JALのサービスを想う

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今週、JALが経営破綻をしたことを巡って膨大な量のニュースや意見がネット上でも飛び交っていますが、日本のTVニュース番組をみていて、コメンテーターの発言に少々戸惑いを覚えました。「JALのサービスは最高で、日本に来る外国人も、JALの日本的サービスを評価しているのだから、今後もあのサービスを失わずに再建に頑張って欲しい」との趣旨です。クールジャパンと同じで、日本に関心のある一部の外国人の背後には無数の無関心の外国人がいることを日々感じていると、ああいう発言にはオイオイと思ってしまいます。

さて、統計をチェックしたわけではないので正確なことは言えませんが、外国に出かける人は二つのタイプがあり、一つは「これから出かける国の雰囲気に飛行機から味わおう」という経験先行型であり、もう一つは「目的地に到着するまでは、なるべく自分の習慣を通したい」という経験先延ばし型でしょう。料金や乗り継ぎの便宜性という合理的レベルでの判断を別にすれば、上述の二つのパターンは一般的と考えてよいと思います。

この二つのパターンが、国別にどれほどばらつきがあるのか手元にまったくデータがありません。たとえば日本に出かけるイタリア人がアリタリアに乗るかJALにのるか、イタリアに出かける日本人がJALに乗るかアリタリアに乗るか、どちらの国民が経験先行型が多く、どちらが経験先延ばし型であるのかは、分かりません。ただ、実際の問題として、ぼくの経験ではどちらも常に日本人の方が上回っているという印象があります。それはBA,エールフランス、KLMなど他の欧州航空会社でも似たようなもので、日本からの海外へ出る人と日本に海外から入る人の割合ー全体数からすれば3~4対1程度でしょう。欧州に限れば、日本人比率はもっと上がるでしょうーにあっているのではないかと思います。そこで「JALのあのサービス」ですが、これが可視化された経営資源としてどれほど重要なのでしょうか。先にあげた経験先行型の外国人を惹きつけ、ビジネス的にどれほど貢献するのだろうかと思案します。すなわち、どれほどにマーケットがあるか?ということです。

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客席の傍で床に跪いて乗客に話しかける乗務員、しかし相当に行儀が悪い乗客がいても強くは制御しきれない弱さ、これを総合的に眺めてJALのサービスとは何だろうといつも思います。去年のはじめ、ミラノの空港が大雪でダイヤが大幅に乱れた時、成田からおよそ同時刻に出発予定だったミラノ行きのJALとアリタリアが、前者はほぼ定刻に飛び、後者は飛行機が目の前にあるにもかかわらず「大雪のため様子見」で数時間遅れということがありました。こういう経験をするとJAL便を選んでおいて良かったと思います。しかし、又聞きなので噂程度に読んで欲しいのですが、日本の航空会社のパイロットは管制塔との交信がスムーズではないので、管制塔ではなるべく日本の航空会社を優先的に着陸させることが傾向としてあると聞くと、定刻どおりの運行はサービスの質を正確に表しているのだろうかとも思います。

結局のところ、日本へ行く時にアリタリアではなくいつもJALを利用しているぼくは、何をサービスとして期待しているかといえば、定刻通りの運行が最優先ー安全であることは大事ですが、日本に飛んでいる日欧航空会社のどれが安全であるかは、「当たり前品質」の領域でしょうーであり、それ以外については相当に不愉快なことでもない限り、さほど問題視しません。パイロットと管制塔との交信の問題は、ぼくには本当かどうか確認しえない事柄ですから、航空会社を信用するしかないのです。もちろん、この「当たり前品質」は、猛烈な努力とストレスの結果であるとは想像します。しかし、基本のことさえ問題なければ、それ以上のことはぼくは望みません。

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ここで冒頭の「JALのあのサービス」に話を戻すと、これは搭乗の前の職員の挨拶や機内の乗務員の振る舞いを指しているのだと限定してよいと思います。JAL特有というより日本での一般的サービスの、これまた別の意味の「当たり前品質」というべきであり、トヨタの品質改善と同じくコストとしてカウントしずらい、あるいはカウントしてはいけない部分であるという認識が日本には強いと考えます。それが日本企業の今までの強みであり、しかし往々にして 高コスト体質とリンクすることがあると指摘されてきた要素でもあります。

日本企業はサービス産業によりウエイトが増していきつつありますが、メンタリティ、つまりは文化要素をどうコストとしてみるか、また見るべきではないのかに関する一つのモデルを今後のJALが示していくとするならば、JALは日本のビジネス全般にとってー企業構造や体質という観点とは別にー相当に大きなテーマに立ち向かうことになります。因みに、イタリア船籍ではない豪華客船などのクルーにイタリア人の需要は多いと聞きます。融通のきくサービスやホスピタリティを提供してくれるからです。同じようなユニバーサルな価値を「JALのあのサービス」がもつのかどうか、です。日本の「おもてなし」は、果たして外国人客の満足度をあげ、日本好きではない人たちをお客さんとして取り込めるか、です。

この文脈でJALから目を外せない、これからの数年間です。

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Category その他 | Author 安西 洋之