「自分にしかできないものを作る」-リチャード・サッパー

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2008年12月に「リチャード・サッパーの事務所」というエントリーで、千葉工大の山崎和彦さんが書いたリチャード・サッパーの紙模型について触れたブログを引用したことがあります。以下です。

山崎さんはIBMデザイン部在籍中、やはりIBMのデザインの仕事を長くやっているサッパーは協業のパートナーだったわけです。

「僕がサッパーとミラノの自宅で打合せをする時は、二人で話をしながら、その場で紙を切ったり、ホチキスで止めたりして立体を作る。こういったモデルを作る 場合は、原寸というのが重要なので、もし部品の図面があれば、それを拡大コピーを使って原寸の大きさにして、その部品がうまく収まるか確認する。1時間も あれば、だいたいできあがるので、自分たちが考えたデザインがよさそうかどうかは、すぐに確認できる。」

イタリアの事務所では日本ほどに模型を作らないのですが、ドイツ人サッパーは、自分でカタチを確認したいという話です。昨日、古いファイルを整理していたら、サッパーのインタビュー記事コピーが出てきました。2003年6月号のAXISです。この回は彼の顔が表紙を飾っています。カバーインタビューを久々に読んでみました。

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彼は最初ミュンヘン大学で哲学の勉強をはじめるのですが、父親が絵描きであったこともあり、インダストリアルデザイナーという職業の存在を知ったとき、教授に相談に行きます。

「インダストリアルデザイナーになることに意味があるのだろうか」と。そのときの彼の言葉は今でもはっきりと覚えていますし、私の人生の宝になっています。彼はそばにあったイタリア製の花瓶を手にとって、こう言いました。

私はこの花瓶を見るたびに喜びを感じる。こんな美しいものをデザインするということは意味のあることに違いない。そういったことに人生を捧げたいと思うのであれば、やるべきである」と。

そして、父には「デザインでも何でも好きなことをやればいいが、それで食べていけないようなら、生計を立てる術を身につけておいたほうがいい」と言われて、経済も学ぶようになったのです

彼が大学を出た頃、マックス・ビルがはじめたウルム造形大学が開校してまもなくだったようですが、メルセデスのチーフ・デザイナーが誘ってくれ、エンジニアリングを半年勉強してメルセデスにいきます。サッパーは卒論に「経済の視点からみたインダストリアルデザイン」をテーマに選び、このデザイナーに取材していたのです。しかし、その後、彼の考えるクルマはメルセデスの伝統にあわないと上司に言われ、その頃、デザインで輝いていたミラノに移動することになります。インタビューにはマルコ・ザヌーゾの名前は出てこないのですが、最初の頃は、ザヌーゾのスタジオで働き、後に独立することになります。

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彼がデザインの考え方に近いとしてフォローしている人間の名前を二人挙げており、一人はメキシコのルイス・バカランー「デザイナー自身の感覚や感情・美意識を伴ってユーザーにきちんと伝わっているのであれば、それが良いデザインである」ーであり、もう一人はIBMの彼の前任者でもあるポール・ランドー「デザインとは散文を詩に変えるものである」-です。

私はポストモダニズムやミニマリズムなどのスタイルにはまったく興味がありません。それらはデザインの本質ではありません。本を書くことにたとえると、どんなストーリーかが重要であって、どんなフォントを使って印刷するかなどというのはスタイルに過ぎず、本の本質的な部分とは何ら関係ない。デザインもそれと同じです。

サッパーは、こういうことを言う人です。それも目の前ではっきりと言います。ちょっと浮ついた質問をすると、バシッと切り返されます。今、沢山の人が「差別化」といいますが、差別化を図るために他人をリサーチするのはほどほどがよく、それを徹底してもキリがありません。だいたい、人の考えることに、そう大差があるわけではなく、文脈の読み方とその表現の仕方に差がでます。考え方に大差があると思うなら、それは考えが足りないからです。そのフィールドでの経験不足ということです。そこで、サッパーの言葉、このインタビュー記事の見出しにも使われている「他人と違うものではなく、自分にしかできないものをつくる」という台詞の意味が分かってきます。

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Category さまざまなデザイン, その他 | Author 安西 洋之