と工場、この4つのセクターで、いかに電力を確保していくのかは、これからの産業にとって大きな問題です。

クラウドコンピューターにむけ、マイクロソフトも欧州と中東をカバーするデータセンターをダブリン郊外にもうけました。サーバーの冷却が重要なデータセンターは川の近くなどに設置されることが多いですが、夏も涼しいアイルランドはその意味で好都合な場所です。日経産業新聞の記事で、通信エネルギー天然自然大臣のライアン氏が、インタビューに「クラウド時代にもはや大規模な工場はいらない。高速ネット環境に加え、様々な情報やコンテンツを安全に効率よく流通できる環境があればいい」と答えています。八子さんが指摘する問題を、社会としていかに全体適正を図るかが大事で、その前提として「全体と細部とは何なのか?」がより数字データ化される必要があり、ひとつの例に家庭内でのセンサーをも利用したスマートシステムでの電力管理があるわけです。

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このようなクラウド化が進んでいくうえで重要なもうひとつのポイントが、ユーザーインターフェースになるでしょう。ひとつのデバイスですべての生活を過ごすことは理想なようでいて、実際にはありえないことで、それぞれの環境にあったサイズの画面と機能が要求されます。iPhoneがいくら小型PCとしてよくても、あの画面ですべての事務処理を行うことは相当無理があります。だからこそ、複数デバイスをひとつの共通インターフェースで処理することが流れになっていくでしょう。携帯電話のインターフェースとカーナビのそれがあまりに違っていて、それぞれに異なった対応をユーザーに迫るという「不親切」は非常識とみられる時代が到来します。八子さんは、こう指摘します。

クラウドが一般化した時代には、現状と比べようにならないほど高度なユーザーインターフェースを搭載したクラウドデバイスが登場しているはずです。デバイス側の処理能力のほとんどは、そのような高度なユーザーインターフェース処理の実現のために使用されるようになるはずです。

PCとケータイの中間クラスの画面が主流になるだろうと予想されていますが、ぼくの関心事は、人の認知能力にあわせたインターフェースであり、その場合の文化差ー地域、世代、タイプーの問題です。それもグラフィックよりもロジックです。色やアイコンはユーザーによってカスタマイズしていくことが比較的楽にできるでしょうが、ロジックがより難関であろうと考えており、この分野が今後重要になっていくはずです。ちょうど内燃機関がEVとなろうと、人間工学的部分ではクルマのデザインには差異がでないだろうと同じ頑固な部分です。

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Category 本を読む | Author 安西 洋之